まもなく国家殱滅型の最終戦争が起こり、その後に絶対平和が到来する。太平洋戦争前夜、戦史研究と日蓮信仰から生まれたこの特異な予見は、満州事変を主導し日本の運命を変えた。陸軍の異端児は何を語ろうとしたのか。
日本国体の至高を謳うだけではなく、戦争術発達の極点に世界統一・絶対平和を視た石原莞爾。使命感過多なナショナリストであると同時に、クールな現実認識をあわせもつ彼の軍事学論・戦争史観・思索史的自叙伝を収録。
昨年の末感ずるところあり、京都でお世話になった方々及び部下の希望者に「戦争史大観」を説明したい気持ちになり、年末年始の休みに要旨を書くつもりであったが果たさなかった。正月に入って主として出張先の宿屋で書きつづけ二月十二日かろうじて脱稿した。
二月末高木清寿氏来訪、原稿をお貸ししたところ、執拗に出版を強要せられ遂に屈服してしまった。そこで、読み直して見ると前後重複するところもあり、補修すべき点も少なくないが、現役最後の思い出として取り敢えずこのまま世に出すことにした。
昭和十六年四月八日