リファール王宮通信
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TEST/1/20テスト書きこみです。テスト書き込みです。テスト書きこみです。
暗き予言/2/1■「天よりは黒き、地よりは赤き、そして人には青き災いが、今年の末にこの街を包むだろう」黒いフードを深くかぶった女の口元がそう呟いたとき、リファールの女王たるリュキアン姫は、ぶるぶるっと背筋が震えた。■「リュキアン姉さま、この者からは邪悪なものを感じます、耳を貸してはいけませんわ!」傍らの少女がそう耳元に囁いた。愛らしい瞳をきりっと吊り上げて、占い師をにらみながら。「……脅しです。何が目的かは存じませんが、マイリー神からいただいたこの毛の生えた心臓は、そんな脅しには震えませんわ!」少女はそう言って、およそ「毛の生えた」とは無縁に見える、自分の胸をこぶしで叩いてみせた。■だが、姫はもとより白いその頬を青くして、少女を制した。「おやめなさい、ヘブリン」そして身の震えをなんとか押さえようと、玉座でみじろぎをする。しかし占い師に語りかけるのには息をととのえる数秒を要した。「黒き鴉バセルテットとやら……貴方はなんの意図あってその危険を告げるのですか?」「リュキアン姫の御統治が、安らかに長く続かれますようにと……」「呪いのような予言は真理を告げるのに、自分の意図には真理は告げられませんか?」「……まさに賢明な君主になられましたのですね、姫さま」女の紅い唇が、くすりと笑った。■リュキアン姫とて、この数年を無為に過ごしたわけではない。この苦労の数年、彼女の霊的な能力とて増している。まだ十六歳のロマールから来た従姉妹、ヘブリン・カラントに告げられるまでもなく、この女から発せられる危険と瘴気は感じ取っていた。■占い師が退出した後、ヘブリンは憤然とリュキアン姫にくってかかる。「姉さま、あの者のたくらみ、このわたしが見届けますわ」もとより許すわけもない。だが勇敢な少女は引き下がろうとしなかった。「わかりました……でも決してリファール市内から出てはいけませんよ?この街の中であれば安全なはず」傍らで女騎士ジェライラが苦笑した。こう落ちついたふうに見えても、ヘブリンが行かなければ、リュキアン王女が出かけて行きたがるに違いない。だがそれは必要なことであった。リファールに危機が近づいているのなら、それが完全に姿を表す前になにかをしなければ……。
/2/14「本当にこれでよかったのだろうか・・・」椅子に深く座りながら老人は溜息をついた。その右隣には温厚そうな耳の尖った褐色の肌の男性、その左隣には柔和な笑みを浮かべる太り気味だが日に焼けた肌の女性が座っている。■「アレは純粋です。”母国”(リファール)を愛している。そういう輩のみ遣り遂げる事が出来るのです。」褐色の肌の耳の尖った男は表情を変える事なく老人に語りかける。女性はただ笑みを浮かべているのみであった・・・。
報告(「石像の砦」・葬られる真実)/2/16■「……申し訳ありませんでした」 ひざまずいたままの男は、そう報告をするほかなかった。下を向く顔には悔しさがありありと窺える。■「しかたあるまい。向こうの方が我々より一歩先んじていたに過ぎぬ」ラスから城下を眺めながら報告を聞いた老人は、それを責めることもなく返事した。ビド・オレイアス…リファールの大臣にして、リュキアン王女の側近である。そのオレイアス老の口調に報告に来た騎士も少々安堵の表情を浮かべる。が、すぐにもとの表情に戻ると、報告を続ける。「我々が例の兵士の部屋を急襲した際には、すでに彼は石の像と化しておりました。その顔には驚愕の表情が浮かんでおり、自らの身に何が起きたのかはわからなかったのではないかと推測いたします。回収しようとしましたが、内側より爆発し石屑となってしまいました。この際、近づいていた兵士が2人重傷を負いましたが、チャ・ザ神殿にて治療を受けており、大事には至っておりません。その石屑ですが…ご覧になられますか?」 「わしが見たところで何も分かりはせぬ。それよりも今回の一件は…」 「もちろん、街の者には公表しないように手配しております。冒険者たちには報奨金を渡し口外しないことを約束させておきましたし、万が一にことが漏れた場合でも、『兵士は捕えられ、厳しい尋問の上で処刑された』と兵士たちに噂させております」■「またしても城内に…」 騎士が退室し独りになったオレイアスは、苦虫を潰した顔をする。異形の者が何らかの謀りごとをしており、それに内通する者が城内に紛れている。もはやこのリファールの城は鎧のほころびが見えてしまっているのかもしれない。正体の見えない者たち・・・これがジェライラから報告のあった青き災いなのだろうか……
