曲を作るときにいつも苦心するのは、最初のデモでのある意味で
非常に自然な歌唱(つまりでたらめな言葉だ)にどうやって言葉を
乗せるかという事、ストレートな恋愛とか前向きな努力とかプロテ
ストとかを歌にする才能のない僕は、ここでおそろしく行き詰まる。
5人の強者による極めて個性的なライヴ・ユニットTHE BLUEMOU-
NTAINSとの最初の手探りのセッションの中でおぼろげに浮かんで
きたのは、ある種「奇っ怪」なイメージ、吸血鬼だったり、底なし
沼だったり、怪しげな森だったり、飛び降りる男だったりというもの
だった。昨今の世の中のムードと相まって、そういったものをずら
ずら並べたてたこれらの歌詞を読み返すと、どうにもならない人生
そのものという感じがして、CDを手に取った人を落ち込ませてしまう
かもしれない。けれど殆ど数時間で一発録りされた非常にベーシック
だけれど奇妙なグルーヴにあふれた演奏の中で、これらのイメージは
へらへら踊りだしていると思う。これに僕一人で演奏した更に面妖な
4曲を加えてアルバムは完成を見た。内容がそういったものなので、
タイトルは逆に素気なく"ONE OR SIX"とつけた。1人、または6人の
「奇っ怪」なパフォーマンスだ。
◇『one or six』全曲解説は、こちら