eggplant 連載小説 −雫−

-sizuku-
後編

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    彼女は笑っていた。  笑っていたと云っても彼女がやりそうな不敵な笑いではなかった。  強い意志と、自信に満ち、そしてとてもいい顔。アルカイックスマイルとはこうゆう事 をいうんだと思った。  タリムは、光の糸を紡ぎ何かの呪文を唱えていた。・・・多分、これも非合法なんだろ うなぁ、でも、いい顔しているからいいか。  「さぁて、そろそろいいかぁ!」  ・・・・何が? タリムが、自ら紡いだ光の糸を、映し出されている地球に重ね合わせると、優しい光が満 ちあふれた。  「世界幸せ化計画第一だーん!」  カハスの鏡がより一層光を増し、写り込んでいる地球にも光の糸が走った。この光はそ の星の住人には見えないが、見えたらどう思うんだろう。神の恵みも、終末の始まりと思 う人もいるだろうから、多分この光も・・・  その光の糸がどんどん粒々になり、地球に降下していった。え?タリム何やるつもり? その粒は地球に近づくにつれ大きくなり、そして、  「ちゅどーん!」  その粒ははじけ、赤・黄・緑の光の弧を描いた。  ・・・・・・・花火? 光の後にくる、衝撃波と音。確かに花火。何で?何で花火なの?タリム?  「ちゅどーん!ちゅどーん!ちゅどどどどーん!!」  ・・・・・・・答えてくれよタリムー。  「え?何か言った?」  「あ、あのね、タリム。何で花火なの?」  「綺麗だからよ」  た、単純すぎる。そんなんで神様の約束守れるのかタリム!  「そーれ6連ちゃん!!」  た、タリムは楽しそうだけど・・・地球は?、あ、あれ?楽しそうだ。それにタリムっ て意外と芸が細かい。皆既日食を起こして地球全部を真っ暗にしてる。あの星に天文学が 成立していたらどうすんだよ。ああ、今はあの世界に天文学が無い事を祈るのみ。  でも、タリムも凄いな、一回目で世界中の人を喜ばせている。凄い凄い。世界中がこの イベントを楽しんでくれている。世界中が、あれ?。あそこの子供、いや子供達がおびえ てる。泣いている子さえいる。あ、大人が子供達を抱き抱え逃げ回っている。何で?  戦争だ  え、い、今誰が言った?  戦争だ戦争だ戦争だ戦争だ戦争だ戦争だ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ 逃げろ敵は敵は敵は敵は敵は敵は敵は敵は敵は何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何 処だ何処だ何処だ何処だ何処だサダムかサダムかサダムかサダムかサダムかサダムか子供 子供子供子供子供子供子供子供隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ隠せ未来未来未来未来未来未来 未来未来未来未来未来未来未来守れ守れ守れ守れ守れ守れ守れ守れ。  何だコレ。「タリム!」  「何だ、この世界まだ戦争なんかやってたんだ」  「ふぇ?」  「はーい、第一弾しゅーりょ」  花火が止んだ。日食も終わった。少しして、さっき逃げまどっていた人々は平安を取り 戻した。  「タリム」  「解ってるわよ。少し浅はかだったわ。」  「そうだよ、もう少し作戦考えないと」  「だーい、にだーん!!!」  っと待てい!言ってるそばから第二弾なのタリム?はぁータリムには、考える時間って 必要としないのかなぁ。  そうこう考えているとタリムはさっきとは全く違う形に光の糸を編み上げた。さっきの はテーブルクロス状で、隙間も多かったのだが、今回のは少し違う。凄い勢いで、編み上 げの隙間を埋めていく。このままだと光の布を編み上げるだろう。  ・・・・・・やっぱり普段喋ってるとアレだけどこうゆう時のタリムって頼もしい。じ ゃなくってカワイイ。  タリムは光の布を完成させるとおもいっきり広げ、映し出されている地球をクルッと包 んだ。