◇◆ 鬼女 リャナンシー ◆◇
 非常に美しく妖艶な女性の姿をした、ケルトの妖精。主に泉や井戸に出現するが、気に入った人間にしか姿を見せない。詩人達に霊感(インスピレーション)を与える代償に生命力を吸い取るとされ、ケルトの詩人が若死にするのは彼女の恋人になったためであると言われる。詩の女神とも、吸血鬼とも考えられる存在である。
 マン島にも同種の妖精「ラナンシー」(ラナウンシーとも)が伝わるが、こちらはより恐ろしい存在とされる。誘惑された男性が愛を拒むと奴隷のように彼に傅くが、男性が誘惑に負けて愛を受け入れると別の男性が現れるまで彼女から逃れることはできない。その姿は取り憑かれた男性にしか見えず、彼は弱り衰えさせられて身も心も破滅し、死に至らしめられると言われる。
 イェイツの「ケルト妖精物語」で語られるリャナンシーはこちらに近い存在であり、霊感を与えられた詩人や歌い手の生命を通常より速く燃焼させるために彼ら詩人は薄命なのだと説明されている。

 名前はゲール語で「妖精の恋人」を意味する。