闇のすとれんじゃー


scene:3
理光学園校舎内の廊下。

さきほど、ユキという少女を不良男子生徒から助けた、あの少年が歩いている。
「おーい、うんのぉ!」
廊下を歩いていた全員が、おどろいてふり向くほどの大声が響きわたった。
海野、と呼ばれたくだんの少年、苦笑しつつ、立ち止まって、大声の主を待つ。
「といち、そんなに大声だすなよ」
「なに、声のでかいのは生まれつきさ、」
斗一と呼ばれた巨漢の少年が、また大声で答える。声だけではない、体も大きい。
広い肩幅と同じくらい厚みのありそうな体に、いかつい顔。
しかし、細い目は、優しそうな、人なつこい光をたたえている。

「聞いたぜ!裏庭でやり合ったんだって?」
「いや、たいしたことじゃないんだ・・・」 海野少年、少し困ったように応じる。
「まったく、あいつら、教師が何も言わんから、いい気になって・・・
 ・・・おい!なんだったら力貸すぞ!」
海野少年、あわてて、
「いや、いいよ、ほんとにたいしたことじゃないんだ、
 だいいち、一年生で柔道部の期待の星のおまえが乱闘でも起こしてみろ、冗談じゃすまないよ」
「なぁに、気にすんなって、はははは!」
「おまえが気にしなくても、俺が気にするよ・・・」

ぴくん、
並んで歩きながら、上機嫌で話しをしていた斗一少年の体が、一瞬、こわばる。
「?、どうしたんだ?」目ざとく察知して、海野少年が尋ねた。
にやり、と笑い返して斗一少年、
「海野、わりぃ、先に行っててくれ、」
「どうしたんだ?」
「便所だ、べんじょ!」大声で答えると、どすどすと、男子トイレの中に姿を消す。
あきれた、という顔をして、海野少年、歩み去る。

ややあって、
男子トイレから出てきた斗一少年、急ぐ様子もなく歩き始める。
ただし、向かう方向は、海野少年の歩いて行った方向と違っている。
外見は特に変わった様子はない、
が、もし、斗一少年を良く知る者が見たなら、なんと言っただろう。
さきほどまでの、人なつこい、優しそうな目の光りがぬぐったように消え失せ、
かわりに、凍りつくような、固く鋭い光を放つ目をしていた。
そのまま歩き続け、ある教室の前で立ち止まる。
立入禁止。
電気工事のために、数日前から出入りが禁止されている教室。
だか、この凶悪な顔つきをした斗一少年は、張り紙を意に介さずに戸を開け、中に入った。

薄暗い教室の中。
床のところどころに、電気工事用の機材が置かれている。
そして、正面の壁に、ひとりの女生徒がはりつけにされていた。
生きているのか死んでいるのかはわからないが、ブレザーの胸元は呼吸をしている様子はない。
血の気の失せた顔、
あのとき校庭裏で、隠れて監視をしていた、謎の(美)少女であった。
謎の少女を見た斗一少年は、叫んだ、
「ロデム!」

scene:4へ続く