俳句とは
これは新聞記事よりの覚書である。 夏目漱石が熊本の五高で教鞭をとっていた頃のことである。ある学生が夏目漱石のもとを訪ねて質問をした。 「俳句とは一体どんなものですか?」 「俳句はレトリックの煎じ詰めたものである。扇のかなめのような集注点を指摘し描写して、それから放散する連想の世界を暗示するものである。 花が散って雪のようだ、といったような常套な描写を月並みという。 秋風や白木の弓につる張らん、といったような句は・・・・・・よい句である」 学生は、俳句が作りたくて仕方がなくなった。そして死ぬまで俳句を作り続けた。学生の名は寺田寅彦。 磯田道史(茨城大学準教授)「昔も今も(教師@)夏目漱石と寺田寅彦」朝日新聞、be on Saturday, Entertainment(2007.10.6)より |