『この虹が消えるまで……』

 かなり前の話になってしまったが、以前『ときメモ』のラジオが放送されていたのは、このページに来てくれる様な人なら知っているだろうし、聴いてもいたのではないだろうか。その放送の途中で『月刊ときめきメモリアル』のCMが流れていた。その1つに、詩織と虹野さんが
「私たち、卒業します」
 って言ってるCMがあったのを皆さんも覚えているのではないだろうか。
 そうか、時系列的に虹野さんも卒業か(詩織もね)。そう言えば1つ年下だもんなあ。そう思いながらラジオを聞いていた渉部はふと、思った。彼女たちはこの先どうなってしまうのだろう?ゲームの中の事ではなくて、現実世界での話。とりあえずドラマシリーズが後2つ残ってる(その時、まだ『彩のラブソング』は出てなかった)。そう言えばクイズのやつもあったなあ。それに『2』が出る事が決まっている。
 でもきっと、『2』には虹野さんやその他の女の子達は出ないんだろうな。こうやってコナミが虹野さん達を"卒業"させてしまったんだから。まあ、コナミの場合、はっきり言ってわかんないですけど。 ただ、渉部個人の予想というか勘では、これ以上オフィシャルでの新しい虹野さんは出てこないような気がしてならない。
 新しい『ときメモ』の世界。そこには新しい女の子たちがいる。新しい『ときメモ』の世界。そこに、虹野さんが、いない。
 あなたはどう思うだろうか? 虹野さんが、いや、虹野さんじゃなくてもいい。あなたが萌えた女の子がいない『ときメモ』。あなたは想像できるだろうか?
 渉部には無理なことだ。なぜなら渉部にとって『ときメモ』イコール"虹野沙希"だからだ。完全に"イコール"ってわけではないかもしれないが、でももし『ときメモ』に虹野さんがいなかったなら、こうやって『ときメモ』について書く事も、ホームページを持つ事も、インターネットにハマる事も、PCを買う事も無かったに違いない。虹野さんがいたから、渉部は『ときメモ』にハマったんだ。なにより、虹野さんは渉部とって理想の人間像であり、渉部は虹野さんからやさしさや思いやり、諦めないことの大切さといった、人間にとって最低限且つ一番大事なことを学んだ。渉部にとって、虹野さんとの出会いというのはそういうものなのだ。
 確かに、気持ちの問題ではあるのかもしれない。プレーヤーが彼女達のことを忘れさえしなければ、彼女達は"永遠"に存在しうる。伝説の樹の下で彼女達から告白を受けたプレーヤーにとって、それは権利であり義務であるようにも思える。なにより、伝説は二人の永遠の愛を保証するものだからだ。
 しかし、残念ながら、『ときメモ』はいつか消えゆくハズである。頭の中を虹野さんのことで一杯にしながらこの文章を出力している渉部も、今は考えられないにしても、きっといつかは『ときメモ』を忘れてしまうのだろう。思い出に変わり心の引き出しにしまってしまうのだろう。そのうち、虹野さんの、声も思い出せなくなるのだろうか?
 あなたにとっては大袈裟でバカげた話に聞こえるかもしれない。そう、『ときメモ』はたかがゲームである。しかし、渉部にとって、虹野さんとの時間は"たかが"では済まされない、済ますことのできない大切な時間なのだ。
 あなたにとって『ときメモ』は、思い通りにならなかった高校生活を補完する単なる疑似体験に過ぎないのだろうか? スイッチを押せば途切れてしまう時間でしかないのだろうか? 渉部にとっては、それは疑似体験でもなければテレビが漆黒の闇に染まった瞬間終了するものでもない。現在進行形の恋愛なのだ。
 もちろん、虹野さんは渉部の心の中の存在でしかない。そんなものに恋愛感情を持つのは変なことだろうか? イヤ、万人が変なことだと感じようが、そんなことはもはや渉部には関係ないことだ。恋愛は心でするものだ。そしてはっきりと感じる。

 渉部は、虹野さんのことが本当に"好き"なのだ。

 それでもいつかきっと、この気持ちはどこかに消えてしまうのだろう。
 だから今はまだ、おもいっきり虹野さんのことを好きでいようと思う。
 今は、それが一番気持ちいいから。

委員会室に戻るHOMEに戻る