西岡昌紀

にしおかまさのり

アウシュウィッツ「ガス室」の真実

平成九年六月十日 日新報道
ISBN4-8174-0393-4 税別二千円

 ナチスドイツは本当にユダヤ人の「絶滅」を目的として「ガス室大量殺人」を行なったのか。ホロコーストの定説に疑問を投げかけ、雑誌「マルコポーロ」廃刊の原因となった、「歴史の操作」を考察した問題作。


  目 次

 はじめに

第一章「マルコポーロ」廃刊事件
封じられた記事
疑いを投じた最初の歴史家は反ナチ・レジスタンスの英雄
フランス共産党の元幹部も「ガス室民族絶滅」に異論
マスコミは事実を伝えていない
彼らは何故、反論しなかったのか?
文藝春秋首脳部の《広告史観》
「マルコポーロ」廃刊事件には中央官庁が関与していた

第二章「ユダヤ人絶滅計画」は実在したか?
ドイツは何をしようとしたのか?
「ガス室大量殺人」に物的証拠はあるか?
「ガス室」殺された死体は一体も発見されていない
死体の死因は解剖なしには分からない
病死者の死体は「ガス室大量殺人」の証拠か?
湾岸戦争の「油まみれの水鳥」
眼鏡も靴も髪も物証ではない
「ユダヤ人絶滅計画」が命じられた証拠文書は発見されていない
「極秘の絶滅計画」を演説で語ったというのは不合理
押収されたドイツ公文書は何を物語るか
ユダヤ人虐待を理由に処刑されたドイツ人がいた
「ユダヤ人絶滅」のための予算は計上されていない
ドイツのユダヤ人政策は不当だった、しかし・・・

第三章「ガス室」は実在したか?
「定説」側は何故、「ユダヤ人絶滅計画」に固執するのか
現存する「ガス室」は本当にガス室か?
連合国はアウシュウィッツを検証していない
「ガス室」と「絶滅収容所」
「絶滅収容所」とは何か
「絶滅収容所」に「ガス室」はあったか?
どんな「毒ガス」が使われたというのか
第一アウシュウィッツに展示される「ガス室」
「ガス室」の目の前にドイツ人の病院がある
これが「ガス室」か?
この「ガス室」をどう換気するか
「レクスプレス」に載った驚くべき記事
なぜ説明が二転、三転するのか
第二アウシュウィッツ(ビルケナウ)の問題
第二アウシュウィッツの第二死体焼却棟
地下のガス室をどうやって換気するか
どのようにして多数の死体を搬出するか
第三死体焼却棟も同じ構造
「ガス室」と「死体安置室」
フォーリソン教授が指摘すること
第四、第五死体焼却棟について
「ガス」の付く単語が「ガス室」に関係あるとは限らない
ブンカーと呼ばれる建物
何故、「ガス室」跡からシアン化合物が検出されないのか
リューシュター報告の分析値の正しさはポーランド当局も認めている

マイダネックの「ガス室」は何故「シャワー室」に変わったのか?
何故、火葬場から一番遠い場所に「ガス室」を作ったのか?
何故、「ガス室」にガラス窓があるのか?
その他の「ガス室」の問題
ガス室は極めて高価な処刑法である
「絶滅収容所」がソ連支配下のポーランドにあったことの意味
「カチンの森」とアウシュウィッツの第一発見者は共にソ連
「証言」だけで「ガス室」は証明されるか?

第四章「証言」の問題
物証はなくても「証言」があれば・・・という考え方
アブラハム・ボンバの「ガス室目撃証言」
ウソの証言は一つもないか?
「ホロコースト」の内容は二転、三転している
かつてはベルゲン・ベルゼンにも「ガス室」があったとされていた
「ダッハウのガス室」の目撃証言
消えた「ガス室」
何故、「絶滅収容所」はソ連支配下のポーランドにしかないのか?
「アウシュウィッツの証言」は全て真実か?
「ガス室目撃証言」がお互いに矛盾している例
自分の「証言」を撤回した「目撃証人」たち
「証言」を選ぶのは誰か?

何故、「証言」を検証しないのか?
「ガス室目撃証人」たちは法廷で訊問されているか?
連合国は拷問によってドイツ人被疑者の「自白」を得ていた
「ガス室」の存在に否定的な証言が存在する
トレブリンカ裁判とは何だったのか?
あるユダヤ人女性の証言
「ガス室」に否定的な証言は黙殺されてきた
火葬場の建物が「ガス室」と混同されていることの意味
七三一部隊の研究者が語った「証言」の問題

第五章 真の悲劇は何だったのか?
「ガス室大量殺人」の科学的不合理
「ディーゼル・ガス室」の科学的不合理
チクロンBの問題
チクロンBは何時間、青酸ガスを遊離し続けるか?
チクロンBの青酸ガス遊離は最短でも六時間
「ガス室」の換気に何時間かかるか?
「ガス室」から死体をどう搬出するか?
「ヘス告白遺録」の描写
プレサックの著作の「処刑」スケッチ
二百十平方メートルの「ガス室」に三千人が入るか?
他にも不合理な説明がたくさんある
「ガス自動車」と「安楽死」について
真の悲劇は何だったのか?
発疹チフスとは何か?
チフスの悲劇
「ホロコースト」とは何だったのか?

