2009ウイグル旅行編去りがたき愛しの都 〜 カシュガル 7    ホシタール



楽器屋に入ると、いつものようにクルバンジャン君が作業台に座っていた。
他に客はいなかったので、私達も椅子に座り、今日でカシュガル最後だとか話をした。
Fさんと私がラワープという楽器に興味を示していると、クルバンジャンが手に取って奏で始めた。
そのメロディは、日本の『さくらさくら』。
小さな店内にラワープの音色が響き渡る。
弾き終えて拍手をすると、次は『四季の歌』を弾いてくれた。彼お気に入りの曲のようだ。

次に、バイオリンのような形をしたホシタールという楽器を弾いてみてくれた。
これは形はバイオリンに似ていて、でも端を肩に乗せるのではなく膝に置いて弾くらしい。
てっぺんは鳥の形がデザインされており、すごくカワイイ楽器!
音色はバイオリンそのものといった感じ。
(ここではホシタールと書いたけどフシタル、フシタール、ホシュタル、等々いろんなカタカナ表記がある)

クルバンジャンがホシタールを弾いていると、どやどやと数人の客が入ってきたのでここで終了。
客のおじさんたちは私達の事をチラチラ見つつあれこれ楽器をいじくったりしていた。
私が1人の男性にホシタールを指差して「これ弾ける?」とゼスチャーしてみると、
「え?オレはダメだけどこいつは弾けるぞ」と他の男性を差した。
クルバンジャン曰く、その人もプロ演奏家だそうだ。
その人が椅子に座り、ホシタールを奏でてくれた。ラッキー!
少しチューニングが狂ったままのようだったが、さすがプロ、当然ながらクルバンジャンより上手い。
またまたデジカメで動画を撮らせていただいた。
(同じプロ演奏家なのにアブ氏の時みたいな衝撃を受けなかったのは何故?)

次第に店の中が賑やかになってクルバンジャンも客から質問を受けたりして忙しくなってきた。
そろそろ邪魔にならないようにおいとまするか…。
前回の旅ではカシュガル滞在の最後の最後にここでアブ氏に出会い、最高の思い出となった記念すべき場所。
その時は記念にミニチュアのドタールを買った。
今回もカシュガル再訪記念にまた何かミニチュアを買うのもいいかなと思っていた。
そうだ、今回はホシタールにしよう!見た目もドタールよりずっとカワイイし(笑)

値段を聞いてみると、クルバンジャンはニヤリと笑って「大きめのは50元、小さめのは30元」と答えた。
おお!?大きめので50元か。去年のミニドタールは60元だった。
その時は「もう少し安くなりませんか」と尋ねると「君には初めから安い値段で言ってる」と言われた。
それが今回は50元だ。ニヤリはそのせいか。

小さめの方が持って帰るには楽だけど、せっかくだからここは大きめの方にしよう。
「じゃあ、この大きめのください」と言って50元を出すと、
「いや、それは君へのプレゼントだ」と言った。
ええええっ??
ワケ分からん状態な私にクルバンジャンは、日本のお土産ももらったし
、また来てくれて嬉しかったからだと語った。
まさかそんな…全く思いがけないことで超ビックリ!!
ニヤリはそのせいだったのか…。
ものすごく意外で驚いたし嬉しかったけど、それと同時に私はショックを受けていた。
正直なところ、旅の記念というのは勿論だがアブ氏にコンタクト取ってくれたお礼も兼ねて
『何か買ってあげよう』という気持ちもあったのだ。
そんなある意味エラそうな気持ちもあったのに、逆にプレゼントされてしまった。
まさか彼が私のそんな考えを見透かしていた、というわけではないとは思いたいが…。
普段クールな彼が取った粋な行いに、私は完敗。自分の思い上がりを心の中で恥じた。
そして彼のホスピタリティに心の底から感謝した。

またまたカシュガルの最後に思いがけないサプライズ。
恐るべしカシュガル。やっぱりすごいわこの街…。

お別れの際、「ここで撮った動画をまたYoutubeでアップするよ」と言うと、
「僕達はYoutubeは見られない(当局が遮断している)けど、世界中の人々に見てもらえると嬉しい」と言ってくれた。
色々と不便や理不尽を感じる事も多いであろう現在のウイグルの状況だが、
心の豊かさを失わず逞しく生きる彼らを私はこれからも遠くから応援していきたい。

店を出るともうかなり暗くなってしまっていた。ヤカン買いに行かないと!
急いで昼間に行った金物屋へと向かった。


2009年7月のウルムチの事件以降、ウイグルでは11月現在もYoutubeどころかネットそのものが遮断されたままだ。
当然メールもだめ。メール必須な企業は隣の省に事務所移転している会社もあるとの事。国際電話も不通。
ウイグル系のサイトも、Not Foundになってたり繋がらなかったり7月以降更新なしだったりしている模様。