私の読書室


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 本を読むことは人と出会うこと、と思いませんか?
 気の合う人もいればそうでない人もいて……実にいろいろな人がいるものですよね。

 ここでは私の好きな人たちをご紹介したいと思います。




01/09/09

『R.P.G.』 宮部みゆき (集英社文庫)

 八ヶ月ぶりの更新というのは新記録でしょうか。って、そんな記録はいりません。しかし、みごとなまでにさぼってしまったんだなあ。言い訳はこれくらいにするとして、久々の更新は宮部さんの文庫書き下ろしです。ネットで家族を演じていた男が殺されるところから物語は始まり、警察署の中だけを舞台に進んでいく。読み進めながら、いつものようにいろいろ考えました。家族とは? なんてことを考えつつページをめくるのは密度の濃い時間でしたね。明るいところはあまりないお話ですが、これは必読だと思います。




01/01/04

『奥さまはマジ』 火浦功 (角川スニーカー文庫)

 火浦さんといえば「すちゃらか」です。この「すちゃらか」ぶりが気に入る人もいれば、そうでない人もいますね。もちろん私は大好きです。この『奥さまはマジ』は、一昨年の春に買ったまま未読本の山に入っていたのを探し出して読みました。表題作もいいんですが、未完のシリーズ『てなもんや忍法帳』にぜひ復活してもらいたいものです。忍法美人隠れには大笑いしました。




00/12/23

『天国までの百マイル』 浅田次郎 (朝日文庫)

 よく知っている人ならば誰でもうなずくでしょうが、私はかなりのへそ曲がりです。世間で話題になった本はなかなか素直に手に取ることができません。この『天国までの百マイル』も、そういった中の一冊。本屋で見かけても目をそらしたりしていました。って、それじゃ恋する十代か。

 落ちぶれきったひとりの男が、母を救うために百マイルを走る。とてもシンプルな物語です。と言っても、実際に走っている場面はそれほど長くはなく、そこに至るまでとそのあとの話がていねいに描かれています。登場人物に魅力的な人が多くて、ソファに寝転んで読みながらぼろぼろ泣きました。




00/10/01

『しゃべれども しゃべれども』 佐藤多佳子 (新潮文庫)

 ずいぶん前に買ったままになっていたこの本。読み始めてみたらあっという間に読み切ってしまいました。もっと早く読めばよかったといま思います。さまざまな事情から落語を習うことになった人たちと、彼らを教える二ツ目、そしてその周囲の人たち。派手な事件はひとつも起きませんが、読みながらうなずいてしまうような展開です。
 語り手の二ツ目、今昔亭三つ葉が仕事に対して真摯なところが胸を打ちました。私もがんばらなきゃ。




00/09/16

『新宿鮫 風化水脈』 大沢在昌 (毎日新聞社)

 久しぶりの『新宿鮫』シリーズ新刊です。読む前は「分厚いなあ」と思ったけれど、いざ読み始めてみたらまだまだ先がある嬉しさを味わいました。とにかく登場人物のひとりひとりがいいですね。今回、印象に残ったのは大江という老人。こういう人がまだまだいることを祈りたい気分です。

『希望の国のエクソダス』 村上龍 (文藝春秋)

 はじめて村上さんのハードカバーを買いました。お話の中身はなかなか難しい。特に経済の話になるとさっぱりわかりません。って、これは三十代のコメントではないかもしれないな。取材ノートが単行本化されているくらいなので、たっぷり取材をしたんだろうなあと思わせるところは多かったですね。読みながら日本の将来を考えて暗くなりました。





00/08/06

『GO』 金城一紀 (講談社)

 今日読んだ七冊の中で、この本がいちばん印象に残りました。ちょっと前に直木賞も取りましたが、そんなことはどうでもよろしい。とにかくまずは手にとってもらいたい一冊ですね。

 主人公の「僕」こと杉原くんは日本で生まれ育った「韓国人」(かっこがついてる理由は本を読んで考えてください)。その「僕」の恋物語を軸にその周りの生活が描かれていくこのお話は、いろいろ考えさせられつつもすかっとする物語です。杉原くんのお父さんがいい。加藤くんもなかなか。そして桜井さんには負けました(この点、女性の意見も聴いてみたいけれど)。

 学生の頃を思い出しながら読み進めてしまいました。次作にも期待!




