江戸川乱歩

えどがわらんぽ 明治二十七年十月二十一日生 昭和四十年七月二十八日没

陰獣昭和六十二年六月五日春陽文庫
パノラマ島奇談昭和六十二年六月五日春陽文庫
三角館の恐怖昭和六十三年四月十日春陽文庫
D坂の殺人事件昭和六十二年六月五日春陽文庫
人間椅子昭和六十二年六月五日春陽文庫
月と手袋昭和六十二年七月五日春陽文庫
心理試験昭和六十二年六月五日春陽文庫
黄金仮面昭和六十二年九月十日春陽文庫
緑衣の鬼昭和六十二年十一月十日春陽文庫
大暗室昭和六十二年十二月十日春陽文庫
ペテン師と空気男昭和六十二年七月五日春陽文庫
孤島の鬼昭和六十二年六月二十六日創元推理文庫

陰獣

昭和六十二年六月五日 春陽文庫 ISBN4-394-30101-5 C0193 税込四百円

江戸川乱歩(1895〜1965)は戦前から戦後にかけて、文字どおり推理小説界の巨匠として、その名は燦然と輝いている。乱歩作品の持つ卓抜なトリックの妙、妖美な感触、天下一品のおもしろさ等々、乱歩作品の楽しさは、読者に十分なる満足をあたえることだろう。実業家小山田六郎氏の夫人静子を脅迫する陰獣・大江春泥のナゾを追求するわたしのまえに展開していった驚嘆すべき真相は何であったか? 昭和三年発表の傑作中編「陰獣」! また、しゃれた味わいを持つ好短篇「盗難」(大正十四年)、不気味なミステリの典型として乱歩作品の特徴をうかがわしめる秀作短篇「踊る一寸法師」(大正十五年)、「覆面の舞踏者」(大正十五年)と、初期の名作四編を収めた乱歩傑作集!


パノラマ島奇談

昭和六十二年六月五日 春陽文庫 ISBN4-394-30102-5 C0193 税込四百六十円

M県のI湾に浮かぶ沖の島に突如として出現したものはなんであったか? 富豪菰田源三郎と瓜二つの小説家人見広介は、源三郎が死んだのを幸いに源三郎になりすまし、菰田家の莫大な財産をもって、おのが空想した夢のパノラマ島をつくりあげた! パノラマ島で展開される妖美な幻覚ともいえるあやしの怪奇譚は、読者を夢幻の世界へとさそいこんでゆく──。広介の正体をみやぶったものはだれ! 江戸川乱歩(1895〜1965)初期の傑作「パノラマ島奇談」(昭和二年)をはじめ、「白昼夢」(大正十四年)、「鬼」(昭和六年)、「火縄銃」(昭和七年)、「接吻」(大正十四年)の五編を収め、乱歩の鬼才ぶりを十分にうかがわせる、興味万点、江戸川乱歩の傑作集!


三角館の恐怖

昭和六十三年四月十日 春陽文庫 ISBN4-394-30103-3 C0193 税込四百六十円

隅田川近辺の川岸に建つ石とレンガの古色蒼然たる三階建ての洋館──元は正方形の屋敷だったものを対角線で真二つにしたため、付近の人々から三角屋敷とも三角館とも呼ばれる蛭峰一族の洋館で、一月下旬の雪の日の深夜、突如として一発の銃声が鳴り響いた! 二つの蛭峰家には、双子の当主が生き残り競争を賭けた巨万の遺産相続権をめぐる執念の敵意が、異様な情況をここに寄る一族すべての者たちに及ぼし、ついには第二の殺人が!? 犯人は内部の者に限られていた! 七人の容疑者のうち、はたして真犯人はだれか……!? ──篠警部と森川弁護士をホームズとワトソン役にして怪事件のナゾを解く、アメリカの作家ロジャー・スカーレットの本格編「エンジェル家の殺人」を原作にする傑作翻案小説!


