芥川龍之介

あくたがわりゅうのすけ

羅生門・鼻

昭和四十三年七月二十日 新潮文庫
ISBN4-10-102501-0 C0193 二百四十円

 野生の美しい生々しさに充ち満ちている「今昔物語」の価値を発見したのは、国文学者ではなく、実に芥川その人であった。本編は、陰影に乏しい古典の中の人間心理に近代的解釈を試みることによって、自らの主題を生かした《王朝もの》の第一集。善にも悪にも徹しきれない人間の姿を描いた『羅生門』、自然なユーモアと、整った文章によって漱石に絶賛された『鼻』など、八編を収める。


河童・或阿呆の一生

昭和四十三年十二月十五日 新潮文庫
ISBN4-10-102506-1 C0193 二百四十円

 芥川晩年の諸作は死を覚悟し、予感しつつ書かれた病的な精神の風景画であり、芸術的完成への欲求と人を戦慄させる鬼気が漲っている。出産、恋愛、芸術、宗教など、自らの最も痛切な問題を珍しく饒舌に語る『河童』、自己の生涯の事件と心情を印象的に綴る『或阿呆の一生』、人生の暗澹さを描いて憂鬱な気魄に満ちた『玄鶴山房』、激しい強迫観念と神経の戦慄に満ちた『歯車』など六編。


読者が語る「芥川龍之介」 悪の教典へ還る