00/05/21

『きみは誤解している』 佐藤正午 (岩波書店)

 昨日は夜も更けてから呑みに出かけ、朝方まで歌って帰ってきた。そして今日、昼すぎに起き出してこの本を読んだ。全六篇から成る短篇集で、どの作品にも競輪がからんでいる。画期的なのは、巻末に十三ページもの付録がついていることだ。この付録を読むだけでも楽しめると思うけれど、それはやはり全六篇を読み終わってからにしたいもの。

 表題作の『きみは誤解している』は、以前角川文庫に入った『賭博師たち』(佐藤正午ほか)にも収録されているもので、ぼくは一年ほど前にその感想を書いた。そんなわけで、再読はしたけれど、この作品の感想は書かない。もっとも、かすかな引っかかりを感じて『賭博師たち』と見比べてみたら、字句の変更があちこちに見られた。やはり本になるたびに校正は行われるんだなあ、と失礼なことを思ってしまった。shogoさん、すいません。

 『遠くへ』を読んだあと「勝っても負けても独りぼっち」という言葉を口の中で何度かつぶやいてみた。ということは、ギャンブルとは孤独になるためにするものなのだろうか。もうひとつ印象に残ったのは「独りで何もかもを背負いこむ世界を選んだわけだ」。 

 『この退屈な人生』は、ぼくには実に衝撃的だった。こういう小説を教科書に載せてみたらどうだろうか、と思う。

 『女房はくれてやる』は一人称で語られる作品。「ぼく」「僕」「わたし」「私」「あたし」が出てくるものはわりと多い気がするのだけど、「おれ」が登場するのは『傘を探す』以来ではないだろうか。そんなことを思いながら読み進めた。ボタンを一緒になって探してしまうところが何とも言えない。西の坂君はほほえましい。最後の三行には強くうなずいた。

 『うんと言ってくれ』は、この単行本の帯にもあるように「珠玉の青春小説」かもしれない。三十を過ぎた男がこういうことを言うのもどうかと思うけれど、このての話がぼくはいちばん好きなのだ。「名前負けだ、てめえなんか大失敗で十分だ」には大笑いした。「人にはおのおの固有の感覚---発達した感覚が一つ備わっている」ということは、ぼくにも何か備わっているのだろうか?

 『人間の屑』はこの本のために書き下ろされたもので、ちなみに脱稿したのは2月21日の夜(「Guest book for Shogo Sato」の過去ログ#24を参照)。あれから約三ヶ月で本になったんだなあ、などと感慨を覚えたりする。競輪を観るだけで、金は賭けない主人公というのは新鮮だった。しかし、ジョディ・フォスターは誰でも知っているかもしれないけれど、ジョナサン・デミは知らない人も多いんじゃないだろうか。

 ところで、shogoさん。二〇〇八年でもけっこうですので、岩波書店からの長篇刊行を心待ちにしてます。

 ※この文章は佐藤正午さんのページにも掲載されているものなので、ふだんと文体が違います。





00/05/04

『ぼんくら』 宮部みゆき (講談社)

 始まりは連作短篇という形で、途中から長篇小説らしくなり、最後の章は書き下ろし。そんな形の時代小説です。宮部さんの小説は、数少ない例外を除いて読後感がいいものですが、この『ぼんくら』もその例にもれません。主人公の臨時廻り(同心の役のひとつ、定町廻りみたいなものだそうです)、井筒平四郎は日々をのほほんと過ごしています。言ってみれば愛すべき人ですね。こういう生き方をめざしたいものです。

 平四郎が毎日顔を出す長屋から少しずつ住人が消えてゆく。事件もあれば、信心の末に姿を消すものもいる。はたしてその先にあるものは? 筋書きとしてはこんな感じですが、それよりも出てくる人たちの個性を楽しむお話だと私は思います。平四郎の他にも魅かれる人がたくさん出てきますので。何ヶ所か笑い転げるところもあって、寝転んで読んでいた私はソファから落ちそうになりました。

 読み進みながら、いろいろなことを考える。それが私の読書の楽しみなんですが、この『ぼんくら』はたっぷり楽しめました。仕事のことや人づきあい、その他いろいろと考えた五時間でした。




