流れを測る

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生態系における水や空気、元素など物質の流れを定量的に知ることができれば、それは、人間が生きてゆく上でとても重要な情報を得ることになる。私も、いろいろな試みをしてきたが、結構難しいことであると痛感している。そこには勿論、経済的な問題もあるが、基本的には技術的問題が多いためと考えられる。

例えば、浜名湖の水質汚濁が問題になっていた頃、それは全国各地で同様な事態が発生していた頃であるが、河川経由の窒素、リンの負荷量を計るのに良い方法はないか、と調べてみた。その当時、正確に計るには三角堰と流速計で流量を測り、高頻度で採水して機器分析をするということらしく、原始的であってお金と手間がえらくかかることが分かり、あきれたものである。

また、例えば、大気汚染で地表に落ちてくる大気汚染物質を定量的に知ることができれば、酸性雨も含めて大気汚染の未然防止に直結するなど、大変役立つのだけれど、これまた、手間・暇かかって精度も良くない。たとえば、濃度までは計測できるのだけれど、落ちてくる速度、つまり、どのくらいのものが単位時間あたりに降ってくるか、はもろもろの仮定をおいた計算式で推定するとのこと。

PCBは、法律で使用が禁止されたにもかかわらず、集荷貯蔵された膨大な量がいまだに分解処理できずにいるという。分解技術はいろいろあるのだが、コストがかかりすぎて、少し宛しか進まないのだそうだ。そのような有害化学物質は多く、お役所も企業も悩みを抱えている。レーザーで分解する技術が、今より低コストで使えるならば、事態は大きく改善されるのではないだろうか。

私が、環境庁の公害研究所へ入所したとき、大気部門では、天文台のような大きなドームにレーザーレーダーを設置して、広域の大気汚染物質の時空間分布を計測しているのを見てびっくりしたものであった。しかし、よく聞いてみると、そのレーザーレーダーで直接、気体を計るのは無理で、エアロゾルなどの固体や液体の浮遊物を計っている、ということが分かった。これも後で分かったことだが、このレーザーレーダーには我が社が関わっていたようである。

例えば、上記水質汚濁に関わる河川の物質負荷量は、河川流水断面と、その断面における流速分布を光学的に計ることができれば、まず流出水量が分かる(実は、この部分は「ドップラー型流速計」の技術として実現している)。そこに水中窒素、リン濃度が連続的に計測(光学的に分かれば申し分ないが)できれば、それで分かるはずである。我が社の技術をすれば、そう難しくないのではなかろうか。そこそこのコストで提供できれば、世界中の官庁、企業、研究者に計り知れず強力な援軍を送り込むことができる。

また、例えば、オープンパス法というガスフラックスの計測法がある。研究用には使えても、コストや技術の難しさなどのため実用化が難しいという現状である。これが実用化されれば、大気汚染物質や温室効果ガスの時空間分布が正確に分かるようになり、大気汚染、温暖化などの情報が飛躍的に向上し役立つことこの上ない。世界中からの引き合いがひきを切らないであろう。

思うに、我が社の研究陣は、農業もそうなのだが、環境問題、環境技術に詳しくない。それらに詳しくなれば、光技術でそれらを大きく前進させることができ、商売も社会貢献もできるのではないか。社長の言は、「できないと言わずにやってみろ」であるのだが・・・

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