2002/9/1 6月11日 | |||
え、前後してしまいましたが、いろんな細かいことを忘れてしまいそうなので、どこかに文章を残しておこうと思い立ちました。
2002年6月11日。知っている人は、なかなかここのマニアですが、幹ちゃんの誕生日です。(^-^)
6月11日、朝 今日は検診の予約が入ってたよね。初産は早産が多いって聞くけど、とうとう予定日来ちゃう(6月12日)ね。 なんて軽口叩きながら、朝ご飯を食べる。 なんか、これだけ長い間大きなお腹を見てきて、それが普通になっちゃって、このまま赤ちゃんなんか産まれないような気がしてた。(^m^;
とにかく、つわりとかと全く縁が無かった。そのせいか、緊迫感も無い。
「なんか、お腹が痛いような気がするのよねぇ」「気のせい気のせい、陣痛なんてそんなもんじゃないんでしょー」
予定日のちょっと前、「もう生まれても早産と言わないんだってよ」って時から今か今かとびくびくしていたのだが、予定日が近づいたら気分もひと山越えてしまってすっかり落ち着いてしまった。
午後 携帯が鳴る。嫁だ。ちょっとドキ。出るとちょっとトーンが低いが普通の声。 「あのね、もう子宮口が開いてるんだって。陣痛が始まったらとにかく早く来なさいって。悪いんだけど自宅待機してくれる?」 とっさに浮かんだのが、「え?え?待機するの?それって何時間、何日待てばいいの?」うーん、会社休むいい口実だと、うれしいような困ったような複雑な気分。「分かった。とにかく帰るよ」と、周りに事情を説明して、帰らせてもらう。
昼寝 自分の周りの人って、2時間で産まれたとか、4時間で産まれたとか、安産な話が非常に多い。 しかし、直前になって聞かされたのが、うちの妹は、3日間陣痛で苦しんだ挙句、帝王切開だったという話。もーびっくり。(@_@) うーん、これからどれくらいの戦いになるのかなぁと思いつつ、帰宅すると「産まれるって言われても〜」的にきょとんとした嫁のお出迎え。 「なんか、痛いような気はするんだけど」確かに、どれくらい痛かったら病院に行くのか分からない。 だんなとしては、いきなり破水とかされると、動揺して大変なことになりそうで怖い。大体、破水ってどうなるの?ばしゃー??(ToT) 病院で待機させてもらう?でも、明日かもしれないよね。大したこと無いと帰されちゃうらしいよ。 誰か、陣痛を数字で表してくれ。どれくらいだったら、そうすればいいの?よく分からない。 聞いた話によると、「花瓶を鼻の穴から出すような痛み」だとか。うーん、そいつは痛そうだ。(>.<) うーーーーん、とりあえず寝るか?と二人して何故かお昼寝。(=o=)zzz
4時半 よしだんな、お昼寝ってあまり得意じゃない。すぐ目覚めてしまい、パソコンに向かってた。 すると、4時半頃、寝ぼけたようなしかめっ面で起きてきて「ひょっとしたら来たかもしれない。今までと違う」 そこから、病院に電話。「じゃぁ、30分くらい様子見て、痛みの間隔が短くなったら来てくださーい」割と冷静。 いや、先生にすぐ来るように言われてるんですと説明しながら、頭の中では「破水、破水・・」とかってコトバがぐるぐる回る。あせる。 とりあえず用意してあった入院セットを抱え、病院へ。嫁の歩みは、既に遅い。ドキドキする。 でも、実はまだまだこんなものじゃ無かった・・・
病院へ 病院に到着。ものすごい歩くのが遅い。外来は終わっているので、緊急の窓口に行く。 車椅子にします?と警備員さんに聞かれ、「いや、えっと、えー」まだ、テレながら愛想を振りまく余裕あり。 しかし、だんなも程度が分からない。もー、歩くのもやっとに見える。「おねがいします!b(-o-;」 嫁は、車椅子に乗ったことが無いらしい。なんか、気恥ずかしそうに笑っている。(まだまだ余裕) 産婦人科に着くと、看護婦さんに「あらー、歩いてきてもらった方が良かったのにー」と言われた。 「その辺で破水したらどうすんじゃー!」と思いつつ、今思えば、まだまだだったな・・・