00/05/02

『漆の実のみのる国』 藤沢周平 (文藝春秋社)

 上杉鷹山ブームというのが以前ありました。もっとも、ブームといっても企業の経営者とかそういう人たちの間での話ですが。その頃、いろいろな作家が鷹山を採り上げた小説を書いたようですが、やはりこの『漆の実のみのる国』に勝るものはないんじゃないかと思います。

 話は鷹山が子どもの頃から始まり、隠居してしばらくのところまでで終わります。けれども、この小説の主人公は鷹山ひとりではありません。貧しさにあえぐ藩を彼とともに救おうとする臣下の姿が心に残ります。自分に与えられた仕事を全うする。そんな言葉も死語と化しつつあるいまだからこそ、この小説を読んで心打たれる人は多いんじゃないでしょうか。




00/04/23

『幻の声 髪結い伊三次捕物余話』 宇江佐真理 (文春文庫)

 ちょっと前に新聞で紹介されているのを見かけて、何となく宇江佐という名前が記憶に残っていました。著者インタビューで「藤沢周平さんの世界に、もう少し男女の心の機微を描きたかった」というようなことを言ってもいたし。ついでに、昔、宇江佐理恵というお天気お姉さん(その頃はウェザーキャスターなんて呼び名はなかったのだ)がいたことを思い出したりもして。そんなわけで、本屋で見かけたときにとりあえず買ってみました。
 中では「備後表」という短篇が泣けます。私が職人を描いた物語に惹かれるのは、こういう話を読むことができるからなんだろうな。久々にそう思えるお話でした。




99/08/16

『童貞物語』 佐藤正午 (集英社)

 学生時代の想い出というものは、どんな人にとっても輝くものなのでしょうか。もちろんいいことばかりということはないだろうけど、やはりきらきら光るものがひとつやふたつはあるんでしょうね。

 などとセンチメンタリズムたっぷりの書き出しで始めてしまいましたが、佐藤正午さんの『童貞物語』です。このお話は主人公の野呂光が高校時代を思い起こして語るという形を採っています。はじめは少しシビアな話が続きますが、そこから先は誰もが抱く学生時代への郷愁を誘うこと請け合い。私も読み進めながらしっかりと自分の高校時代を思い出しました。

 1973年という時代を語る道具として、『平凡パンチ』や『プレイボーイ』、『ジョニーは戦場に行った』などが出てきますが、このあたりはさすがに私にはよくわかりません。しかし、野呂くんをはじめとする男の子たちの言動にうんうんと首を振りながら堀正太郎先生の言葉にもうなずいてしまうあたり、私もそれなりに年をとったのだろうかと思います。

 高校時代、この話を最初に読んだとき、ふたつ年下の女の子に読むことを薦めたのを憶えています。読んではもらえたようですが、彼女から返ってきたのは「タイトルが……」というひとことでした。さて、みなさんはいかがでしょうか?




99/06/06

『でりばりぃAge』 梨屋アリエ (講談社)

 夏のある日、真名子はふと日常の繰り返しに言い様のない不安を覚えた。そんなとき、彼女の目に飛び込んできたのは学校の隣にある家の庭いっぱいに広がる白いシーツだった。それはまるで帆船の帆のように見えた……というのが、このお話の始まりです。

 友人にすすめられて読んだ本ですが、たしかにおもしろかった。真名子さんの家族の描写にもうなずくところが多かったし、嘘っぽさを感じなかった。中では弟のケンジが身近に感じられますね。「おにぎり事件」でキレるところは強くうなずきました。

 子どもだから成長するわけではないし、大人だから成長しないわけでもない。そんなことを思った1冊です。


 『撃つ薔薇 AD2023涼子』 大沢在昌 (光文社)

 タイトルからして近未来のお話です。もっともSF的設定はほとんどなく、コンピュータに関するあたりに少し見られるだけ。物語の中心はある麻薬組織に潜入捜査を行う主人公、櫟涼子の行動を追うことです。かなり厚い本ではあるけれど、読み出したら一気に読んでしまいました。最後まで読むと、大沢さんの小説を好きな人には嬉しい仕掛けもあったりします。

