VSUG Day 2007 Summer レポート

6/1(金) にコクヨホールでVSUG(Visual Studio User Group)のVSUG Day 2007 Summer に参加してきたのでそのレポートです。
今回は次期Visual Studio "Orcal" と WPF(Windows Presentation Foundation)の話題が中心でした。

【1】 Visual Studio "Orcas" 概要

○現在、英語版β1がダウンロードできるようになっていますが、夏頃にβ2がダウンロードできる予定

○製品版出荷はおそらく2007年末〜2008年初くらいでは?
 Windows Server 2008 (コードネーム "ロングホーン") と同時期に出荷されるだろう

○.NET Framework は3.5になり、新機能は200以上

○主な新機能大別

 1.WPF開発環境強化
   XAMLデザイナとして近いうちにExpression Blendが公開されるが、現状ではVisual Studio 2005と
   連携して一つのWPFアプリケーションをデザインとロジックに分けて開発する必要がある。
   Visual Studio 2005でもデザイン編集可能なアドイン(コードネーム"Cider")があるがあくまでCTP版でしかない。
   しかし"Orcas"によりVisual Studio一つでもデザインとロジックの構築が可能となりインテリセンスも使用可能。
   .NET Framework 3.0 の開発が標準で搭載され、Silverlightに対応したアプリケーションの開発も可能になる。

 2.ASP.NETによるWebエクスペリエンスの実現
   Visual Studio 2005 でも "ASP.NET AJAX 1.0" をインストールすることによりAJAX対応のWebアプリケーションを
   開発することは可能だが、"Orcas"では標準ライブラリとして搭載される。
   但し、現在 "ASP.NET AJAX Control Toolkit" と "ASP.NET Futures" として提供されているものはどこまで
   搭載されるかは未定。
   JavaScriptのデバッグ、インテリセンスへの対応。

 3.Officeアプリケーション(VSTO)開発
   "Microsoft Visual Studio 2005 Tools for the 2007 Microsoft Office System" アドインでOffice 2007にも
   対応したOfficeアプリケーション開発は可能だが、デザイナでOffice 2007を表示できないなど完全対応はしていない。
   "Orcas"によりSharePointを含むOffice 2007に完全対応したOfficeアプリケーションの開発・カスタマイズ、
   ClickOnce配置技術のサポートが可能になる。

 4.データ操作強化(ADO.NET 3.0)
   言語統合クエリ(LINQ) によるデータアクセスが強化される。
   「LINQ to XXX」 のXXXには、SQLやXML、コレクションオブジェクトなどさまざまなオブジェクトが対応され
   オブジェクトの種類に問わずSQLに似た構文で一貫した記述によりデータにアクセスできる機能です。
   ADO.NET Entity Framework の利用。
   Entity Framework を使用すると、エンティティという観点でRDBMSに対するプログラムを作成できる。
   RDBMSに合わせてアプリケーションをモデル化するのではなく、アプリケーションに合わせてデータをモデル化できる機能。
   
 5.サーバーサイドシステム強化
   WCF(Windows Communication Foundation)やWF(Windows Workflow Foundation)を使用して
   モバイルアプリケーションへの対応やSOAに対応したアプリケーションのデザイン・デバッグが可能になる。
 
 6.ALM(アプリケーションライフサイクルマネジメント)の強化
   Team System テクノロジ強化により、開発サイクル管理が強化される。
   エディション分類の詳細がまだわからないので開発者エディションでどこまで対応になるのか不明だが
   データベースプロフェッショナル・テスターエディションの機能が強化され、統合されるよう。


細かいところで見ればもちろんまださまざまな強化点がありますが、大別するとこんな感じ…かな。

 
 
 

【2】 Silverlight

○Silverlight とは、かつてコードネーム"WPF/E"(Windows Presentation Foundation/Everwhere) だったもの。
 簡略すると「Everwhere」とあるように、ブラウザ・プラットフォームに依存しないプレゼンテーションテクノロジで
 プラグインだけで実行されるため、Adobe の Flash に近いイメージ。
 とはいっても当初は、
  IE6,7、Firefox1.5 +WindowsXP SP2 or Vista
  Firefox1.5、Safari +Mac OS X 10.4.8
 今後は Windows Mobileへの対応やLinux版では、Linuxで.NET Frameworkの実行環境を提供する
 MonoプロジェクトでSliverlightならぬMoonlightというプロジェクトがあるらしい。

○Silverlightのバージョン
 厳密にはSilverlightにはバージョンが2種類ある。
  Silverlight 1.0 − プレゼンテーションをXAMLで記述し、イベントをJavaScriptで記述する
  Silverlight 1.1 − プレゼンテーションをXAMLで記述し、イベントハンドラをマネージコード(.NET)で記述する