D坂の殺人事件

昭和六十二年六月五日 春陽文庫 ISBN4-394-30106-8 C0193 税込四百六十円

D坂の古本屋の細君が殺された! その死体には生傷がたくさんあった! D坂のカフェー白梅軒で知り合いになったわたしと明智小五郎は、犯人さがしに懸命になった。わたしの推理では明智が犯人かと思われた! だが…… 危うく犯人にされそうになった名探偵明智がとき明かしたおどろくべき真相とは? 乱歩初期の名作として評判高い「D坂の殺人事件」(大正十四年発表)をはじめ、現場に残された足跡のナゾを追って真犯人探求の興味をもりあげる秀作「何者」(昭和四年発表)、その他五編を収録した江戸川乱歩(1895〜1965)の傑作中・短編集! 騒然たる話題をよんで、乱歩独自の妖美の世界はくりひろげられてゆく!


人間椅子

昭和六十二年六月五日 春陽文庫 ISBN4-394-30107-6 C0193 税込四百六十円

外務省書記官夫人である佳子は、美しい閨秀作家としても知られていた。そんな佳子のもとへ、突然ある男から原稿が送られてきた。その原稿には何が書かれていたろうか?…… 彼女がいま腰をおろしている書斎のイスのなかに、彼女をひそかに恋する男がひそみかくれている! 肝を冷やす"人間椅子"の秘密はここに明かされた! 巧緻な構成とスリリングな物語で、読者を満足させる傑作短篇「人間椅子」(大正十四年)、悪女登場でゾッとさせるすぐれた短篇「お勢登場」(大正十五年)等々……いずれをみても江戸川乱歩(1895〜1965)の卓越せる小説作りのうまさを満喫させる傑作集! 乱歩ファンにとって絶対見のがせない珠玉の短編十編をここにおくる!


月と手袋

昭和六十二年七月五日 春陽文庫 ISBN4-394-30108-4 C0193 税込四百六十円

シナリオ・ライター北村克彦は高利貸し股野重郎の妻あけみと通じ、股野を絞殺した! 夜空には化けもののような巨大な赤い月がでていた。まるで凶事の前兆のように…… 克彦とあけみは股野殺しを巧みなトリックでのがれようと図り、すべては順調にいったかと思われたが、その奸計のまえに立ちはだかったのは警視庁捜査一課の花田警部であった。そして、花田の背後にいた名探偵こそ、ご存じわれらの明智小五郎! 江戸川乱歩(1985-1965)が昭和三十年に発表した数少ない戦後作品の佳作「月と手袋」をはじめ、その独自なる妖美の世界をくりひろげる傑作中編「地獄風景」(昭和六年)、「モノグラム」(大正十五年)、「日記帳」(大正十四年)を収めた乱歩傑作集!


心理試験

昭和六十二年六月五日 春陽文庫 ISBN4-394-30110-6 C0193 税込四百六十円

蕗屋清一郎が下宿屋をいとなむ老婆を絞殺した。老婆がためていた大金をねらって…… 容疑者として蕗屋の同級生斎藤勇があげられた。犯人として斎藤が確定したかと思われたが──。蕗屋は判事のおこなう心理試験にそなえ万全の応答を準備した。蕗屋の巧妙な策は成功したかと見えた最後の一瞬、そのまえに立ちふさがった名探偵!「D坂の殺人事件」解決以来のしろうと名探偵明智小五郎の登場であった。犯罪者の心理の曲折を追って、真犯人を追いつめる物語のおもしろさ! 名作として不朽の名声をのこす傑作「心理試験」(大正十四年)をはじめとする秀作短編七編を収録! 江戸川乱歩(1895〜1965)独自の世界を構成する、ファン待望の乱歩傑作集!


黄金仮面

昭和六十二年九月十日 春陽文庫 ISBN4-394-30115-7 C0193 税込四百六十円

フランスの紳士盗賊、世界にその名も轟く一代の侠盗アルセーヌ・ルパン登場! ルパン対名探偵明智小五郎の対決はいかに!? 意表をつくおもしろさ! 突如! 大東京にその姿を出現させた"黄金仮面"とは!? 上野公園で開催された産業博覧会に出品された日本随一の大真珠、その値五千万年といわれる「志摩の女王」をねらう黄金仮面! そしてまた、日光山中C湖畔の華族鷲尾家の広壮な別邸で発生した怪事件とは? しろうと名探偵明智小五郎の推理はさえわたる! 湖上に逃げた怪人の意外な正体は!? さらに驚天動地の怪事件は続出する。大富豪大鳥喜三郎の名刺をもって、明智小五郎を訪ねてきた執事尾形が依頼したことは…… ルパンは果たして何をねらっているのだろうか!?


