うちの子は電車とバスが大好きである。
出かけるときは ”超” 活発な娘のこと、できる限り親の労力を減らすためにシートベルトで体を固定できる車を利用するようにはしている。
電車やらバスやらといった公共の乗り物に乗るとき、どれだけ大変かといったら、「会社の仕事でミスってみんなから白い目で見られて部長からいやみを言われてさらに数時間残業して帰った夜」 くらい身も心もくたくたになる、とたとえてもいいんではないかと思う。卑近な例として。
ほんの一部ではあるけれど、これはある日のお出かけの時のこと。
どうしても出かけなければならない用事があって、1時間強かかる実家に娘を預けることになった。
バスに乗るために約10分かけてバス停までいかなければならないのだが、途中歩道と道路を隔てる縁せきを時間をかけて渡り、落ちている犬のふんに興味を示し、道の隅にあるはっぱを拾いあげ、とろとろ歩いていると遠くからバスの姿が見えた。
バス停で待ちたくないばかりに母の私は娘を横抱きにかかえ、猛ダッシュでバスにすべりこむ。
バスは思いの他満員。 「すわりたいなー。すわりたいなー。」と無邪気な娘。
「1駅だけだからね。がまんして。」と私。 すると「だっこー」と娘。 仕方なしによろよろと抱き上げると見かねて初老のおばさまが席をゆずってくれた。
皆の注目を浴びながらもありがたく娘を座らせる。 でもこういうときに席を替わってくれるのは決まって子育て経験ありそうな女性だけなんだな。
バスを降りると次は電車。 駅の階段はもちろん「だっこ」。 切符売り場では
「自分で」といって切符を買いたがり、自動改札機に切符を入れに母を残して走っていくのも彼女の習慣。
電車の中では席を確保するとさっそく靴を脱ぎ、窓の外をながめる。 それにあきると、椅子に寝そべったり「おかし」をねだったりし始める。
この電車は約30分。 もうちょっとがまんしていてほしい。 やっぱり絵本でも持ってくるんだったと後悔する。
20分経過すると娘の我慢もほぼ限界。 しかたがないので抱っこして立ち上がり、一緒に窓の景色を楽しむことにした。 でもこういうときに限って娘は母の胸をまさぐりだすのだ。 「おっぱいさわっちゃおーっと」といって襟元から手を入れられた時にはさすがにあせった。 母は周りの注目を浴びて赤面するしかなかった。 次もまだ乗り換えが待っている。
運良く次の30分に1本の急行をつかまえると、車内にゆとりがあるせいか娘はとたん元気になり母の手を離れて走り出す。 車内を運動場と勘違いしているかのように何往復も。 「やめなさい! ここは電車の中でしょ。静かにねっ!」
怒れば怒るほど娘は調子づく。 怒られることがわかっていながら、奇声を上げ激しさを増していく。 体を押さえつけてもよろこんでこのゲームを楽しむ娘。
怒り心頭の私はもはやのど元まであのセリフが出てきている...「いいかげんにしないと、あのおじさんにおこられるよっ!!」
...でもやっぱり言うのはやめにしておいた。
理由は意地でもそれだけは言いたくないから! こういうとき、周りの年上の大人達が遠慮しないで 「電車の中でさわいじゃだめだよ」と言ってくれたらすごく救われるのに。 みんな内心イライラしているのに、子どもの親に気を使って言えないのが現代の日本人。
親が言っても効き目がないとき、他人からの叱責は子どもを落ち着かせるのにとても効果があるのだ。 やっぱ子どもは社会で育てなきゃねぇ。
どうにかこうにか目的地までたどりつくと、その足で私は用事を済ませに行った。
夕方娘を受け取り帰りの電車に乗りこむと、お姫様はすやすやと深い眠りの中。 1日の疲れがどっと両腕にのしかかる。
子連れ外出はホント楽じゃない。99.12.20 top▲