第1回
1.TRAFFIC『FAR FROM HOME』
音がダサイ。曲がダサイ。しかし何度も聴いてしまうのはなぜぢゃ。
ますます染みてくるのである。他のどの英国シンガーにも真似できぬ
この声のたたずまい。芸術的名人芸であります。個人的にはタイトル
曲が特に好き。
2.NRBQ『Message for the Mess Age』
いってみればR&Rであるが、その曲もどこかバランスが崩れた名曲
ぞろい。えーかげんで繊細で骨太、豊かな歌心。この超ベテラングル
ープの評価がほとんどないに等しいのはまったくもって理解に苦しむ。
だまされたと思って聴いてみて下さい。旧作も良いぞ(不動の4人組
だったがGのアル・アンダースンが抜けてしまったらしい...トホホ)。
3.Caetano Veloso『シルクラドー(Circulado)』
『トロピカリア2』も強力にえぐかったカエターノであるが、妻が
買ってきた91年のこのアルバムの味わいは、熟れすぎの果実の様で
あります。思うにこういうのがアバンギャルドというやつではないだ
ろうか。録音も素晴しい。歌詞もぶっ切れてます。国内盤(PHILIPS
PHCA-109)でぜひ。
4.Chris Smither『Don't it drag on』
昔からウッドストック/ベアズヴィル系がものすごく好きなのですが、
ロンドンで£2で買ったこれは見過ごしていたものの1つ。ブルーズ
感覚溢れる味わい深いアコギの響きは最近現れた不思議な黒人、ベン・
ハーパーにものすごく近い。
第2回
1.John Martyn『Inside out』
フォークだかジャズだかサイケだかがうにょうにょなった感じが実に
素晴しい73年のアルバム。日本でおっそろしく知名度が低いジョン・
マーティンだが、こういうカテゴライズしづらいのって日本の業界に
向かないのかねー。イギリスのシンガーソングライターには割と疎い
のだが(私はエルトン・ジョンとかギルバート・オサリバンとかが苦手
なんです)これにはハマっております。彼のアルバムは殆どCD化されて
いるのでぜひ聴いてみて頂きたいと思う。
2.Latin Playboys『Latin Playboys』
私が取り上げるまでもなく各所で話題のようなのでもう聴いた方も多い
でしょうが、この先煮詰まった時なんかに頭を柔らかくしてくれる
うれしいアルバムの中の一枚として長らく愛聴していくでありましょう。
そういう意味ではザ・バンドの『地下室』的であるな。
3.井上陽水『東京ワシントンクラブ』
実は中一の時に初めて自分の小遣いで買った76年のライヴアルバム。
2曲のホームスタジオ録音の中の1曲「東京ワシントンクラブ」は
その後の私の創作の要素がすべて入ってる強烈なアコースティック・
ファンク。嘘ではないよ。
4.TAJ MAHAL『BROTHER』
サントラだが、スティールパンとだらだらした曲調が心地よい眠りに
誘います。タジ・マハールの名作群はここ1年位でCD化されそうな
気がしているのだがどうだろう。
第3回「1994年音楽私的ベスト10」
1.TRAFFIC『FAR FROM HOME』
2.Walter Becker『11 Tracks of Whack』
3.Latin Playboys『Latin Playboys』
4.Richard Thompson『Mirror Blue』
5.Caetano Veloso『粋な男』
6.Ben Harper『Welcome to the Cruel World』
7.NRBQ『Message for the Mess Age』
8.Jimmy Scott『DREAM』
9.ASTRO AGE STEEL ORCHESTRA『HAPPY LIVING』
10.ローラ・ニーロ 2/19 オンエア・ウエスト
2.ベッカー先生の初アルバムは硬派のハース・マルティネスみたいで
