平成十六年十月十六日 せんべろ紀行 その二

 ホルモンうどんで朝食を

 朝十一時、宿を退出。本日の予定はホルモンうどんの「丸徳」、二合で三合の「やまと屋一号店」、昨日入れなかった「明治屋」。
 まずは丸徳で朝食を。日本酒二級二百五十円、一級三百十円、特級四百十円、冷酒六百円。「せんべろ探偵が行く」には二級酒二百三十円と書いてあるが、値上りしたようだ。
 ホルモンうどんに一級酒と行きたかったのだが、昨日の酒がまだ残っている感じ。この後やまと屋で「二合で三合」飲む事を考え、日和って生ビールにする。
 右隣に座ったおっちゃんは「泡盛とホルモンうどん」、反対側のあんちゃんは「瓶ビールにお造り、締めにホルモンうどん」。つまり、そういう店なんである。

丸徳


 公楽劇場に惹かれつつもやまと屋へ

 丸徳からやまと屋一号店へと向かう途上に公楽劇場はある。座頭市、若山富三郎、クレージーキャッツの三本立て。これには本気で悩んでしまった。
 十分ほど悩んだ挙げ句、初志貫徹でやまと屋へ。新世界にはやまと屋が本店から五号店まで六軒あるが、腰を落ち着けて呑むのなら比較的すいている通天閣前の一号店がお勧め。

やまと屋一号店


 二合で三合は本当にお得

 やまと屋は「二合で三合」「大阪で一番安い店」「酒タダ」と云った過激な宣伝文句を別にすれば、普通に小綺麗な居酒屋である。

らもさん「これ、どっちから呑めばええんやろ」、、、

 小さい方から呑んでください。

二合で三合


 明治屋目指し阿倍野へ

 帰りの新幹線はひかり二百八十二号、新大阪の発車時間は午後五時二十分。国鉄東海ツアーズの「ゆったりお値打ちプラン大阪」を利用しており、乗り遅れると乗車券・特急券共に無効になると書いてある。
 阿倍野に着いたのは午後三時二十分。目標は明治屋だけなので楽勝のはず。しかし駅を降りると昨日と景観が全く違う。
 大通りを彷徨すること十分、阿倍野筋に行き当たる。今や全国的に絶滅寸前の路面電車が走る阿倍野筋だが、派手な広告のため、わびしさは感じられない。

阿倍野の路面電車


 どん海の写真を撮り直す

 昨日の写真は夜間の撮影で、しかも蛍光灯が邪魔をしていて見づらい。「逆光」に設定すれば良かったのかもしれないが、携帯付属のカメラなので高望せず撮り直すことにした。おかげで昨日は気付かなかった、実にわびしい赤提灯を収める事が出来た。

どん海

わびしさ漂う どん海の赤提灯


 阿倍野の名店 明治屋へ

 午後三時四十分、いよいよ今回のせんべろ紀行最後の店明治屋に到着。アトムさんは立ち退きを心配していたが、「あと二、三年は大丈夫だと思います」と店主。
 まづは土佐鶴と湯豆腐を頼む。土佐鶴純米が四百五十円、安い。名物の湯豆腐は、トロロ昆布を乗せ、出し汁を掛けて供される。注文する客も多いが、食べてみて納得。
 岡安でも豆腐を頼んだら同じようにトロロ昆布を乗せていた。大阪では昆布の方が普通なのだろう。東京は豆腐と云ったら鰹節。そういえば、蕎麦・うどんのダシも東京は鰹節、大阪は昆布が基本だ。
 

明治屋


 名物のシュウマイを

 四時を回ったので、最後の一品を注文、やはり名物のシュウマイにする。酒は菊姫純米。樽酒も飲みたかったが、シュウマイに合うのかどうか判らない。またいずれかの機会に。
 時計は四時半を回った、これ以上長居をしていては新幹線に乗り遅れる。勘定をお願いする。

後ろ髪を引かれる思いで明治屋を後にする


 のぞみ百四十四号で帰路につく

 勘定を払い店を出ると四時四十分。ひかり二百八十二号の発車時刻は五時二十分だ。急がなければ。早足で阿倍野筋を北へ向かい陸橋を渡る。おかしい。いくら歩いても駅がない。と、道の反対側にまた明治屋が見えてきた・・・ ???
 どうやら陸橋を渡るときに降りる階段を間違えたらしい。慌てて引き返す。
 国鉄天王寺駅の電光掲示板を見ると、各駅停車の発車時刻が五時ちょうど、特急が五時三分。三分差なら特急の方が早いだろうと、各停をやり過し、特急くろしお二十四号に乗り込む。と、車内に車掌の声が流れる。

「本日は特急くろしお二十四号をご利用頂き有難う御座います。この列車は五時三分発、終点の新大阪には五時二十一分の到着でございます」

 と云うわけでひかり二百八十二号には間に合わなかったが、こうなったら心配しても仕方が無い。「ゆったりお値打ちプラン大阪」の乗車券・特急券で五時三十分発のぞみ百四十四号に乗り込む。
 車掌が「乗車券を拝見」に来たが、何事もなかった。新横浜には七時四十六分に到着。自動改札も無事通過。ひかり二百八十二号は新横浜には停車しないが、通過時刻はおよそ七時五十三分なので、結局ひかり二百八十二号を追い越してしまったことになる。

永遠も半ばを過ぎて 〜 あるいは中島らもについて