緑衣の鬼

昭和六十二年十一月十日 春陽文庫 ISBN4-394-30121-1 C0193 税込五百円

緑衣の殺人鬼! この世ならぬ恐怖の世界を現出する巨匠・江戸川乱歩の筆のさえ! 緑につつまれた怪人のナゾを追うは探偵小説家・大江白虹と名探偵・乗杉龍平! 大江白虹とその友人で新聞記者・折口幸吉のふたりが銀座で目撃した怪事は? 通行中の若い女に襲いかかってくる巨人の短剣の影であった。幻影の恐怖におびえる女! その女は、白虹の妹と同窓の笹本芳枝であった。芳枝と童話作家の夫・静雄の夫婦に迫るぶきみな「影」とは? イモムシを連想させる緑色につつまれた殺人鬼とは? 芳枝のいとこにあたる叔父・夏目菊次郎のむすこ太郎は、衣服から持ち物、住む家にいたるまですべて緑色に統一するほどの緑色狂であった。では太郎が! しかし真相は二転三転!


大暗室

昭和六十二年十二月十日 春陽文庫 ISBN4-394-30122-X C0193 五百円

悪魔の子と白鳥の騎士との虚々実々の闘い! 巨匠江戸川乱歩が練りに練った物語のおもしろさを十二分に発揮した傑作怪奇長編! 親子二代にわたる因果物語の結末は!? 明治の末、台湾航路の客船・宮古丸が沈没し、有明友定男爵と親友の大曽根五郎、家扶の久留須左門の三人は果てしない洋上をボートで漂流することになった。突如、悪鬼と化した大曽根五郎は男爵と久留須にピストルの筒口を向けた! そして五年の後── 大曽根を悪人と知らず妻・京子の行く末を託した男爵の遺言で大曽根と京子は再婚した。悪魔のおそるべき牙はどこまでものびる。邸もろとも京子も焼死した。それから二十年の歳月が流れて…… 故男爵の遺児・友之助と悪魔の子・竜次との宿命の対決は開始された!


ペテン師と空気男

昭和六十二年七月五日 春陽文庫 ISBN4-394-30131-9 C0193 税込四百六十円

わたし、野間五郎は青年時代から物忘れの大名であり、友人から、空気のようにたよりない男といわれ、そこから「空気男」というあだなが生まれていた。そのわたしが、何となく汽車に乗りたくなり、静岡までの切符を買って乗った車中で、不思議な黒ずくめの服の紳士と会った! 悪魔のメフィストじみた風貌のその黒服紳士こそジョーカー・伊東錬太郎であった。プラティカル・ジョーク(冗談のいたずら)の名手伊東にひきつけられたわたしは、伊東とその美しい妻・美耶子との親交を深めていった!(「ペテン師と空気男」) 推理小説界に一大金字塔を樹立した輝ける巨人・乱歩が、戦後、昭和三十年から三十五年にかけて執筆した名作五編を収録したファン待望の一巻!


孤島の鬼

昭和六十二年六月二十六日 創元推理文庫 ISBN4-488-40101-5 C0197 税込六百円

私(蓑浦金之助)は会社の同僚木崎初代と熱烈な恋に陥った。彼女は捨てられた子で、先祖の系図帳を持っていたが、先祖がどこの誰ともわからない。ある夜、初代は完全に戸締まりをした自宅で、何者かに心臓を刺されて殺された。その時、犯人は彼女の手提げ袋とチョコレートの罐とを持ち去った。恋人を奪われた私は、探偵趣味の友人、深山木幸吉に調査を依頼するが、何かをつかみかけたところで、深山木は衆人環視の中で刺し殺されてしまう……! 鮮烈な読後感を残す大乱歩の長編代表作を、初出時の竹中英太郎画伯による挿絵全点を付してお届けする。


読者が語る「江戸川乱歩」 悪の教典へ還る