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《コナン・ザ・コナン》ロバート・E・ハワードの世界
ロバート・E・ハワード
英雄列伝


ソロモン・ケイン Solomon Kane

【ジャンル】ヒロイック・ファンタジー

【解説】

THE HILLS OF THE DEAD
(Bantam Books, 1979)
 時は16世紀。イギリス人清教徒ソロモン・ケインは自らも理解しきれぬ衝動に動かされ、放浪を続ける。帽子からマント、ブーツに至るまで黒で統一されたそのいでたちは他を圧倒し、彼の前に立ちはだかる悪に対しては、狂信的とも思えるケインの制裁が降りかかることになるだろう。

 ゾンビうごめく都、ヴァンパイア・クイーンが統治する密林都市、コウモリを思わす羽根を生やした人獣すまう人外魔境……当時まだ暗黒の大陸であったアフリカを中心に、ソロモン・ケインの冒険は続く……

 ソロモン・ケインこそ、ハワードがはじめて世に送り出したヒーロー第一号である。そのシリーズ第一作 "Red Shadows" 「赤き影」(本HPであらすじ紹介)は、ウィアード・テールズ誌1928年8月号に掲載された。コナン、カル、ブラン・マック・モーンと並ぶハワードの代表的シリーズとして、邦訳本の解説などで幾度となく言及されているのみならず、近いところでは『ウィアード2』(青心社)に "Hills of the Dead"「死霊の丘」が収録されていることなどから、日本でも比較的有名なシリーズといえよう。

 このケイン・シリーズをもって「ヒロイック・ファンタジ−」と呼ぶことには抵抗がある向きもあるかもしれない。その第一の理由はなんといっても16世紀という舞台背景であり、この点が幻想テーストが要求されるヒロイック・ファンタジーとは馴染まないとの印象を与えている。ケインが剣と並んで銃を用いるあたりも、「ソード・アンド・ソーサリー」の看板に偽りあり……となろうか。それでもやはり、このシリーズを「ヒロイック・ファンタジー」のカテゴリーに入れることに私は賛成したい。


SOLOMON KANE
(Peter Haddock, 1968)
 銃をも用いるとはいえ、その年代からして銃に大きな重みがおかれることはなく、やはり戦いの中心は剣となるシーンが多く見られるからだ。今となっては、ハワードが描くところの当時のアフリカというのは「異次元」と映るわけで、十分にヒロイック・ファンタジー読者の期待に応えるものになっているのではなかろうか。

 とはいえ、このシリーズが書かれたのはコナンよりも先のことであり、「ヒロイック・ファンタジー」の概念もない時代。のちの作家が「ハワード流」ヒロイック・ファンタジーを意識して書いた作品群とは、当然のことながら趣きを異にしている。なにも「ヒロイック・ファンタジーか否か」を意識しなくとも良いのでは……それももっともな御意見であろう。ある意味で、このシリーズを純粋なホラー小説群と捉えることも可能である。

 「黒ずくめのヒーロー」というケインのイメージは、かなり印象強く、精悍な印象が感じられる。よく言われるように、コナンの場合は事の善悪を考えるより先に、本能のおもむくままに行動するタイプなのだが、このケインは、表面上は清教徒ならではの正義感につき動かされることが多い。だが、狂信的なまでに執拗に悪人を追い詰めるさまからは、決して甘さは漂わない。ケインもまた、相当にタフなヒーローと言える。

【邦訳リスト】

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