第1話

『バビル二世』記念すべき第一話のタイトルは「選ばれし少年」だったかと記憶しています。
いきなりウロ覚え発言で申し訳ないのだが、いっそ「狙われた男子高校生・神谷浩一の危険な放課後」とでも銘打った方が清々しくて良いかと思われます。
何が狙われてるかって、唇とかいうドリーミン&チャーミンなシロモノではなく、命(ライフ)です。
作画は初回からアフガニスタンの暴動の如き様相を呈しておりますが、いちいち目くじら立てても仕方ないのでガンジーを倣って無抵抗主義で対抗です。

『バビル二世』第一話レポート 「セイシュンの食卓」

砂漠に聳え立つバベルの塔。
果てるともなく吹きすさぶ砂嵐に、頬を伝う汗も艶かしく飛び起きる浩一君。
「また…あの夢だ…」
汗をぬぐおうとした、その手のひらからこぼれおちる一握の砂。(石川啄木)

古見家での朝の食卓。
浩一君の正面には由美パパ、パパのお隣の席は由美ちゃんです。
「全く、由美子のヤツいつまで寝てるんだ」
「あ、僕、起こしてきます」
「いい!私が行く!!」
…なにその言い方。
「小僧が色気づきおって。居候の分際で朝メシどころか人ん家の娘まで食うつもりか?!」
みたいな物言いはナニ?
パパなんか大ッ嫌い!!←思春期?

しかし、ぴーち最大のツッコミドコロは「浩一君がパンに何も塗っていない」という衝撃の事実!!
なんだいなんだい?!古見医院は財政難で居候にしわ寄せかい?
浩一君限定で「マーガリン禁止令」発布なのかい??
だってそうとしか考えられないじゃんかYO!!←断定。

いたたまれない気分のまま家を出る浩一君。
通学途中の店先の「アルバイト募集」の告知に目を留めるも、そこには「18歳以上」の要項が。
隣の不動産屋に目を向け、「当分(一人暮しは)ムリか…」とため息。

「浩一くーん」
出た!!夢にまで出た(「見た」だろ)浩一君&由美ちゃんのオフィシャルカップル!!
ありがとうアニメスタッフ!!
背景が辛気臭い商店街だって気にしない、二人がみつめあえば、そこはもう地上の楽園!!
「なんで先に行っちゃうのよ、待っててくれたっていいじゃない!!」
…なにこの毒舌。
アノおやじノ遺伝子ハ確実ニ娘ニ受ケ継ガレテイル…。

さて、娘二人を学校に送り出したオヤジ、早速副業のテレフォンサービスです。
「…最近、夢にうなされているようです。それに部屋に砂が、そうです、砂です」
相手はいささか難聴の人?
しかし、今問題視すべきなのはオヤジが浩一君の部屋の状態を完全に掌握しているということじゃないですか?
「うなされている」という事実を知っているからには、喘ぎ声を余すところなく盗聴・さらには寝乱れている様まで盗撮しているかも知れない!!
連日連夜の盗撮の成果は書斎の「医学全書」とかのぶっとい本の後ろに所狭しと陳列されているに違いない!!!←決めつけは良くないですよ。
私は少々、オヤジを見くびっていたようです。
ただの黄疸オヤジかと思っていたら、大変な粋人だったようです。
青少年を盗撮するようなヤツのどこが粋なんだよ、というもっともな意見は、しつこい襟の汚れもろとも酵素パワーで分解です。

自宅でさえこんな有り様なのに、今また衆人監視の中、「インターナショナルなんとかカップ」が晴天のテニスコートで行われています。
浩一君の股間を支点として、両足と地面との接触点をそれぞれ力点A・Bとした魔の海域・バミューダトライアングルに視線はLet’s不時着です。
試合終了後、ロッカールームで対戦相手のGO田君に絡まれる浩一君ですが、友人の解説役が助けてくれます。
「気にすんなよ、神谷。でもGO田がムキになるのも無理ないぜ、この試合、ハデスの入会がかかっていたからな」
「ハデス?」
薄汚い成り金ジュニアが集う「鳳来学園」に、その存在を受け継ぐ秘密サークルであるハデスは闇の権力組織と直結し、歴代首相の何人かも輩出しているそうで、文武両道に秀でた
生徒が選出されるんだそうだが、現ハデスメンバーを見る限り、揃いも揃って金持ちのウスノロ息子風情なので、ありがたみは皆無です。
むしろ、健全な一般生徒であることを誇るがいい。
しかし解説君は、そんな情報をどこで入手したもんか?
新聞部とかなのか?
一般生徒に実情を暴かれるあたり、ハデスの杜撰な管理体制が窺い知れるというものだ。