 この物語は、大沢さんがストーリー部分を担当したゲーム「アンダーカバー」(ドリームキャスト対応:99年7月発売予定)の姉妹編でもあります。ドリームキャストの値下げが決まったいま、少しでも売れることを祈りたいと思います。




99/05/04

『心とろかすような マサの事件簿』 宮部みゆき (東京創元社)

 マサというのはジャーマン・シェパードです。その老犬の視点から語られる五つの物語は、どれも語り口がやわらかく読みやすいものです。けれど、だからといって中身が軽いということはありません。特に『マサ、留守番する』で取り上げられている動物虐待は、これから先もおそらく繰り返して行われていくことでしょう。こういう話を読むとき、私は無力感を覚えずにはいられません。なぜそんなことができるのだろう? 何度も繰り返した疑問が頭の中をぐるぐる回っています。




99/05/03

『月曜日の水玉模様』 加納朋子 (集英社)

 2日続けて加納さんの本を読みました。こちらは連作短篇集。『月曜日の水玉模様』から『日曜日の雨天決行』まで7つのお話が収められています。どのお話ものんびりと読むことができて、しかもきちんと謎がある。こういうお話を書いてくれる人が少ないだけに、読んでいてほっとしますね。
 主人公は、ふつうの会社員の塔子さん。助手役というわけではないですが、大日本リサーチに勤める萩くんとコンビを組んで活躍します。どの短篇にしても、会社勤めをしている人ほどうなずくところが多い感じです。個人的には、小田急線が出てくるところが嬉しかったですね。特に二人が住んでいるところが町田と愛甲石田というあたり、すっかりローカルな嬉しさを味わいました。




99/05/02

『いちばん初めにあった海』 加納朋子 (角川書店)

 加納さんの本はどれも読み終わってほっとするものばかりです。しかし、なぜか文庫化されない。しかも厚木あたりの本屋には全然在庫もない。というわけで、しかたなく図書館で借りて読んでます。どこでもいいから「うちが文庫化しましょう!」というところはないのか?

 この本にはふたつの中篇が収録されています。ちゃんと読めば、つながっていることに気づくはず。というよりも、気づかない方がおかしいかな。どちらも前半はかなり緊迫する展開です。いつもと違うんじゃないかい? と思いながら、どんどん進んでいく物語についていくのが精一杯。
  表題作の『いちばん初めにあった海』では、ふたつのお話が同時に進んでいきます。「どこでつながるんだ」と思っていると、なかなかつながらない。でも、最後はしっかりハッピーエンドです。安心して読んでください。途中のやりとりが最後の一行に生きてくるところがいいですね。
 『化石の樹』は、読んでからのお楽しみ。




99/04/30

『F 落第生』 鷺沢萠 (角川文庫)

 泥沼のような人生にはまり込んでしまった女のひとたちを主人公にした短編集です。もっとも、当の主人公たちが暗くなっているわけではなくて、みんな少しずつ前に進んでいる、そんなお話です。天気のいい春の日の午後、ソファに寝ころんで読むにはちょうどいい厚さの本でした。

 最後まで読み進めて永倉万治さんの解説を読んだら、『一番愛しくなってしまうのが『シコちゃんの夏休み』』とあって嬉しくなりました。私も同じことを考えていたから。日頃は「バカアマ」と呼んでいる姉のことを実は愛しているシコちゃんが、私も好きです。




99/04/01

『カップルズ』 佐藤正午 (集英社)

 噂に関する短篇を集めた本です。世の中にはいろいろな噂があるけれど、いいものほど伝わるのが遅い気がしますね。悪いものは瞬く間に広がるのに。
 本を読んでいるといろいろなことを考えるものですが、久しぶりに本を読むせいか実にいろいろなことを考えました。「アーガイルのセーターをひとつくらいは買っておこうか」とか「今日から日記に天気を書くかなあ」とか。『お金もない、押しも足りない、そういう意味よ』というある人の言葉には深くうなずいてしまいましたね。

  『輝く夜』がやけに印象に残っています。




99/03/14

『テロリストのパラソル』 藤原伊織 (講談社文庫)

