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[264]駒場の(2005/05/21)
東京大学で「ポピュラー音楽へのアプローチ」という講演を聴く。
アカデミズム(音楽学者)とジャーナリズム(音楽評論家)の両側面からどのようなアプローチが成されてきたか、今後どのような進展が望めるか、というようなことが2時間半。結局のところ、学者も学会の中だけでなく一般にも伝えるという姿勢や努力は必要だし(何つってもポピュラーなので)、評論家も論じるための知識の糧として論文等に目を通すことは最低限必要だろうということで、今後はそのためのインフラ(文字通りコンテンツだったり今回のような場を持つ機会だったり)の整備がキーになるのかなあと漠然と思ったり。私は学者じゃないので学術論文って読みづらいなと思ってしまうのだけど、評論文の方が学術論文より読みやすいから優れているとも言えない訳で、アプローチの対象はどうあれ「人に伝える」とはどういうことか?という話のようにも聞こえる。

休憩時間、ゲストのピーター・バラカン氏にサインを頂きながら数分お話しすることが出来た(長年の念願が…)。名著『魂(ソウル)のゆくえ』に若い頃深く感銘を受けた旨を伝え(ずっとこれが言いたかった!)ると、あれはどこまで僕の文章と言って良いか分からないので複雑なところです、と返答された(出来れば「書き直したい」とも)。もしかしたらあとがきにあったかも知れないが、本作は殆ど氏の「語り下ろし」で、全体構成は執筆協力者である五十嵐正氏(私の2つ隣の席に座っておられてびっくり)によるもの(チェックはバラカン氏が行っている)とのこと。そうは言っても語り下ろしたのはバラカン氏自身なのだから氏のソウルに対する熱い思いは変わらないし、レトリック云々を超えたところで私には「伝わった」ように感じられたのは紛れもない事実だ。あの作品が世に出たことを誇りに思っていると仰っていたので、これは謙遜というか、あの作品に関わった方々への気遣いがそういう表現になるのだろう。「あの本がアップデートされる(現在絶版だそうな)なら是非読みたいです!」と伝えると、「それならこれを読んだ方が早い」と1冊の本を薦められた(講演の中でも何度か出てきた)。神(笑)が薦めるなら是非読んでみたいと思う(『魂のゆくえ』で頻りにリファレンスされていた『リズム&ブルースの死』と合わせて読むべきかも知れない)。

『スウィート・ソウル・ミュージック』ピーター・ギャラルニック(著)
[関連Link]

『リズム&ブルースの死』ネルソン・ジョージ(著)
[関連Link]

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