解説君のハデス講座で油を売っていた浩一君、待ちくたびれた由美ちゃんに平謝りです。
怒るとコワイ由美ちゃんですが、その頬がばら色に染まっているのは怒りのせいじゃないの。
ねェ浩一君、気付いてこの乙女心…。

「1年D組の神谷浩一君だね」
たとえ間違っていても口答えは許されない、有無を言わさぬ口調で図々しくフレームインしてきた男。
「ええと…あの…」
「生徒会長の穂村さんよ、バカ!!」
生徒会長の穂村光さん、ヒカルさんね。
姓から推察するに、稲穂の豊かに実る集落(及びムラ)出身であり、しかも、土地の特徴を姓に冠ぜられるということは、先祖は土地の長者か地主クラスの分限者であったのだろう。
が、マルコ・ポーロの歴史に残る珍プレーを念頭に、再度検討してみよう。
「本当にうっかりしてたぜ。
てっきり黄金かと思ったら、ただの稲穂だったんだ」
という述懐から、ヨーロッパでの稲穂の花言葉は「みかけだおし」。
「稲穂」と書いて「メッキ」と読む故事から論を構築すると…。
穂村光→メッキヒカル???
最終的にはメッキさえも剥落されてしまうので、メッキハゲルというのが隠された真の字(あざな)なのかもしれん。
まあ、これら全て、うそっぱちなんだが。

「神谷君、これからある場所にキミを招待したいんだが」
「今すぐですか?」
「来たまえ」
ヒカルさんの輝かしい未来のためにあえて進言するならば、それは「招待」ではなく「連行」です。
あの、「署までご同行願えますか」と同列である。
浩一君逃げて、逮捕されちゃう!!
罪状は「可愛すぎるから」☆
私が裁判官なら人心を惑わした罪で無期懲役という名の「拉致監禁」の判決を言い渡します。

(この人もハデスのメンバーなんだろうか…?)
浩一君の心の呟きにヒカルさんは満面の笑顔で応じます。
「ああそうとも」
そうとも???
そうともってナンだよ。
昨今、日本語の乱れは由々しき事態に陥っているが、日常会話レベルで「〜だとも」なんで、「笑っていいとも」くらいしか聞いたことない。
日本語の限界に挑む男・ヒカル。

「ハデスは寮制なんだが、集団行動は苦手かい?」
「いえ、ちょうど家を出ようと思っていたところだったので」
「そりゃあ好都合だったね」
怪しげな洋館(図書室)の地下室に歩を進める二人。
ハデスメンバーが見守る中、ヒカルさんから浩一君へ、ハデスカードが授与されます。
受け取ろうと手を差し出した浩一君の指に、カードの切っ先を滑らせるヒカルさん。
そのあまりにも常軌を逸した行動に倒れそうになった。
ナンデ自分で傷つけておきながら、「困った顔も可愛いよ」みたいな顔をシテルンダーイ?!
この後ヒカルさんはバンソーコーを用意させるんだが、成り金趣味のハデスのことだから、金粉でもまぶしてあるのかもしれない。
それか、水につけると極秘メッセージが浮き出てくるとか…。

ヒカルさん、浩一君の血を見て満足したのか、自分の真向かいの席に浩一君を座らせてハデス講義です。
ハデスには、シャドウネームで呼び合うというしょうもないしきたりがあるらしい。
「ちなみに僕のシャドウネームはレオンだ」と、誰も聞いちゃいないのに浩一君に熱烈アピールです。
「はい、レオンさん」と、初々しく「さん」付けする浩一君に「呼び捨てで構わない」と爆裂アプローチです。
さらにその次のシーン。
地下室でヒカルさん大迷言。
「キミの名付け親になりたいんだが、いいかな」
私は西洋の偉大なる磔ホームレス信奉者ではない。
だから、詳しいことは分からないんだが、キリスト教圏の「名付け親」には生涯肉親かそれ以上に交情を捧げ、クリスマス等では同じテーブルを囲むならわしがあるのだそうだ。
つまりヒカルさんは、浩一君とクリスマスを一緒に過ごしたいってこと?
遠回しな告白のつもりなのかい?
だとしたら遠回しすぎて全く伝わってないヨ!!

