ORLEANS/ORLEANS(1973)

私がエレキギターというものを初めて手にしたのは、1978年、中学3年生の時。
それまで井上陽水なんかを聴きながら生ギターをジャカジャカやっていたのが、
なんとなくクラプトンやライ・クーダーなんかに興味が移っていった頃だ。
クラプトンの使っていた黒いストラトキャスターと同じトーカイのコピーモデルを
手に入れ、ブルースギターのフレーズなぞをおぼえては学校中にあふれていた
ハードロック少年たちとはちょっと違う「オトナなオレ」に酔いしれていた鼻持ち
ならない奴だったわけである。

しかし1年位たって、高校に入った頃、「ヤングギター」かなんかに載っていた
レビュー記事で山岸潤史氏と森園勝敏氏が2本のストラトキャスターの理想のアン
サンブルの見本としてオーリアンズというグループの初期のアルバムをほめちぎって
いるのを見て(記事自体はたぶんジョン・ホール脱退後の初アルバムのものだった
と思う)、ただならぬ気配を感じた私は早速長野には数少なかった輸入レコード店の
ひとつ「オリバー」に駆けつけ、その月の小遣いのすべてをオーリアンズの1stと
2ndがカップリングになった二枚組編集盤『BEFORE THE DANCE』にはたいたのだった。

たしか2ndの方はお蔵入りになっていた『DANCE WITH ME』というアルバムで、その後
陽の目をみたものの、当時はこれでしか聴けなかったんじゃないかな。この2ndの方
にもルーファス・トーマスの曲を長尺のギター・ナンバーにアレンジした"THE 
BREAKDOWN"やその後彼らの代名詞になる"DANCE WITH ME"や"LET'S THERE BE MUSIC"の
オリジナルバージョンなんかが入っていてかっこよかったけど、なんといっても
衝撃を受けたのはこの二枚組では一枚目になる1stの方。

それまで、エレキギターによるリズムワークなんてものには、てんで無頓着だった
のだが、どアタマの"PLEASE BE THERE"からストラトキャスター独特の美しく
乾いたトーンが流れだし、シャープだけれど柔らかいファンキーなプレイには目から
鱗。このイントロのリフを必死でコピーした。その後、山岸氏本人にこの曲がステイ
プル・シンガーズの"I'LL TAKE YOU THERE"のアンサーソングであることを教えて
もらって、彼らのソウル・フリークぶりを知り、私もそっち方面に入り込むきっかけ
にもなりましたね。続くレゲエとカリプソの混じったような"IF"でヴォーカル
ハーモニーとギターの流れるようなプレイでもっていかれたあと、"TWO FACED 
WORLD"でファンキー・ギターの奥義にふれる。ジョン・ホールとラリー・ホッペンの
ホントにストラトの最も気持ちよい音色が聴けます。かと思うと、次はジョンが
マッスル・ショールズの重鎮バリー・ベケットのピアノに乗って切々と歌うワルツの
"TURN OUT THE LIGHT"。彼の歌があまりうまくないとかいう人もいるが、この曲を
良く聴いてからにしてほしいもんだ。バラードでも辛口でソリッドな味があるのが
この頃のオーリアンズの粋なところ。ゴスペルっぽいけどさりげない盛り上げ方も
絶妙だ。A面ラストの"TONGUE TIED"で前半のピークはやってくる。ジョンとラリーの
かっこいい掛け合いヴォーカルと2本のストラトのファンキーな絡みのヴァースから
メロウでおしゃれなコーラス・パートになだれこむところの快感が味わいたくて何度
繰り返して聴いたことか。来日公演でもいいとこでこの曲を演奏してました。B面
アタマはもちろんかのジャニス・ジョップリンに歌われたいわくつきの"HALF MOON"。
このイントロもギタリストなら挑戦してみたくなる印象的なリフ。ここでは二人で
アンサンブルしてるけど、私は1本で再現出来るように頑張ったもんです。その後
ジョン・ホール氏のソロを含めて再演ヴァージョンはいくつかあるけど、やはり
エンディングにメロウなコーダのついたこのオリジナルヴァージョンは忘れられませぬ。
次の"MOUNTAIN"は実は私の曲のタイトルとしていただいてしまったことがある。
古くはアル・クーパーのスーパー・セッションなんかにも参加していたドラマーの
故ウェルズ・ケリーが作曲ばかりかヴォーカルもとり、ピアノも弾いているこの曲は、
このアルバム中の隠れた名曲だ。才能あったんだなあ。グルーヴィーなエイトビート
ナンバー"WANDERLUST"でもキレのいいリズムギターは快調。リードギターの掛け合い
も今となってはあまり流行らないパターンかもしれないけど、不変の気持ちよさがある。
ムーディーなアコギ・バラード"TICONDERROGA MOON"に続いてはまたまたウェルズ・
ケリーがリードをとり、ジョンがドラムを叩くブルージーな"STONED"もアルバムの
流れとしてもいいアクセント。ラストはジョンの甘めのヴォーカルが冴える"IT ALL
 COMES BACK AGAIN"。実にモダンなリズム・パターンはフィフス・アヴェニュー・
バンドなんかにも通じる世界。この頃のアメリカ人ってみんなそうだけどこいつら
うまいわとにかく。

なんか全曲解説になってしまったがほんとにこのアルバム、クラプトンの最初のソロ
とかと並んで私にとっての実に何というかキング・オブ・ストラトキャスターの一つと
いうか、そういうものなんです。

私はその後テレキャスターに操を捧げたので、そのトーカイのストラトはむかし
元カーネーションの馬田氏にあげちゃったんだけど久々にこれ聴いたらストラト、
欲しくなってきた・・。

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