ファー伯爵/ロマールからの支援報告/3/16端正な美貌と知性輝く風貌を持つこの男ファー伯爵は、ロマールの伯爵位と リファールの伯爵位を持っている。 怪しい噂が絶えない人物だがリファール王家への忠節・現体制への支持が確かなのも 彼の過去の業績によって明確である。 最近まで喫茶店店主をやっていたのは王女の真似をしただけと広言して憚らない。 本日ファー伯爵はロマールからの支援物資の目録と投資計画書を持って王宮に入って行った。
声を届けるもの/3/28■「まあ、かわいい……」 アミュレットを見たリュキアン王女はその一言だった。手にとって先端の丸い宝石を見つめたり、自らの首にあてたりする姿はいかなる身分のものでも変わらないようである。持参したオレイアス大臣も楽しそうにしている陛下の様子に、頬をほころばせる。■「ジェライラにも似合うのでは?」 そう言ったリュキアンは、傍で不動の姿勢を保っている女騎士にかけようとする。「いえ、私は…」 ジェライラが首をのけぞろうとするが、王女はそれを許さなかった。「よく似合っているじゃないの。まあ、鎧の上からって言うのが不恰好だけど…」 赤くなっているジェライラにリュキアンは続けていった。「せっかくだから、そのアミュレットはあなたが身につけなさいな。今度、それに似合う服を探しにいきましょうか」 ■「とんでもありません!」 さらに紅潮したジェライラと顔を青くしたオレイアスが思わず声を荒げた。「そ、そのアミュレットは私が王女様にと作らせたものです。それを容易く配下の者に下げ渡されるなどと…」 声をしぼめてオレイアスが続けたが、リュキアンの返答は意外なものであった。「あら、これは同じ物がもう一つあるのでしょう? それもいっしょでなければ、役に立たないじゃない」 ■「だから、もう片方も私に差し出しなさい。あなたが持っているより、私とジェライラで持っている方がよほど役に立つわ」 オレイアスの顔がさらに青くなる。なぜ……行商には口止めをしておいたはずなのに。はっと気づいて、女騎士のほうを見ると、ジェライラは申し訳なさそうに「実は、姫様に頼まれてチャ・ザ神殿に書状を届けに参りまして、その折に…」と頭を下げた。■「そうそう、持ってくるときに合言葉も教えなさい」 うなだれているオレイアスにリュキアンはあくまでも意地悪っぽい笑みを投げかけるだけであった。
密談〜闇との駆け引き〜/4/17「狼が動き出しました。」「・・騒動はそちらも困る筈だろう。かのものを動かせば街に被害がでると言ったのは貴公であろう!!」暫くの沈黙「その被害を最小限にする為にもギルドには手出しを控えていただきたいのです。」「それはそちらの都合であろう?」「ディリアス候・・」その名は爵位の存在しない西部諸国ではは異質に聞こえる響き・・・「ロマール辺境区の侯爵がリファールに来ているとは聞いておるが」平静を装いながら答える声・・「彼女とは何か因縁があるそうです。」潜む警句をあえて無視して男は答える。「こちらも深く関わり合いになるつもりはありません。それに、盗賊ギルドと戦闘を起こすつもりもありません。そして侯爵殿を怒らす様な真似も支度はないのですが・・」「仇討ちか?つまらない感情だ!それが分からぬ貴公でもないであろう?」「こちらの要請は出しました。これまで通りドレックノールの存在がある以上、上手くやっていければと思います。」■深く礼をして個室から出てきた男は、氷虎の二つ名で呼ばれるフリーガード隊員であった。
麗舞/4/17剣と剣とが激しくぶつかり合う。澄んだ音が響く中両者の位置が入れ替わる。■ふた呼吸の後、青銀の髪を持つ女戦士が切りこむ、剣狼と呼ばれるのに恥じぬように斬撃は鋭く速い。再び剣が音を弾き出す。幾度も・・・幾度も。■ここは、鍛えの間。騎士達がその腕を競い磨く為の場所。されどここがこれ美しい闘士を得た事はかつて無かったであろう。■女騎士ジュライラの剣が低く唸りを上げる。次の瞬間2本の剣は宙に舞う・・麗しき主人達の元から離れて。■暫しの間があり、リュキアン姫の感嘆の溜息の後「それまで。素晴らしかったですわ。ジュライラもレムリアもこの国を護る方がこんなに強いのでしたら・・」微かに頬を紅潮させながら二人の女戦士に語り掛ける。■ジュライラは知っていた。レムリアが本当はもっと軽い剣を好む事。しかも本来彼女が2刀流の剣士である事を・・王女から離れると「何故?」と聞いた。答えは「リキュアン王女に舞を見て頂く為です、騎士殿。」その声に僅かな感情さえなかった。レムリアはその代価として王女から一枚の紙を得ていた。■暫くの沈黙の後、二人は別の道を行く騎士は王女を護る為、戦士は敵を狩る為に・・・。