死者を冒涜しているのは誰か?

第六章「ホロコースト」の政治学
何故、民主主義国家で言論が規制されるのか?
シオニスト過激派によるテロ活動
シオニスト過激派は何をしてきたか?
「ホロコースト」とパレスチナ問題
「ホロコースト」はパレスチナ問題を覆い隠してきた
シオニスト・ロビーの影響力
シオニスト・ロビーのメディアへの影響力
パレスチナ人にとって「ホロコースト」とは何だったのか?
ソ連の東欧支配における「ガス室」の役割
中東和平の世界史的衝撃
中東和平が「マルコポーロ」廃刊事件に落とした影
真の和平と平和を得るために

終章 戦時報道は終わらない
「ナチ水蒸気室」はなかった
戦時報道としての「ホロコースト」
連合国側の戦時宣伝は検証されたか?
民主主義国家にとって戦時報道とは何か?
 あとがきにかえて

  はじめに

 始めに、この本は、皆さんに大変なショックを与える本であることを申し上げておきます。それは、この本が、皆さんの多くが信じて疑ったことのなかった或「歴史」について、正面から疑問を投げかける本だからです。私は、この本において、その「歴史」を結論として「否定」はしません。ただ、疑問を投げかけるに過ぎません。しかし、その疑問の数々に納得できる答えが得られない現状では、私個人がそれを信じることもできないことは、はっきり言っておかねばなりません。そして、何よりも、その「歴史」についての自由な議論が封じられていることについて強く異議を唱えたいというのが、この本を著す私の意図に他なりません。
 では、その自由に議論が行われていない「歴史」とは何かと言うと、「ホロコースト」なのです(ただし、ここで言う「ホロコースト」とは、第二次世界大戦中、ドイツがヨーロッパの全ユダヤ人絶滅を企て、主に「ガス室」という手段で、実際に何百万人ものユダヤ人を殺害したとする「歴史」を指し、ナチスドイツのユダヤ人迫害全般とは区別します)。ナチスドイツが、ユダヤ人を差別迫害したこと自体は明白です。しかし、日本や欧米の「権威」ある歴史家やマスメディアは、それに留まらず、以下の二点を主張、強調しています(本書では、これを「定説」と呼ぶことにしますが、これは便宜的な呼び方です)。

  1. 第二次世界大戦前または大戦中、ドイツは、ユダヤ人を「絶滅」しようと計画した。──「絶滅」である。

  1. その目的で、ドイツは、アウシュウィッツ他の収容所に処刑用のガス室を作り、その「ガス室」で現実に大量殺人を行った。
 即ち、「定説」は、先ず、ドイツは、ユダヤ人をただ殺したのではなく、「絶滅」しようとしたというのです。ここは非常に重要な点なので、よく、ご記憶下さい。皆さんの多くは、「アウシュウィッツ」についてしばしば読んだり聞いたりする機会はありながら、今までこの点にはあまり注意してこられなかったことと思います。しかし、後で論じるように、これは非常に重要な点なのです。ドイツは、あの大戦中、ポーランド人も殺したし、ロシア人も殺した。しかし、「絶滅」の対象とされたのはユダヤ人だけだった、というのが、この主張の意味なのです。この違いは非常に重要です。「定説」側歴史家たちはこの点に固執し、一歩も譲ろうとしませんが、その理由は何なのか? それは本文でゆっくり考えたいと思います。
 そして、そのような「ユダヤ人絶滅」の手段として、色々なものが採られたが、特に、「ガス室」が使われたという主張を「定説」側は非常に強調してきました。しかし、本当にそんなもの(処刑用ガス室)が存在したのでしょうか?
 こんなことを言うと、皆さんの多くは、「えっ?」と言って驚かれるに違いありません。こうした「歴史」は一点の疑いもない「事実」だと思っている方が、大部分だからです。しかし、これからお話しするように、この「歴史」には重大な疑惑が多々存在するのです。「信じられない」とおっしゃる方が大部分と思いますが、とにかくこの本を手にしたら、どうか最後までお読みになって下さい。私は、歴史の専門家などではなく、一介の内科医に過ぎません。