 新宿、中央公園で爆弾が破裂する。その場に居合わせたアル中のバーテン、島村の過去は……というお話。あちこちで「偶然が多すぎる」という評を目にしていたので、ちょっと気にしながら読んだのだけど、気にならなかったなあ。しょせん、私はその程度の読み手なのかもしれません。
 文章が変に凝っていなくて、読みやすい小説でした。主人公の島村に共感も覚えるし、その他の登場人物の設定もうなずける感じでした。
 しかし、ここまでこだわるべきものなんでしょうか、あの時代というのは。そこだけが私には理解できなかった。




99/02/28

『纐纈城綺譚』 田中芳樹 (朝日ソノラマ文庫)

 中国がまだ唐と呼ばれていた時代のお話。人の血で染め上げられた布が市場で売られていたのを発端に、始まるのは痛快歴史活劇。実在した人物を巧妙に出演させたこのお話、あとがきを読むと『宇治拾遺物語』の中に収められたある説話の続編だということです。作者の田中さんも楽しんで書いたんじゃないかと思えるくらい語り口もなめらか、あっという間に読み切ってしまいました。
 当たり前のことを当たり前のこととして行える人が少ない近頃だからか、この本を読んでいると目頭が熱くなるところが多かった気がします。とにかくすかっとするお話でした。

『運命の剣 のきばしら』 中村隆資・鳴海丈・火坂雅志・宮部みゆき・安部龍太郎・宮本政孝・東郷隆 (PHP文庫)

 「のきばしら」という剣をめぐる七つのお話を、七人の小説家が書き綴っていく本です。宮部みゆきさんの名前に惹かれて買ってきたんですが、その他にも楽しめるお話が多くてお得な感じでした。もっとも、どうしてもひとつひとつのお話が短くなってしまうのは残念でした。もっと書き込んだものを読みたくなるからね。
 宮部さんと宮本さんの書いたものが、私の中では甲乙つけがたいままです。ふたつとも長篇で読んでみたいなあ。




99/02/11

『バニシングポイント』 佐藤正午 (集英社)

 7つの物語を編んだ短篇集です。それぞれの物語が少しずつリンクしていて、読み進めながら不思議な気分になりました。中でも『恋』は、時間軸に逆行して話が進んでいくのがおもしろかったな。ずいぶん前に丸谷才一さんの『樹影譚』を読んだときのような、物語の中に体が吸い込まれていくような感じがしました。
 



99/01/18

『消えた少年』 東直己 (ハヤカワ文庫)

 名無しの探偵「俺」がススキノを舞台に活躍するシリーズの長篇第3作です。適度に散りばめられたユーモア、個性を感じる登場人物、そして気の抜けない物語。休日にのんびりと読むには最適な本でした。中学生が何人か出てくるのですが、その言動にも不自然な印象を受けずに読めましたね。

 ひょんなことから知り合った中学生、翔一が行方不明になったことを知らされた「俺」。顔なじみのやくざ、桐原や友人たちと協力しながら捜索を進めてゆく「俺」がたどり着いた真相とは?あらすじを書けば、こんな感じでしょうか。
  桐原や友人の高田がいいんですよ。すごく存在感があります。 

 このシリーズを読むと、お酒を呑みに出かけたくなるのが難点かもしれません。さて、どうしよう?




99/01/17

『Y』 佐藤正午 (角川春樹事務所)

 時間を遡ることができたなら……。そんなふうに誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。ここに、その力をたまたま手にした男がいます。彼はその力を使って何をしたのか、というお話です。

 読みながら考えたのは「人は現在をすべて捨ててまで過去に戻れるだろうか」ということ。いや、正直に言うならば「人は……」ではなく、「私は……」です。主人公の秋間も同じことを考える場面がありますが、私も一緒に考えてしまいました。
  もうひとつ考えたことは、「いまを生きる」ということです(映画のタイトルとは関係ありません)。このお話を読みながら私がずっと考えていたのは、「何だかんだ言いながらも、いまを生きていこうじゃないか」と作者、佐藤正午さんは言いたいのじゃないかということ。思いっきり外れている可能性が高いけど、私はそう読みました。




99/01/15

『取り扱い注意』 佐藤正午 (角川書店)

