明暗を分けた女達A 後藤久美子 vs 宮沢りえ

1992年10月某日――。
その夜ワタシは、友人との長電話に興じていた。
つけっぱなしのテレビからは、絶えず音声が流れていたが、おしゃべりに夢中のワタシの耳には、それらはすべて素通りしていった。
まさにその時、久米宏が世紀の大ニュースを伝えていただろうにもかかわらず――。


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かつて二大美少女として、お茶の間に花を咲かせた、宮沢りえと後藤久美子。
生年月日を調べてみると、りえは'73年4月、ゴクミは翌年3月と、学年も一緒だ。
「三井のリハウス」で話題になった宮沢りえだが、ワタシが最初に彼女を見たのは、スクリーンの中。「ぼくらの七日間戦争('88年 角川)」の映画予告だった。
そして、すでにNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」の愛姫(めごひめ)役で、国民的美少女として人気を得ていたゴクミと並び、スターダムを駆け上がっていく。

非の打ち所がナイ正統派美少女、後藤久美子。しかしそれゆえに、案外ツブシの利かない素材でもあった。対して宮沢りえは、どんなジャンルにでも多様に生かせる、柔軟さを持ち合わせていた。

当時のCM界は、小泉今日子がやや下火になり、3M時代(宮沢りえ、観月ありさ、牧瀬理穂)到来。

んが、ことビジュアルに関して、りえは他の二人を大きく引き離していたように思う。
古風なキモノからふんどしルック、果ては怪獣の着ぐるみまで――。どんな衣装もヘア・スタイルも、すべて消化してサマになってしまうという彼女の持ち味は、芸能界広しとはいえ、稀有な存在ではなかっただろうか(類似商品:吉川ひなの)。

数あるCMの中でも、ワタシが強く印象に残っているのは、「カルビー・ポテトチップス」。
ショート・カットのウィッグをつけ、海岸ではしゃぐりえチャンは、いかにもアバズレ娘といった風情。
モノクロ画面の中、彼女が見せる、悪戯っぽく、それでいてひどく無邪気な笑顔は、たまらなく魅力的で、思わず目を見張ったものだ。
った15秒たらずの時間の中で、彼女は製作側が求めるモノをを完璧に、いや、それ以上のモノを出しきっていたのではないかと思われた。

一方のゴクミも、日立のワープロ「ウィズミー」や、お馴染み「オレオ」のCMなどに出演していたが、こちらはイマイチ、インパクトが無かったのが残念である。


そんな二人には、ひとつの共通点があった。
それは、"セリフを言わせると、とたんに色褪せる"というものだ。
歳よりも大人びた風貌にもかかわらず、いざ口を開くと、ぶっきらぼうで味も素っ気も無いゴクミ(類似商品:上原多香子)。コレならチー坊※の方が、よっぽどお色気があったぞ。
(※注:杉田かおるの幼少時代)
りえもまたしかり。最初に見た「ぼくらの...」の予告で、たった一言のセリフを聞いた時から感じてたんだけど、ビジュアル的にはバッチリの彼女なのに、セリフを言わせるとナゼか薄っぺらな雰囲気になってしまう。歌もヘタだし。

いくら美少女とはいえ、ビジュアルだけでこの世界を生き抜くのは難しかろう。

果たしてこの2人の将来やいかに?  まったく余計なお世話なのだが、んなコトを考えていた矢先、冒頭のニュースが飛び込んだ。


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友人と電話でくっちゃべっている内に、やがてテレビは「ニュースステーション」から「トゥナイト」へ。
なにげに画面を見やったワタシの目に飛び込んだテロップは

「貴花田・宮沢りえ 結婚!!」


へっ? 

新しいドラマでもはぢまるのかしらん...。だが、相撲取りの貴花田が、ドラマになぞ出るハズがない。
オマケに画面に映っているのは、会見中の藤島親方ではないか。


「たったたた大変!!」

受話器に向かって叫ぶワタシ。
「どったの?」
「と、とにかく、テレビ!すぐ10チャンつけてッ」

いやァ〜、ホンット驚きました。
生まれてこのかた、公私を含め(?)いろんな結婚のニュースを耳にしたけど、後にも先にもこのカップル程ワタシをビックリさせたものは無かったね。
テレビを見てブッ飛んだ友人も、全く同じ感想をもらしていた。

最近はすっかり下火になっちゃったけど、この頃、世間は折りしも相撲ブーム。ワタシを含め、友人も皆、ダイジェストを見ていた程だ。そして、まさにその火付け役が若・貴兄弟だった。
その貴花田と、宮沢りえが結婚...。

「しっかし、とーちゃんの藤島親方も、よく許したね」
「“結婚させなきゃマゲ切るぞ!”って脅したんぢゃないのォ?」

芸能人と力士の結婚は、それまでにも無いワケぢゃなかった。高田みづえだって若嶋津と結婚したし、藤島親方のおかみさんも、元女優だという。
んが、よりによって、アノ!りえチャンとねェ...。

篠山紀信による、宮沢りえの写真集「サンタフェ」が出たのは、婚約から一年前のコトだ。

人気絶頂のアイドルが惜しげもなく脱いだ、それも一流カメラマンによるヘア・ヌードっていうんで、ものすごい話題になった。
ちょっとケを見せたくらいでそんなに騒ぐなッ、って感じだけど、アノ頃はヘア・ヌードという言葉自体、ハシリだったのだ(思いっきりダサい言葉だけどネ)。

その宮沢りえと、相撲界のサラブレッド・貴花田の婚約!!
日本版ディマジオとモンローぢゃないけれど、まさに世紀の大カップル。ちなみに媒酌人は王さん夫妻だという。ヒェー...
当然ながら、このニュースはワタシ達のみならず、ニッポン中にセンセーションを巻き起こすコトになる。 その波紋は、マスコミや芸能界はもちろんのこと、角界にまで広がった。
わずか19才と20才のカップルをめぐる、大人達の騒ぎようたるや、ハンパぢゃなかった。

そしてその中でも特に注目を集めたのは、りえの引退問題だった。

長いので後編につづく...

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