実に気に入ってます。ありそうでなかった世界。4.ロンドンでライブも
見れたしトンプスン氏入魂のアルバムで認識を新たにしたミッチェル・
フルーム&チャド・ブレイクの仕事を再チェックしたところ、ロス・
ロボスの『キコ』という恐るべき名盤を聴き逃していた!3.のLatin〜
以上にはまり込んでます。8.のジャズ作品も意外やこの2人のもの。
5.はトロトロもの。6.はジジ臭さが共感を呼ぶ新人。9.は今年の日本一。
音楽がまったく枯れていない奇蹟のライブの10.は本当に生きてて
よかったっス。でも本当に死ぬ程聴いてたのは1.です結局。なんで来日
しないのだ。
第4回『拡大版 - EVERGREEN 20 -」
1.THE BEATLES『THE BEATLES』
作曲・演奏から録音?商品化まで含めてレコードを作ることはどう
いうことか教えてくれる、自分の制作の最初の原動力。
2.STEVE WINWOOD『ARC OF A DIVER』
「ひとりで全部やる」ということのおもしろさ。古くも新しくも
カリスマでもなく、ウインウッド氏の才能がただほとばしるのみ。
数少ないリアルタイムで聴いた作品。
3.LITTLE FEAT『THE LAST RECORD ALBUM』
「みんなでやること」のおもしろさ。6人すべての顔が見え、6人
それぞれが気持ちよくのびちじみする様はまさに痛快。
4.THE BAND『CAHOOTS』
なぜかこのアルバムの世評が芳しくなく、本人達も気に入ってない
のかサッパリわからん。彼らの作品中最もバクハツしてると思う。
ピアノが世界一ヘビーな音してる。いちばん最初に聴いたザ・バンド
のアルバムがこれ。
5.DEREK AND THE DOMINOS『LAYLA AND OTHER ASSORTED LOVE SONGS』
エレキギターを弾くにあたって最初に聴いたアルバム。好き嫌い
以前に脳みそにこびりついてしまったアルバムの代表。
6.TRAFFIC『JOHN BARLEYCORN MUST DIE』
他の何にも似ていない自由音楽。あらゆるものを吸収しても結局
音楽の一番コアな部分で聴かせてしまう力量。うらやましい。
7.TODD RUNDGREN『A CAPELLA』
今はこれが一番好きです。
8.LAURA NYRO『SEASON OF LIGHTS』
この人の声の使い方、フレージングは技術的に相当参考にして
いる。もちろんそんな技術が優れているだけの人ではないことは
誰もが認めるところですが。この中の「マネー」という曲がしょっ
ちゅう頭の中で鳴る。
9.RY COODER『CHICKEN SKIN MUSIC』
ただ聴いているだけではわからないオモシロイ技が山のように
使われていて聴けば聴くほど降参してしまう強力なアルバム。
19.ORLEANS『ORLEANS』
フェンダー・ギターの最も美しい旋律がふんだんに聴ける、ギタ
リストにとって大変うれしいアルバム。
11.NEIL YOUNG『TONIGHT THE NIGHT』
12.CURTIS MAYFIELD『BACK TO THE WORLD』
13.JONI MITCHELL『HEJIRA』
14.SLY AND THE FAMILY STONE『FRESH』
15.JOHN SIMON『JOHN SIMON'S ALBUN』
16.NEVILLE BROTHERS『NEVILLAIZATION』
17.ROBERT PALMER『SNEAKIN' SALLY THROUGH THE ALLEY』
18.MARVIN GAYE『WHATT'S GOING ON』
19.CAETANO VELOSO『CIRCULADO』
20.GINGER BAKER TRIO『GOING BACK HOME』
1〜10位(7,8を除いて)は10代の時に聴いたもの。
洋楽はビートルズしか知らなかった私が、他のロックを聴きはじ