 またまた佐藤正午さんの本を読みました。

 二十歳まで野球とともに生きてきた主人公、鮎川英雄。その人生の中にときどき現れては鮮やかな影を落としてきた叔父、陽助。そして、彼らを取り巻く女性たち。ここで語られる物語は、ひとつだけ大きな事件もありますが、なぜかどれも身近に感じられます。

 物語の中に「スクラブル」というボードゲームが出てきます。どうやら手持ちのアルファベットを使って英単語を並べていくもののようです。主人公がそのゲームの『手練れ』(なぜ二重かっこがついているかは読まなければわかりません)だからか、あちこちに英語の慣用表現を和訳したものが出てくるんですが、それが全然知らないものばかり。英語科の教員としては複雑な気分でしたね。




99/01/11

『人参倶楽部』 佐藤正午 (集英社)

 今年の目標は「1日1冊」だったはずが、1週間も更新ができませんでした。まあ、人生なんてそんなものです。って開き直ってどうする?

 先週に引き続き、佐藤正午さんの本を読みました。『人参倶楽部』というスナックに集う人たちを描いた短編集です。連作というよりは解説で引かれていた「連環小説」と言った方がいいかな。
 マスターの一人称で描かれる短編と、それに関わる短編。この繰り返しで描かれていくお話が、最後の『行秋』で輪を閉じるように収束する。読み終わったときは、思わずため息がもれました。いろいろな人がいて、それぞれに生きている。そんなことをつい口に出してつぶやいてみたくなるようなお話でした。
 私がいちばん好きなのは、やはり『行秋』です。夫を静かに待つ恵子さんを描いたこのお話は、どこか藤沢周平さんの小説と似た色合いを持っているように思いました。
 この本が文庫化されるのに6年もかかったことが不思議です。ちょっと怠慢じゃないですか、集英社さん? あ、買ってから読むまでに2年かかった私には言われたくないか。


『放蕩記』 佐藤正午 (ハルキ文庫)

 久々に1日で2冊本を読みました。未読本の山の中から探し当てた、佐藤正午さんの『放蕩記』です。これで、残すは先日買ってきた『取り扱い注意』と『Y』の2冊。もっとも、まだ『スペインの雨』と『バニシング・ポイント』は見つかっていないんだけどね。『彼女について知ることのすべて』は今月の20日に文庫が出るので、そちらを買うつもりです。

 処女作がベストセラーになった作家、海藤正夫が夜の街を徘徊し、酒と女におぼれる中で考えたことは? 簡単に言ってしまえば、こんなお話です。しかし、そんなあらすじに意味はなくて、とにかく読まなければわからない本だと思います。
 冒頭のQ&Aや挿入される手紙、めまぐるしく変わる文体。そのすべてを楽しく読みながら、時間を忘れました。途中、海藤が『お金は価値拡散に対抗できる』と話す場面があるんですが、このあたりを読みながらいろいろと考えたりもして。
 近頃、ノートコンピュータを買おうかなと考えているんですが「では買って何をするのか?」と自問してみると、明確な答えが見あたらない。結局『新製品が出たから便利そう』と思いこんでいるだけなんですよね。買い物をすること自体が目的になってしまっている。だから、買ったあとで放ったらかしになっているものが多いのだ。
 何を言いたいのかよくわからない文章になってきましたが、つまり、手段を目的とすり替えてしまってもいいことはない。そう思うのです。

 といった具合に、読む人それぞれにいろいろなことを考えさせる本だと思います。読んだ人に何かしら考えさせるのがいい小説だ。日頃そう考えている私にとって、この本と過ごした2時間はしばらく忘れられないものになるでしょう。え、しばらくって何だ? そのてのつっこみはメールにて。




99/01/04

『夏の情婦』 佐藤正午 (集英社)

 読み終わって気がついたことが、ひとつ。私が読んだのは文庫版なのですが、その最後のページに親本が出たのは1989年の1月と書いてありました。つまり、ちょうど10年前の本なのかとしみじみ思ったということです。しかし、この文庫が出たのが1993年の3月なんだから、我ながら呆れます。6年近くも本棚で眠っていたんだなあ。いや、眠っていたのは私の方か。

