CURTIS MAYFIELD/GOT TO FIND A WAY(1974)

カーティス・メイフィールドの名前を初めて聞いたのは高校生の時。大好きだった
ライ・クーダーが何かのインタビューで自分の影響を受けた「エレキ」ギタリストと
してローバック・ステイプルズとともに彼の名前をあげていたのを読んだのだったと
思う。ライ・クーダーはご存じのように戦前の古いブルーズやフォークなどに造詣の
深い人だったし、それをうけてちょうどロバート・ジョンソンのアルバムなどを買い
込んで格闘していたりしたので、カーティス某というのもたぶんそれ系のブルースマン
だろうくらいに思って聞くまでには至らなかった。しかし数年後、美大浪人生となって
上京した私はいつのまにやら受験を放棄。なぜか譜面の読み書きやジャズギターなどを
教える音楽学校のようなところにまぎれこんでいたのだが、そこで講師をしていた
元ウエストロードブルースバンドの山岸潤史氏のギター講座を私は受講していた。
しかしギター講座といってもマンツーマンあるいは2、3人で3コードのブルーズのセッ
ションをしたり、山岸氏のギターに合わせて"WHAT'S GOING ON"などを歌ったり、
いろんなレコードの情報交換をしたり、ちょうど始めたばかりの自宅録音のテープを
聞いてもらったり、ほとんど遊んでたようなものだった。そんな中で氏が言った。

「カーティスが来るで。お前みたいなのはぜったい見といたほうがええぞ。」

カーティス?前にその名前聞いたことあるな。カーティス・メイフィールドが来日する
というのである。そういえば良く行ってたレコード屋などでサムタイムの広告のついた
カーティス来日チラシを見たことがあった。しかし以前山岸氏に強力に薦められた
アイズレー・ブラザーズなどがコテコテすぎてそのころの私にはちょっとトゥ−・
マッチだったこともあって、結局今は無き渋谷ライヴインでのそのライヴに行きそびれ
てしまった(まさかこれが一生の後悔になるとはねえ)。しかしちょうどNHK-FMの
サウンドストリートで山下達郎氏がカーティス来日の件を興奮気味に語り、"BILLY JACK"
という曲をかけた。1983年、名前を聞いてから3、4年後のカーティス初体験。名前は
知ってるけど聴いたことない。でも聴いてみたら凄く良かったなんて経験あなたも
一度や二度あるでしょ?まさにそれ。

「うわ。」

ワウワウ・ギターに謎のファルセット。なんじゃこりゃ!
目から鱗とはこのことで、先のライ・クーダーの音楽性とはスタイルとしては全然違う
が(その後インプレッションズに行き着いて合点が行くわけだけど)、こりゃえらい
ものを聴いてしまったという感じで、次の日からレコード探しの日々。しかしラジオで
聴いた"BILLY JACK"の入ったアルバムを見つけることが出来ず、かわりに中古盤屋で
1500円くらいで最初にゲットに成功したのがアルバム"GOT TO FIND A WAY"だった。
目的の曲は入っていなかったものの、このアルバムはまさにそのころの私の求めていた
サウンドそのものという感じで何度聞き返したか分からない。何週間か後にさらに深い
謎に満ちた"BACK TO THE WORLD"を発見するまで、私はこのアルバムにはまりこんだ。
全6曲しかなく、おっそろしく音数の少ないクールなファンクとタペストリーのような
繊細なバラード。この不可解な感じはとても文章で表現できないのだけれど、そのころ
私の知っていたEW&Fとかスティーヴィー・ワンダーとはまるっきり別物に聞こえたので
ある。特に好きなのがラストの"AIN'T NO LOVE LOST"。シャウトも派手なソロもなし
なのにこのスピード感と重量感。いったいどうすればこういう境地の音楽を演奏できる
のか・・・。

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