闇のすとれんじゃー


scene:9
市街地

午後の町なみ。若い母親に手を引かれた小さな男の子が目を輝かせて、
「ママ、見て!救急車!」
けたたましく響く警告音、回転する赤色灯、
周囲の車が次々に道を開ける、その中を一台の救急車が走り抜けて行く。

救急車の輸送室には、ストレッチャーに横たわって、晴美がいる。
腕に点滴を受け、どうやら眠っている様子。側には二人の白衣の男が付き添っている。
保健室ではなく直に病院へ向かうことにしたのか、
運転席でハンドルを握る男。その隣にユキの姿。晴美の付き添いか、
つと、ユキの手が伸び、ダッシュボードの無線機のスイッチを入れる。
フックからマイクを取り、カチリとプッシュ・トゥ・トークを押す、
「・・・・・
 <クレバーマザー>へ、こちら<スノーホワイト>。
 ターゲット、<スリーピングビューティー>を確保。
 これよりS海岸に向かいます」
カチャ、マイクを戻し、無線機のスイッチを切る。
「うまくいきましたね」
運転席の男が、満足そうに話しかけた。
「まだだ、まだ作戦は終了していない」
きりっ、とした声音でユキが、
いや、ヨミの超能力エージェントの中でも一、二といわれるスペシャルエキスパート、
エミ・ノースフィールド(通称Romping Angel=おてんば天使のエミ)が応じた。
「気をゆるめるな」
「はっ!」緊張感を取り戻した声で、部下が答える。

晴美を乗せて、救急車はS海岸への道を疾走する。

scene:10へ続く