しかし、この本を読む皆さんは、これから、人生に何度も経験することのない大変な驚きを経験するはずです。「ホロコースト」という言葉とともに語られてきた右の二つの主張──ドイツがユダヤ人を「絶滅」しようとしたという主張、および、その手段としてドイツが「ガス室」で大量殺人を行ったという二つの主張──は、実は、信じがたいまでに多くの不合理と矛盾に満ち満ちているのです。ですから、私は、それらをお話しし、疑問を提出し、「定説」を擁護する人々の回答を待ちたいと思います。そして、それに対する答えが得られない限り、私個人は、先の二つの主張を到底信じることができないことを、ここではっきり言っておきたいと思います。その二点をもう一度くり返しましょう。
  1. 第二次世界大戦前または大戦中、ドイツは、ユダヤ人を「絶滅」しようと計画した。
  2. その目的で、ドイツは、アウシュウィッツ他の収容所に処刑用のガス室を作り、その「ガス室」で現実に大量殺人を行った。
 誤解のないように言っておきますが、ナチスドイツが、ユダヤ人を差別、迫害したこと自体には、一点の疑いの余地もありません。そして、そうした差別政策の一環として、ドイツが大戦中、ユダヤ人を収容所に入れたことも事実です。また、ポーランドやソ連の戦場で、当時多くのユダヤ系非戦闘員がドイツによって殺害されたことなど、「虐殺」と呼ぶべき事件が多々あったことも、細部の検証は必要だと思いますが、私は全く否定などしません。ですから、アウシュウィッツをはじめとする強制収容所の存在や当時のユダヤ人たちの苦難がなかったなどと言っているのではないのです。

当然、私は、当時のドイツのそうした行為を支持するつもりも全くありません。こういう点は決して誤解なさらないで頂きたいと思いますが、こうした誤解をする方が非常に多く、かつ、そうした方がしばしば感情的に反応されるため、真意が伝わらないことが、まま、あります。しかし、どうか冷静に、この後の本文を読んでいただきたいと思います。
 もう一度言いますが、ナチスドイツがユダヤ人を差別迫害したことには、一点の疑いの余地もありません。そして、その「迫害」の中には、「虐殺」と呼ぶべき例も、多々含まれています。しかし、今日、多くの「歴史学者」やマスメディアは、それに留まらず、ドイツは「ユダヤ人絶滅」を計画したと主張します。ただ、「虐殺」したというのではないのです。「絶滅」しようとしたと、断言しているのです。そして、皆さんもよくご存じの通り、彼らは、ドイツが、その目的で、「ガス室大量殺人」を行ったと言います。皆さんの多くは、そんな「歴史学者」やマスメディアの主張を全面的に信じておられることと思います。ところが、驚くべきことに、これから述べるように、「ユダヤ人絶滅計画」も「ガス室」も、実は、それらが実在したことを示す客観的証拠は何もないのです。それらは、驚くべきことに、ただ、戦後の「証言」で語られているだけなのです。そのうえ、その「証言」は、不合理に満ち、或いは、相互に食い違っていたりもします。ですから、そんな「ユダヤ人絶滅計画」と「ガス室」の実在には疑問が上がって当然なのです。ところが、本文で述べますが、そうした疑問を語ることが、今日、欧米の多くの国でタブーとされ、法律で禁じられるという状況すら生まれています。これは、ファシズムと呼ぶべきものです。

 それなのに、このような言論規制が世界的規模で広がりつつあることを日本のマスコミはきちんと報道しません。また、それを批判もしません。何が真実であれ、歴史に関する自由な討論を国家が規制するというのは、民主主義に対する挑戦であるにも拘わらず、です。そして、本文を読めばご理解頂けると思いますが、現代史に関してこれだけ大きな問題が存在するにも拘わらず、「専門家」を自称する日本の「歴史学者」たちは、それをろくに調べようともしないのです。即ち、この問題は、基本的には歴史の問題ですが、日本では、外国の一部から流される情報が、何ら検証されぬまま、無責任なジャーナリズムや学者によって流布され続けていることの一例ということもできます。
 この本は、こうした状況に異議を提出し、歴史の真実が何であったかの議論に迫ろうとする本に他なりません。そして、こうした状況の背後に何があるのかを探ろうとするものに他なりません。
 ただし、私は、何が歴史の真実であるかについての最終的な結論は、読者の皆さんの一人一人に委ねることと致します。即ち、はじめに申し上げた通り、私は、この本において、「ガス室」にしろ「ユダヤ人絶滅計画」にしろ、最終的に何も「否定」はしないということです。ですから、私は、ただ不合理を指摘し、疑問を投げかけるだけですが、それは、私が、皆さん一人一人に、この問題を自分の頭で考えて頂きたいからに他なりません。皆さんに自分の頭で考えて頂くという部分が残らなければ、この本を書くことには意味がないとすら思うからです。

 一体、「ホロコースト」とは、何だったのか。そして、私たちにとって歴史とは何なのか。この本を読み終わった時、皆さんがこの問いに直面していることを私は確信しています。
  一九九七年五月一日
西 岡 昌 紀

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