陣痛室へ ちょっと診察。先生に、「今のうちに食事を買いに行った方がいいですよ。まだまだだから。おいしいものがいいよぉ。 後々まで、あの時あんなもの買ってきてって責められるからねぇ」と、割と軽い。 よしだんな、制限速度を何km超えたか分からない勢いで丘を下り、最寄のコンビニで、おにぎり、サンドイッチ、ブリトー(嫁の好物)をしこたま買い込み戻る。 戻ると、嫁には、陣痛測定マシンが付いていた。地震計のような、嘘発見器のような、ロール紙にグラフを書くやつだ。 仕組みは良く分からない。陣痛の合間に、両家の両親に電話をいれ、食事を食べさせる。陣痛の時は、会話が止まるが、合間はまだ普通。 髪を三つ編みにするように言われて、はしゃぎながら写真を撮ったり、ちょっと罪の意識を感じながら、陣痛の様子を動画で撮ったり。 助産婦さんに「じゃ、もうちょっとこのままね、寝ちゃ駄目よ」(楽な姿勢は駄目らしい)と言われ「あのー、結構痛いんですけどー」 「うーん、まだまだ。そんな笑顔で分娩室に入った人は、私のこの30年の経験の中で、一人しかいらっしゃらないわー」 確かに、この後、恐怖が待っていた。そんな、動画だの写真だの、カメラを向ける気にならない世界が・・・
そして痛みがピークへ 陣痛測定マシンが外された。腰のマッサージのやり方を教わる。陣痛が来ると、腰をさする。かなり強くさする。 徐々に呼吸があらくなり、陣痛の合間も会話が無くなる。とにかく痛みに耐えてぐったりとしてくる。見ていても痛々しい。 1時間おきに助産婦さんが見に来るが、「はい、もうちょっとねぇー」と帰ってしまう。 嫁も「ふぇ〜〜〜・・(えー?)(ToT;」という感じ。嫁の後日談に寄れば、そこまで痛いとは聞いてない。 あの痛みは痛くなかったら、屋上にダッシュして飛び降りたいくらいの痛みだそうだ。(痛くなかったら?) 9時ごろ、突然「歩く」と言い出す。とにかく、早く痛みから逃れたいらしい。 あらい呼吸をしながら、陣痛室をぐるぐるまわり、痛みが来ると壁に寄りかかる。崩れ落ちないように支えながら、腰をさする。 呼吸が戻ってくると、何も言わず、壁から離れまた歩き出す。転ばないように肩を貸す。 とにかく、痛みがある間、力みたいんだけど、力を抜いて耐えないといけない。それがつらいらしい。 何故か、そこから1時間以上助産婦さんは来ない。しばらく会話は無い。うなり声と吐息と呼吸と・・。 歩く、壁に寄りかかって耐える、歩く、・・、早く出てきてくれ。
ナースコール 何百回かの陣痛の後、久しぶりに嫁が口を開く。「もういいよね・・頑張ったよね・・」 わかった、ナースコールをしようというと、首をゆっくり縦に振る。 ずっと、「まだまだ」と言われ続けたので、どうなれば良いのか見当が付かない。 「こんなもので呼ばないで」と言われるかと気になったが、もう2時間近く見てもらっていない。 とにかく、一度見てもらおう。助産婦さんが、来て確認。「はい、じゃぁ産みましょうか」 おいおい、こちとら分からないんだから、ちゃんと見に来てくれよぉ!とカチンと来つつ、とりあえずほっとする。 周りがあわただしくなり、会話も、視線を交わす余裕も無く、ぼろぼろになって嫁が分娩室に入っていく。
