鏡台
 柄鏡は鏡面が酸化しして曇らないようにするためもあって,使用しないときには布に包んで鏡箱に納め,化粧するときには鏡台に掛けて用いた。
 鏡箱や鏡台は蒔絵や螺鈿をほどこした美しいものである。
 鏡台は髪を整えたり化粧をしたり,それらの道具をしまうための家具として普及した。
 また,降りたたみの出来る鏡掛けも多く使われた。

 明治時代には,ガラス鏡製の鏡台が,急速に普及し,錆びることが無く手入れが簡単で,文明開化のシンボルの一つに数えられた。
 昭和34年,工業デザイナーの豊口克平らのアイデアによる,整理だんすに鏡をつけた新しい形の鏡台が登場した。
 これはドレッサーと名づけられ,住居が洋風化するとともに,椅子がつけられたり,三面鏡になって左右側面を映せるようにまた,立ち姿が

見えるように大型化し,今日では建築や光学機器,宇宙探査など様々な分野で鏡が活躍している。

梳き櫛
 江戸時代は腰よりも下に伸びる髪を結って整えるのであるが何週間も洗うことはしない。
 梳き櫛という極めて目の細かい櫛で髪油をつけてていねいに梳くわけである。
 梳くことが洗髪の代わりをしていた。たまに洗う時は,お天気のよい日の昼間に卵の白身や布海苔で丹念に洗った。

 柘植の木で作られた梳き櫛は歯が細かく毛髪や頭皮の手入れと,フケを浮かして梳き取るのに大変重宝で,静電気が起きにくく,枝毛ができにくいという。
 プラスチックでは決して出せない柔らかいぬくもりは,使うほどに手に馴染んでくるとあり,自然と愛着も湧いてくる。
 現代では,水泳プールなどでケジラミをもらってきたりした子どもの毛を梳くのにお母さんが,梳き櫛を使って,卵を取り除くために使ったりする。

 櫛は縄文時代ぐらいからみられる道具で,木製・金属製・漆器などがあり, 使い方によりいろいろな形がある。
 大きく分けて,髪を梳かすために使う梳き櫛のほか,髪に挿して結った髪の形を整え,飾る挿し櫛がある。

髪飾り
 江戸時代は男も女もけっこうおしゃれで,様々なアクセサリを身につけたが,女性のアクセサリーの筆頭はやはり手間を掛けて結い上げた髪を飾る様々な髪飾りであろう。

 髪を巻き上げるための棒状のこうがいは,まげから外に出る両端 部分に金や銀で装飾が施され,美しくデザイン性の高いものに変化し た。
 べっ甲は,輸入品で大変に高価であったため,明暦ごろ(1655〜57)までは,その代用品として馬爪、牛爪製の櫛がさかんに製造された。
 天和,貞享(1681〜87)時代の頃になると一般庶民にも華美な風潮が流行してべっ甲が流行するようになる。
 結髪の場合,痒くなっても,指先が頭皮に届かないので掻くときに困る。
 そこで,耳掻きのような形にしたものが大いにウケ,享保三,四年(1718年)ごろに広がり一般的な形として定着した。

 かんざしは ,シンプルな玉かんざし,形が薄く平たいデザインの平打ちかんざし,歩くたびに一部がゆれるびらびらかんざし,花の飾りの付いた花かんざしなど,色々な種類にデザインされて女性の髪を飾 る。  花かんざしは季節あわせた細工のものを付ける習わしで,正月は稲穂,一月は寒菊に松・鶴,
二月は梅,三月は菜の花,四月は桜,五月は藤,六月は柳と撫子,七月は団扇,八月は薄,九月 

は桔梗,十月は菊,十一月はもみじ,十二月,まねき等々といった風である。
 おおむね,櫛と笄はセットになったデザインのものが多く作られた。
 たくさんあるので,をまとめてあとで紹介する。
 髪を動かないようにするというのがかんざしで,本来は動かないものである。
 ところが江戸元文年間,歩いたり,ちょっと頭を動かしただけでヒラヒラと揺れて光ったり,音がしたりするぴらぴらかんざしが登場した。
 この発想の転換は大当たり,大流行をした。
 頭だけでなく,懐紙をいれる胸元にもちらりとみせて着けたりした。
端唄
 銀のびらびらかんざし,誰に買うてもうろた
 ちょいとちょいと
 おとっつあんの江戸みやげ
 舞妓さんが,花かんざしに加えてさらに銀のびらびらかんざしを付けるると,ゆれて光り,澄んだ音色がかすかに聞こえる。(左から3番目のかんざし)

帯かんざし
 上の写真の左から4番目のものは,留め櫛簪として,帯につけて,豪華な錦などの刺繍を施した懐紙入れと一緒に胸元からすこしのぞかせるようにして,更に華やかさを増す飾り方に使われ る。

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