MORAGA White Table Wine Bel Air 1998 

その噂はずいぶん前から聞いていた。
「あのMoragaが密かにソーヴィニョン・ブランを造っている。たったの15ケースだけだが、とんでもなく美味しいワインらしい。」という噂を…。

ずっと気になっていたこのワイン、NYのショップでは200ドル(!)くらいで売られていたりして、とてもじゃないけど一生飲めないかと思っていた。だが、今年の春先に某ショップで2本売られているのを発見した。1本55ドル。10ドル台が当たり前のソーヴィニョン・ブランとしてはべらぼうに高い。ラベルに品種名を記さず、あえて「White Table Wine」と表記してあるのもそのあたりを意識しているのであろう。実際にはソーヴィニョン・ブラン100%である。ブドウはLAの超高級住宅地にある自社畑で収穫されたもの。ただ、ソーヴィニョン・ブランと言えばフレッシュさが身上なだけに、実際に飲むまでは98年産ということが気にかかっていた。

だが、グラスに鼻を近づけた瞬間、そんな心配は吹き飛んでしまった。アプリコット、黄桃、アカシアの花。グラスを軽く回すたびに幾重にも広がる香りの素晴らしさにしばし絶句し、その華やかさにただ酔いしれるばかり。春先の草原のような若い草の香りもあり、同席した方からは、「草原の輝き」という名言も頂戴した。口に含むと、酸がとても柔らかく、ボディはとてもふくよか。口当たりはとろとろとしているのに、しつこさが全くない。こんなに美味しいソーヴィニョン・ブランは初めてだ。噂は本当だったのだ。

なお、この98年から正式にコマーシャル・リリースされたというから、実際の生産量は15ケース以上なのだろう。それにしても、Spottswoode、Araujo、Moragaとトニー・ソーターがワインメーカーとして関わったワイナリーのソーヴィニョン・ブランはびっくりするくらい美味しい。値段も高いけど、それなりの価値はあると思う。

2003/6/4