めたのは'78年頃と結構遅く、その頃世間を席巻していたニュー
ウェイヴに全くなじめず、クラプトン人脈を基本にした南部系
ロックやブルース、イギリスものでもどちらかというとアメリカの
ソウルやブルース色の強いものにひかれておりました。なので当然
リアルタイムで聴いたものは少なく、3〜8年くらいタイムラグが
あり、さっぱり友達と話が合わなかった悲しい経験があります。
11〜18は20代前半に聴いたもの、カーティスが初来日した84年に
初めて12を入手し、改めて70年代ソウルにはまったりもしましたが、
基本ラインは変わらず。19,20は最近で20はビル・フリーゼル、
チャーリー・ヘイデンとのトリオなのだがものすごくグッとくる
インストアルバムなのだ。
第5回「今年良く聴いていたアルバム」
1.BILL FRISELL『HAVE A LITTLE FAITH』
今一番入れ込んでるギタリストの少し前のアルバム。スティーブン
・フォスターからソニー・ロリンズ、マディ、ディラン、ジョン・
ハイアットに果てはマドンナまで独自の解釈でカヴァーし倒すアメリ
カン・ミュージックの万華鏡。このひとの頭の中は全然境目という
ものがない。心洗われるすがすがしい音楽。これとその次に出た
『THIS LAND』、ジンジャー・ベイカー・トリオ名義の『GOING BACK
HOME』の3枚は今年本当に良く聴いた。コステロと組んだ『DEEP DEAD
BLUE』もグッとくるライヴだったな。
2.EMMYLOU HARRIS『WRECKING BALL』
なんとプロデューサーにあのダニエル・ラノア氏を引っぱりだした
エミルー姉さんだが、これがまた大変よろしく中年女の怪しげな妖気
がさくれつするイメチェン作品となった。ときにひび割れたような
歌いぶりが「この人こんな声だっけ」と驚かされることうけあいで、
ラスト・ワルツのあのイメージを連想すると怪我しまっせ。中ジャケも
ツインピークスみたいでゾクゾク。
3.JOHNNY CASH『AMERICAN RECORDINGS』
この大御所も強烈なド迫力弾き語りアルバムを出してきた。年寄りが
本気出すとものすごいことになるという見本。こうなるとブルーズも
カントリーも白も黒もないなー。まいりました。
4.BRIAN WILSON&VAN DYKE PARKS『ORANGE CRATE ART』
何かこの頃若者の音楽がさっぱりピンとこなくて、気がつけばわが家の
ヘヴィーローテーションは中高年の人ばっかだが、これがまた親父の
底力を見せつける時間を超越した永遠の名作。もうお聴きになられました
でしょうか。徹底的にハモりたおす今回は歌手に徹したブライアンと華麗
なアレンジメントが冴えまくるヴァン・ダイクの楽曲が最強タッグを組む
まさしく鉄人のワザと力と心意気。
第6回
1.CIBO MATTO『VIVA! LA WOMAN』
巷で噂のニューヨークで活動する日本人女性二人組。なんとあの絶好調
ミッチェル・フルーム&チャド・ブレイク制作ということを抜きにして
も、これだけくつろいだ、ある種心温まるサンプリング・コラージュ
作品はなかなかなさそうだし、とはいっても基本的に彼女たちのスタイ
ルが歌ものであるところも私のようなヒップホップ音痴にはやさしい。
しかもなかなかにセクシーなお声だ。ヘッドフォンでお試しあれ。かなり
ムズムズきますよ。
2.DION『BRONX BLUES』
50年代はベルモンツを率いていたディオンの2年くらい前に入手した
'62〜65年までのソロ活動のコンピレーションCDだが、これが異常に
良くてここの所しょっちゅう聴いている。(最近ディスクマンの新規
購入で音楽聴く時間が増えたのです。)特に後半のブルーズっぽく
なってくるあたりは、ヤクザな魅力が満載でたまらない。その中でも
特にヤクザなのが唾が飛んできそうなラップまがいのハード・ブルーズ
"TWO TON FEATHER"。これはぶっとぶ!