待つ・・ 病室へ通される。えっと、これでテレビが見られるから。で、電気はこれねとか、助産婦さんの説明。 あれ、これどうするんだっけ、分からないなぁー。荷物はどうしようか。分娩室から動かしてくれる? もー、いいから早く嫁の元に行ってくれ!!って感じで、「大丈夫、勝手にやってますから」と助産婦さんを追い出す。 ニュースをつける。いつも見ているニュースステーションだ。スポーツがやっていたように思う。あまり覚えていない。 世間はワールドカップだ。つい先週末には、嫁と一緒にテレビで日本を応援していた。 だが今日は、見知らぬ病室で、一人、いつものニュースを見ている。嫁は、痛みと戦っている。別世界だ。 あえて、何も口にしなかったが、母体が危険にさらされることもある。選択するとすれば、彼女の命を取る。 自分のわがままかもしれないが、彼女無しではこの後、どうやって過ごしていけばいいか想像もつかない。 そうやって考えていたことが、頭の中でぐるぐる回る・・・・ ガラガラガラ!病室の扉が開く。振り返る。 緑色の汚れた白衣(緑衣?)を来た助産婦が、何か(覚えていない)を両の手にいろいろぶら下げながら、無表情に立っている。 かなりの沈黙が続く。2秒だったか、10秒だったか、とてつも無く長く感じた。息を呑む。心拍数は一気に20も30も駆け上がる。 無表情の口から、息と同時に言葉が漏れる。「うまれやしたでー」(-o-)d
そして・・ もー、なんだか、情けないような腹立たしいような、もーどーしていいか分からない気持ちがぐるぐる回る。 「やしたでー」は無いやろ「やしたでー」は!!「ありがとうございました」という声が、不本意ながら震える。 感動からか、怒りからか、ほっとしたからか。自分でも分からない。じゃ、抱きますよね?じゃ、さっきの陣痛室で待っててください。 と、事務的なお言葉。陣痛室で待つ。分娩室の扉が開き、「じゃぁこれを着て待っていてください」と白衣が渡される。 すると、開いた扉の奥の方で、ベットから顔を見上げて元気一杯に手を振る嫁の顔が見えた。 その瞬間、一気に涙で目がかすみ、力が抜けた。 どれだけ、疲れ切った顔を見せるかと思ったが、いつもと同じ笑顔だった。何かが一気に体から抜け出ていった。
後は、お決まり通り赤ちゃんを抱く。おくるみごとなので、くにゃくにゃ感とかさっぱり分からない。
割と楽勝。別の助産婦さんに頼んで抱いてもらい、写真に収める。嫁も病室に移る。
嫁にしては珍しいVサインを写真に収め、1時間ほど話をし(大目に見てもらってたんだろうな)、家路に着く。
後日談 その1。両親に電話を入れる。「生まれるのは、日付が変わるあたりらしい。明日連絡を入れる」 嫁方は「何時になってもいいから電話頂戴」期待通りの返事。うちは「そうかい。分かった」分かったのかよ!へ(-o-; てな感じ。その代わり、翌日5時に電話が入る。「どうだったの!」3時間も寝てないよぉ〜。(ToT) その2。陣痛室には、もう一人人がいた。二人目の出産で、破水したけど陣痛が始まらなかったという話。 横でずっと様子を聞いていたんだよーって、入院中に後で会話する機会があったそうです。 自分の一人目にそっくりで、もう充分、私がナースコールを押してあげよう!とベットから起きだしたら、だんなさんが押しちゃった。 しょうがないので、おトイレに行ったんだってさ。
その3。病院は、実は新しい建物に引越ししたのが6月1日。古い方で産みたくないと我慢した(?)おかげで、病室は初めて使う初めての患者さん。
だから、助産婦さんの説明も嘘八百だったってわけ。(^m^;
それはいいんだが、分娩室でも痛みをこらえる嫁の周囲を、「あれは、どこしまったっけ?」「あれってどこにあるの?」と歩き回り、相当不安だったんだと。
新しいってのは、いいことばかりじゃ無いね。(^m^) |