ときめきメモリアル対戦ぱずるだまの思い出

「あーんま落ちゲーは好きじゃないんだよねー」
 人に落ちゲーの対戦を持ちかけられるといつもこう答えていた。なんとなく肌に合わないというか。
 そう思っていた渉部に、神は
「貴様も落ちゲー、シロ!」
 と言ったかどうかはともかくとして、渉部にも落ちゲーに身を投じなければいけない時が来ちゃったのでそのようにしなければならずまったく困ったもんであったが100年目、男の必需品とも言える灰色が渋いし見ただけで女子もジュンときちゃうわけな……あ、その、な、なんでもない……>虹野さん。そんなカッチョいいセガサターンは唸りを上げてそのCDを読み込み出した。まあ、前述の文を要約すると『ときめきメモリアル対戦ぱずるだま』(以下『ときぱず』)をやることになったわけだ。
 知ってのとおり元々はアーケードのゲームであるが、コナミもまったく商売上手ですな。えてしてときメモラーと言うものは、『ときメモ』の名を冠する物はなんであろうと購入したくなってしまう悲しい性をもった生き物なのだ。
 某ゲーム雑誌でこの画面を見た時は正直頭に来ていた。決して『ときメモ』と『ぱずるだま』を安易にくっつけたからということではない。そのことに関しては、むしろこういう手段もあったんだ、と感心したほどだった。渉部が頭に来たのはそのグラフィックである。おもわず「だれだ、おまえ?」とか出力したくなってしまうほど、そのグラフィックは本編とはかけ離れたものだったというか、あんまりかわいくないんだもーん全体的にー。
「くっ! オレの虹野さんが……。ゆるせん、コナミ!」
 そんな気持ちでプレイを始めた渉部はこのゲームに於けるグラフィックに関する諸問題ついて黙認することにした、っていうかものの見事にこのゲームにハマっちゃったんでこのゲームを愚弄することができなくなった。
『ぱずるだま』自体の内容については、まあここでは、よくできたゲームだし簡単に連鎖も起こるし爽快だから初心者でも入りこみやすいし比較的愉快だヨ、程度にしておき、詳しいことは割愛させていただく。
 さて、この『ときぱず』においてプレイすべきはどう考えたって"根性モード"であろう。他のモードははっきり言って意味のないものでありどうでもいいものだといえる。特に虹野沙希を敬愛しまくってる人(もちろん私)などはもう、これ以外は絶対にやってはいけないのである。
 このゲームの目的は虹野さんを伝説の樹に無事たどり着かせることであるというか、このページにおいてはそういうことになっている。この『ときぱず』で渉部が気に入ったのはそこである。本編では伝説の樹に向かうのはあくまで主人公で、女の子は待っているだけの存在だった。このゲームでは逆にプレーヤーは虹野さんが伝説の樹にたどり着く手助けをするのだ。これはもう二人の愛の共同作業な感じだしなんとなく使命感に燃えることができるし愛のキューピッド状態なわけだ。好きな人のために何かをするという充実感を得られるわけなのだから、これはもう物心のつかない赤子から冷徹無比な悪の大幹部だった燃えずにはいられないだろう。
 みたいなことを考えるようになったのはハマってからの話で、当時の渉部は「ケッ、こんなときメモ人気にあやかったゲーム楽勝でしょ3秒ありゃ十分でしょ」といったかなりてけとー&舐めきった気持ちで根性モードに挑戦した。
 2時間……3時間……7時間……。そう、渉部は夜は明けたしそろそろ学校に行かないと少々ヤベエ時間になった頃伊集院を打倒することに成功した。虹野さんのセーターは唾でびちょびちょになりかなり伸びきって穴も空きかけている状態だったつまりコンピュが強すぎなんだよふざけんなよオレの貴重な睡眠時間を返しやがれこのプログラム野郎! といった感じの難しさだったので、渉部はちょっと人には言えないくらい負けまくっていた。
 まあ、なんにしろ勝ったのだ。渉部はすがすがしいわりには重過ぎるまぶたをカッ! っと見開き、エンディングを見るための準備をした、というかテレビの前に正座した。
「さあ、虹野さん、その笑顔を見せておくれ」という渉部の願いとは裏腹に、伝説の樹の陰から詩織が現れやがった! 嫌な予感だぜ……。
「ぱずるだまで勝負よ!」
 ズキャ−ッ! やっぱり! ふざけんなよの小娘こっちは超死ぬほど苦労してここまでたどり着いたんだぞ多少寿命も縮めてんだぞそれをノコノコ勝負だと!? そんな都合のいい話あるわけねえだろこのドロボウ猫がっ! っていうかお願いしますよこっちは寝てないんすよそれに学校行かないといけないんすよマジで勘弁してくださいよ美人の詩織おねえさまぁ(世辞)。といった渉部の願いもむなしく勝負は始まってしまった。虹野さーん、人が良すぎますよー!
 果たして渉部は詩織の前に屈服した……。虹野さんの意中の人は不届きにも詩織の告白を受けていた。そして遠くからそれを見ている虹野さんの後姿……。
「あの二人ならお似合いよね……」
 虹野さんはそう言った。渉部を襲う凄まじいまでの罪悪感。自分の力の無さを悔やむことしかできなかった。なんて不甲斐無い男なんだ、オレは……。そう思った瞬間、渉部がすることは決まっていた。一回睡眠し今度こそ虹野さんの願いをかなえるのだ。
「Try agein 私もがんばらなくっちゃ」
 いいんだ、虹野さんはなにもしなくて。今度こそオレが君の願いをかなえてあげるから。
 え、学校? もちろん休みましたよ。決まってるじゃないですか、そんなの。

戻るHOMEに戻る