3.TRAFFIC『WHEN THE EAGLE FLIES』
今月のトラフィックはこれ。大昔から愛聴してる74年のラスト作。
曲によってはシンセがみゅんみゅんしていて、最近の耳で聴くと結構
新鮮かも。しかし私の心の支えウィンウッド先生のクールにたゆたう
歌唱がこのレコードを格調高くしている。2曲目の"DREAM GERRARD"を
聴くと私はいつも完璧に何処か遠いところへいってしまう。今作で
ベースをひいていた当時17歳のロスコー・ジーは再編時のツアーにも
参加してました。
第7回
1.HARRY CONNICK,JR.『STAR TURTLE』
この頃は俳優もやるし、オーケストラをバックに小粋にスゥイングする
若旦那てな芸能人イメージがあるようだが、実は生まれはニューオーリ
ンズ。最近はすっかり小編成のバンドを率いた最新型ニューオーリンズ
R&Bをやっているようだ。宇宙亀がどうしたこうしたとかいうコンセプト
仕立てなのがちとうるさいが、このアルバムには腰が抜けるほどいい
楽曲と演奏が詰まっている。ギターが唸るロックな曲はまるでスティー
ヴ・ミラー。おもろい奴だ。今年の大穴。
2.THE BLUE NILE『PEACE AT LAST』
やや大袈裟な気もするが、おっそーいテンポと哀愁のよれよれオッサン
声に何度も聞き返してしまった不思議な一枚。ピーター・ガブリエル
とかのブリティッシュもっちゃりサウンドは結構苦手なのだが、これは
音数の少なさからぐっときた。
3.AL GREEN『EXPLOSE YOUR MIND』
アトランタ・オリンピックの閉会式で、BBキングとともに強烈にぶち
かましてくれたわれらがグリーン牧師の姿は記憶に新しいところだが、
若い頃のこのスケベなタッチもまたたまらん。昔、来日の折にシオノギ
ミュージックフェアに出ていたのを思い出す。何を隠そうカーティス様
と並んで最も敬愛する黒人歌手です。
第8回
1.JIMMY WEBB『TEN EASY PIECES』
2.CURTIS MAYFIELD『NEW WORLD ORDER』
最近の新譜からおやじ系2枚。ウエッブ氏のは過去に他人が大ヒット
させた曲の本人版。ほとんど弾き語りに近いのだが、昔はいまいちな
感じだった歌唱力がずいぶん説得力を増しているのにびっくり。楽曲も
あまりの見事さが事故を乗り越えて云々のメンタリティはともかく音楽
として必要なものは全部あって、いらないものはなにもないすごさ。降参。
3.GILLIAN WELCH『REVIVAL』
紅一点いこう。これも新譜。一聴してこれはカントリーの新星か?という
ツクリでジェームズ・バートン等大御所もはせ参じているのだが、よく
聴くと弾き語りの遥か彼方で歪みギターが唸ってたりしておやおや、この
正調カントリーな歌唱といさぎよい楽曲の裏に危ない中毒性あり。録音も
グッド。
4.GARY BROOKER『LEAD ME TO THE WATER』
ここからは懐かしおやじ系。プロコル・ハルムのリーダーだったブルッ
カー氏の'82年の2nd。当時クラプトンバンドのメンバーだった彼が来日
ステージで「青い影」を歌うのを見てぐっと来て買ってしまったんですが、
これが妙に作曲意欲を刺激する忘れがたい名作だったんですよ。今の耳で
聴くと結構ダサいが。
5.GEORGE HARRISON『DARK HORSE』
宗教がかっているせいか世間の評判はあまり良くないらしいが、私は
ジョージのアルバムの中でこれが一番好き。風邪でもひいてたのか、
声がガラガラなのがかえってドライヴ感を生んでいるんだな。"Far East
Man"を自分のライヴでカバーしたこともありました。
6.BOB DYLAN『SLOW TRAIN COMING』
実は私が最初にリアルタイムで聴いたディランが'79年のこれ。当時
ダイアーストレイツの2ndにはまっていたのだが、そのスタッフで
制作された本作はこれまた宗教な内容を抜きにすれば実にいいノリの
ファンキー・ロック。ノップラー氏もクールに弾きまくり、御大も
なんだかソウル歌手のようにイキイキ。とにかく愛聴してました。