 しかしどちらも実行環境に.NET Frameworkは必要無いがプラグインが異なるためサイズも異なる。
 それでも1.1バージョンで4MBくらいとのこと。

 ◇Silverlight 1.0 はファイルは別になるがHTMLとJavaScriptの関係と同等で、DOMによる操作が可能
 ◇Silverlight 1.1 はこれまでの.NETアプリケーションと同等でアセンブリを読み込む形式
  ただ、1.1におけるランタイムは.NET Framework 3.5 に相当するが通常のアプリで使用できるすべての
  クラスライブラリが使えるわけではなく限定的。それでも広範なライブラリが対応している。
  HTML DOM←→Silverlight による相互アクセスが可能。  

 Microsoft Silverlight (Silverlightによるビデオ映像が見られます)

【3】 Oracle関連

○OracleのVista対応状況

32bit Vista対応
Oracle 10g R2 Client 対応済
Oracle 10g R2 Database 2007年 第二四半期
(6/5に提供されるらしい)
Oracle 11g Database 2007年中
Oracle Developer Tools 10g R2 2007年 第一四半期
(6/5に提供されるらしい)
64bit Vista対応
Oracle 10g R2 2007年下半期
Oracle 11g R2 2007年中

○OPN(Oracle Partner Network) 紹介
 10万円/年 で 「デモライセンス」と「デベロッパーライセンス」が付属するOTN有償版の低価格サポートサービス
 研修割引やWelcomeKitの送付もあり。

 但し、2007/6/1〜2008/5/31 と期間固定のため今入らないと損!

 詳細はこちら

○JIS X 0213:2004への対応
 データベースへのJIS X 0213:2004 文字の格納に関しては10g以降で対応済み
 
 キャラクタセット    → AL32UTF8
 各国語キャラクタセット → AL16UTF16 

 に設定してデータベースを構築し直す必要あり。

○ツールの紹介
 ・ODE.NET(Oracle Database Extensions for .NET)
  Visual Studio内でPL/SQLのデバッグや、SQL Serverで言うところの SQL CLR に相当する
 「.NET ストアド・プロシージャ」の開発・デバッグが可能になる。
 
 ・Oracle SQL Developer
  SQL Worksheet機能やデバッグ機能、データベース情報などの取得に加え
  Oracleだけでなく、SQL Server、Access、MySQL に接続してデータの移行などが簡易になる無償ツール。
  SQL Serverのクエリアナライザでの実行プランに相当する機能もあり。

  ただインターフェースが日本語でないので慣れるまでに時間を要するかも…



 ・Oracle Application Express
  旧Oracle HTML DBと呼ばれOracle HTTP Server上で動作し、
  簡易なWebアプリの作成やユーティリティがWebブラウザから操作できる。
  ExcelやAccessから簡単にデータを移行でき、かつWebアプリケーションの開発・管理ができる無償ツール。



【4】 WPFとExpression Blend

先頃Expression Studio日本語版が開発完了したということで近々Expression Webに続きExpression Blendも提供される。

Expression BlendはVisual Studio 2005 と互換プロジェクト構成を作成し、
片方で作成したプロジェクトをもう一方で開いて編集することが可能。

だが、イベントハンドラをBlendで定義し、コードをVisual Studio 2005 で編集する必要がある。
Visual Studio 2005でデザインを表示する方法として「VS2005 Extensions for .NET framework 3.0」が存在するが
あくまでCTP版(ノンサポート)としての提供でしかない。

→"Orcas"が出るまでは現実的にはWPFアプリ開発にはExpression BlendとVisual Studio 2005 の両方を起動して
 切り替えながら開発しなければならないのでは。

○Webアプリに近いスタイルの適用
 Windowsフォームの場合、概観を統一したくてもコントロール1つ1つにプロパティを設定したり継承コントロールを
 利用しなければならなかった。
 WPFではWebのCSSに近いスタイルクラスが存在するので、スタイル設定を共有することができる。

○コントロールテンプレートによる概観の変更
 Windowsフォームの場合、コントロールの概観を変える(丸いボタンとか丸いフォームとか)には
 オーナードローイベントやAPIを使って概観を変更する必要があり手間がかかる。
 WPFでは概観を表す既定のテンプレートがあり、そのテンプレートを変更することにより容易に変えることができ
 スタイルとして共有することもできる。

○相互運用
 必要なコントロールがないものはコントロールの組み合わせ、カスタムコントロールを作成したり
 WindowsフォームとWPFを相互に利用することもできる。

○その他デモ
 ・GrapeCityによるWPFコントロールのデモ
 
 ・いろいろなイベントで紹介されているヘルスケアアプリ

 ・チューリッヒ国際空港

 ・日本では初?旭山動物園 Mother Earth〜母なる地球〜