【彼女が髪を切ったとき……】

 えー、もちろん今これを読んでくれてる良い子のあなたは『ときめきの放課後』(以下、『とき放』)で虹野さんのエンディングを2パターンとも見てますよね? もし、奇特にもまだ見てないと言う場合は、さっさとパソコンなんざあ燃えないゴミの日に出して、とっととエンディングを拝見し、虹野さんの優しさに触れ、これからの人生に希望を燃やし、つらいときも切磋琢磨し、自然環境にも留意し、捨てたパソコンを買い直して再びこのページを見るとかいうめんどくさいしお金の無駄だし地球にやさしくない事は全然やらなくていいので、とにかくさっさと虹野さんのエンディングを見やがれってんだコンチクショー! という前振りは長いと思うな>虹野さん。
 とーにーかーくー、エンディング見てねえとネタバレになっちまうし読んでも全然面白くないのでさっさとプレイしろってこった、というかプレイした方がより楽しめますよ、はい。
 あ、えっと、真面目に話します。
 虹野さんが髪を切った姿を見た時、みなさんはどう思ったんだろう? あの、2つ目のエンディングを見てかなりショックを受けた渉部は、いろんな伝言板に、このなんとも言えない気持ちを書き込もうとしたが、ネタバレになるので抽象的な事しか書けず、それに対するレスもやはり抽象的だった。しかもなんか、みんなも同じように衝撃を受け、モヤモヤしてるのかと思いきや、けっこう淡々としてやがっていらっしゃった。良く考えてみると、あの頃この問題についてガタガタ言ってるのは渉部だけだったのかもしれない。
 しばらくして、エンディングを見た人も増え、情報も出回ってくると、多少ガタガタ言う人も増えたと思ったのは渉部の気のせいであり思い込みであり幻覚であり幻聴であり願望であり見間違えであり、そういった輩は少しも増えなかった。賛否両論には程遠い。いつまでたっても
 「渉部さん、確かにあのエンディングは無しって感じだよねショックだよね全然納得いかないよね責任者呼んで来いって感じだよね」
 と言う人は現れなかった。もちろん話題にはなった。しかし皆さんの意見は
「アレはアレでカワイイよね。やっぱ虹野さんだし」
 ってな感じであり、渉部としては非常に不満だった。こう言うと失礼な話なのだが、
「うーん、なんでアレを見てその程度ですんじゃうんだろう?」
 とか思っていたのである。と思いつつも、自分でも何をそんなにショックを受ける必要があるのかわからないでいた。
 しばらくは自問自答の日々が続いた。虹野さんの象徴たる"もみあげ"が無いからか? それとも虹野さんのチャームポイントであるギザギザが無いからか? ヒントになるかもしれないと「もう一度エンディングを見ようか?」とも思うが、なんか見たくない。そのくらい渉部にとってショッキングなことだったのである。
 答えは何の前触れもなく突然降ってきた。そう、突然に。
 渉部が感じた違和感。それはもみあげが無いことでもギザギザが無いことでもなかった。いや、それが原因である事には違いないし、そういったビジュアル的な変化がなかったらこんなことは思わなかっただろう。でも、「やっぱ髪型のせいだな」とは言えない。なんて言えばいいんだろう? 髪型が違う事よりも、髪型が違うことの結果が渉部に違和感を与えた。多分そういうことだ。って抽象的な事ばっか言ってじゃねえよ>あなた=スイマセン>わたし。
 渉部がショックを受けたのは虹野さんが"大人になっていたから"なんだと思う。
 渉部の個人的な想像だが、あのエンディングの虹野さんは21歳とか22歳くらいだと想像する。あの髪型はみんなが言うように大人っぽくって、虹野さんがこのくらいの年齢になったらこんな感じなのでは? という渉部の想像に見事にマッチしていた。虹野さんも大人になれば「カワイイ」ではなく「キレイ」と言われたいと思うようになるのだろうから、当然の変化だと思う。でも、それゆえに、渉部はそれを受け入れる事ができなかった。
 なぜなら、虹野さんの前での渉部はきらめき高校の一生徒で、虹野さんもまた、きらめき高校の一生徒だからだ。虹野さんは、今回のようにシチュエーションによって年齢が変化してしまうが、基本的には高校生だ。歳をとらない。それに対して、残念なことに渉部は歳をとる。少しずつ二人の年齢は離れていってしまう。でも、虹野さんの前では渉部は高校生で、二人は同級生なのである。
 渉部がお世話になってるほりさんのページ『ちいさなことば』(注:もう閉鎖してない)のアンケートで、渉部は当然「新しい髪型はあまり納得できません」を選択した。そこに書いたコメントは、
「置いて行かれたような、そんな気分」
 だった。ここでも抽象的なことを書いてやがる渉部なのだが、ようするに、

「虹野さんだけがなんの前触れも無く突然、大人になってしまったから」

 これが、渉部が納得いかなかった理由。
 一人だけ大人になってしまった虹野さん。高校生であろうとした渉部は「置いて行かれた」と感じた。そしてそれは、虹野さんがどこか遠く手の届かないところに消えて行ってしまうのと似ていた。

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