 『二十歳』『夏の情婦』『片恋』『傘を探す』『恋人』の5つの物語を収めたこの本の中で、私がいちばん心惹かれたのは『片恋』です。主人公がいまの私と同い年というのもあって、妙に切ない気持ちで読み進めました。誰でも高校時代の思い出のひとつくらいは持っているはずですが、あの頃の匂いをつい思い出してしまうお話でしたね。




99/01/03

『僕を殺した女』 北川歩実 (新潮社)

 この本が出た頃「『僕を殺した女』?『私が殺した少女』のぱくりじゃないの?」などと考えてしまい、ずっとこの本の内容も知らないままでした。それがたまたま、『本の雑誌』で北上次郎さんがほめているのを読んだ頃、古本屋で文庫化されたものを見つけて買ってきて。

 いざ読んでみたら、記憶喪失やら「自分が違う人間になっている」やら、どうやって謎解きをするのか不安になる材料が次々と出てくるんですが、最後にはきちんと説明がついているあたり「さすが」という感じでした。しかし、読後感がいいかと訊かれるとちょっと疑問かな。




99/01/02

『三月は深き紅の淵を』 恩田陸 (講談社)

 ずいぶん前になりますが「BOOK ML」で話題になった本です。私はこの恩田さんという人を全然知らなくて、「へえ、そんな人がいるんだなあ」と思っていたら、数日後古本屋でめぐり会いました。これも何かの縁だろうと買ってきたんですが、そのまま未読本の山に直行。それをようやく読みました。

 4つの中編が入っている本です。それぞれ『三月は深き紅の淵を』という本がキーワードになっているんですが、連作にはなっていない(と思う)。帯に『かつて一度でも、むさぼるように本を読む幸せを味わったことのある人に。』と書いてあるんですよ。たしかに本を読むのが好きな人向けのお話だとは思うけれど、正直言って私にはそれほどおもしろくはなかったなあ。
 この中では、私は『出雲夜想曲』が好きですね。




99/01/01

『理由』 宮部みゆき (朝日新聞社)

 2ヶ月ぶりの更新ですが、最初にひとこと。ここのところ「日々の思い。」の方では「ですます体」から「だ、である体」に移行しているんですが、こちらはどうしようかと考えています。結論はまだ出ていません。というわけで、今日はとりあえずこの文体で。

 またまた、宮部みゆきさんの本を読みました。この本もずいぶんと評判になった気がしますが、とにかく厚い。読むのに4時間かかりましたよ。
 あらすじを紹介するのが難しい本がたまにありますが、これはその1冊です。あるマンションで4人が殺される事件が発生したけれど、その人たちは……。これくらいしか私には書けません。
 読んで感じたこと、考えたのは「家族とは何だろう」ということ。私たちがいままで当たり前に感じていたことがそうではなくなりつつあるのだということを、私たちは認めなければいけないのかもしれません。この本の中に出てくるいろいろな家族を見ていると、自分の家族について何かを考えずにはいられないと思います。




98/11/09

『クロスファイア』 宮部みゆき (光文社)

 ほんとうに珍しいことですが、ここのところ古い本ばかり読んでいた私が新刊を読みました。宮部みゆきさんの『クロスファイア』は、ずいぶん前に光文社から出た『鳩笛草』という中編集の中のある物語の後日談です。発売されるとすぐに買ってきてあったんですが、落ち着いて読みたかったので今日まで手を着けませんでした。

 発火能力(物語の中では「念力放火能力」)を持つ女性、青木淳子というひとが主人公です。彼女は自分に備わった力が何のためにあるのか悩み、法が裁かない悪に断罪を下す日々を送っています。そんな彼女がある日、たまたま拉致事件に遭遇して……。
 そこから先はお楽しみです。びっくりするほどの意外な展開はありませんが、ページをめくる手は止まりませんでしたね。あっという間の5時間でした。

 何らかの力を持ってしまったものの悩みは、何かを知ってしまったものの悩みと同質なんだなあ、と読みながら考えました。同時に、この物語に描かれているような「人」と呼ぶのにためらいを覚える連中に対して、私は何をすればいいのだろうと。

 想像してはいましたが、ラストが切なかったなあ。


 

98/09/06〜98/11/02

98/05/01〜98/09/02

97/10/01〜98/04/20

97/09/16〜97/09/30

97/09/01〜97/09/15 へ 

97/08/15〜97/08/31





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