しかして、浩一君昏倒。
どうやら出された飲み物の中に即効性の睡眠薬でも混入されていたようだ。
浩一君に近づく便所サンダルの女…。

砂漠に吹き荒れる砂嵐の中、自分を呼ぶ声に飛び起きる浩一君。
「大丈夫?試合の疲れがたまっていたのね。家でゆっくり休めば良くなるわ」
「寮の準備はしておくから。もう今日は帰った方がいい」
そうだろうか。本当にそうだろうか!!!!?(真顔)
私が浩一君だったら何とかあの因縁のホラーハウスから逃れるべく、自分のキュートな容姿を最大限に利用して、あることないこと嘘八百並べ立て、保健の先生に泣きつく!!
さらにヒカルさんに、どこぞですッ転んだ傷跡を、あたかも虐待の痕のようにアピールし、私の涙に心が揺れた瞬間を逃さず部屋に泊めてもらう!!
人は誰しも、自由を求める権利があるのです!!!!

でも、私のように姑息ではない浩一君は素直に帰宅します。
「やはり、あの方と同じDNAを持っているわ」
「フン、気に入らないな」
何が気に入らないんだよ。
テニスの試合の時、思っくそ浩一君を意識してたのはどこの金髪ロン毛だよ。
今までこんな可愛い生き物と親しく交際したことがなかったんで、戸惑いつつも舞い上がっているんでしょう。
確かに今日のアナタはヘンでした。
恋という名のラビリンスに迷い込んでしまった哀れな道化師というよりは、精神汚染のハザマに片足つっこんじゃったアブナイ人でした。
こんな人を生徒会長に選ぶなんて、鳳来学園も中々みどころのある将来有望な生徒達であることよ。

夜道、工事中のビルの手前でバンビちゃんのように身をこわばらせる浩一君。
月明かりにGO田君。
狼男にでも変身しそうな凶悪なご面相に加え、怯える浩一君に魅了されたのか、眼を血走らせて微笑んでおります。
野獣の本能を揺さぶる少年・神谷浩一。
キャッチフレーズも上手い具合に決まりました。
ていうか、GO田。
この日の為に、徹夜で特訓したにも拘らず惨敗した試合の後も、浩一君を尾行していたのかね。
だとしたらお疲れ様!!ストーカーの鑑ですね!!←目尻に輝く真珠の涙
しかし、GO田の前に本物の肉食獣が現れました、その名もロデム。
動物園以外の場所で猛獣と対面するなんて、貴重な経験ですよね。
GO田も浩一君も逃げちゃいましたが。
自分の身に降りかかった数々の奇怪な出来事に混乱して道にうずくまってしまった浩一君の前に、一台のフェラーリ。
「来なさい、浩一君。アナタが何者か、教えてあげるわ」
「桐島先生…」

一方の古見家では、オヤジの小粋な昔語りが。
莫大な借金を肩代わりしてもらう代りに、浩一君を遠縁の子と偽って引き取ることを承諾したオヤジ。
さも苦労した風に、娘の同情を引こうとするが、借金帳消し・浩一君と同居とオヤジ、いいことずくめ。
「もう浩一君と関わらない方がいい、彼は何か、とんでもないモノを背負っているんだ」
お前こそ、とんでもない額の借金背負って何をほざくんだよ。
この借☆金☆王めが!!

バビロンタワーに到着した浩一君を待っていたのはヒカルさん。
週末のステキな夜を、お色直しで演出です。
足元にはGO田。
「キミの為に制裁を加えておいたよ」というヒカルさんは、さながら恋の狩人。
生徒会長だったり道化師だったり狩人だったり、ヒカルさんも大概忙しい男である。
あのお方とやらは、最上階にいるらしい。
エレベーターでのヒカルさんと浩一君の重苦しくも気まずそうな雰囲気・距離といい、集中非難を覚悟で言うが、
「初めてホテルに行く高校生カップル」みたいじゃないか?!
そんな幻覚はともかくとして(爆弾発言をさらりと流す)、浩一君は帰りたい旨をヒカルさんに伝えます。
髪は長いのに気は短いヒカルさんは、怒りに任せて衝撃波を浩一君にダイレクトアタック。
砕け散ったガラスと共に、地上にまっさかさま!!
浩一君、大ピンチ!!
…と、額に浮かび上がる文様と、それに呼応して飛来するロプロス。
ヒカルさんにあてつけがましい一瞥をくれて、浩一君をバベルの塔に空輸です。
手放して初めて逃した肉は大きいと悟る、イソップ童話のような教訓を噛み締めるヒカルさん。
そんでもって、あのお方・ヨミ様登場。
「逃したか」
「ハッ!しかし、彼は我々の敵として必ずや現れることでしょう」
「それは楽しみなことよ…」
ヨミ様…悪代官?
そんなことより、ヨミ様の笑い方が「中村玉緒」なのが気になったぴーち17歳の春。(大うそ。22歳になりました)

これにてレポート完、正直申し上げて、まことに前途多難である。

第2話につづく