それを、・・・・・む、結んでいる。  「た、タリム」  「何よっ、さっきっからうるさいわね」  「何で結んでんの?」  「え?」  「ま、まさか持ち帰るわけじゃないよね」  「何でそんなめんどい事やらないといけないのよ!これも作戦のうちなの!」  ほ、少し安心、あくまで少し。だって、この時点で僕達は重犯罪者になってるんだから、 何時消されてもおかしくはない。あんなの担いだ日にゃ「消して下さい」といわんばかり だと思ったけど。良かった、僕の思い過ごしだ。でも、すぐそうゆう方向に考えちゃう僕 ってメチャ不幸なんじゃないの?ひょっとして。  あ、タリムが呪文を詠唱し始めた。でも、さっきのと違って聞こえない。音にならない 位の上級呪文?。もうダメだ。成功しないと本当に後がなくなっちゃった。ああ、地球が あんなに赤と緑に・・・・え?赤と緑?。  タリムが光の布を広げると、赤と緑のジュウタンにしかれた地球に変わっていた。目に 痛いような色合いの地球。  「これは?」  「花満開作戦!!!フラワーどっっかん!」  女の子らしいセンスのある名前・・・・・・・・・・・  一面花世界をなった地球。どの国にも花しか無かった。砂漠にも、氷で閉ざされた国に も、全てが花で満たされていた。これは綺麗かもしれない。地球の人間は皆あぜんとして いる。ま、そうだろうけどさ、でも、子供からだんだん楽しさが上の年齢に伝わってきて いる、これが正解かな。何人かの科学者が慌てて何かを説明しているけど、科学者なんて いつもああなんだから全然OKでしょ。神様もアレくらいなら許してくれるよね。  アレ?空に雲が集まり始めている。あ、雨が降りだした。世界中に雨が降ってる。砂漠 にも氷に閉ざされた国にも、恵みの雨か?ア、アレ?洪水になってる。あ、ああ。  「タリム!」  「わかってる!。”水を司るもの、我は汝にいう。その星に対するその行為!即座に止 めなさい”」  「た、タリム」  「止めなさい!!!」  子供が水に飲まれていく。  「止めなさい!止めなさい!止めなさい!・・・・・・・・・・・・・・・・止めろ!!」  タリムが泣いている。子供が一人沈む度に一つ涙をこぼしている。タリム。  「止めなさい」  「状態を元に戻さんか!バカ者」  神様。何でここに?  「全部モニターしていた」  ゲ。  じゃ、全部バレているわけだ。  「タリム、元に戻しなさい」  「やだ!世界中の人に綺麗な花を見てもらって幸せになってもらうんだ!!」  「・・・・・・・・・・・・タリム」  「やだ!!」  「カハス。契約は解除」  神様がそういうと、カハスの鏡はその効力を失い、鏡とそれに映る地球の映像以外元の 光の糸に戻った。地球も元の荒れた姿に戻り、洪水に呑まれた人も、神の思し召しでなん とか助かっていた。  タリムはヘタっと座り込んで泣いている。  「草には水分を出す蒸散作用がある。世界中に花を蒔けば、その効果によって、地球の 気温は上昇し、大量の雨が降る。水に耐えられない砂漠とかの土地は大惨事になるんだ。 タリム、わかるか?」  「わからないわよ!!」  おいおい。タリム、そこまで意地はるなよ。でも、地球は難を逃れた、といっても、タ リムの起こした惨事を神様が助けた。これじゃ、タリムのプライドはガタガタだ。わがま ま一杯言っていたタリムにはいい薬かもしれない。  タリムは悔しくてグズグズ泣いている。  「ねぇ、神様っているの?」  ん?誰だろ?  「神様っている?」  「ええいるわよ。きっと、ちいちゃんみたいなオテンバさんもいるわよ」  「えー、ちいちゃんオテンバじゃないもん!」  「そう?じゃ、お布団に世界地図描いたのは、だあれ?」  「お隣のゆう君もしてたもん」  こうゆう家庭ってまだあるんだ。  「・・・・・・・・・・・・・ハハ、アハハハハハハハハ」  タリム?  彼女は、その親子を、まるで母のような眼差しで見つめて、優しく笑っていた。とても 優しく、そして強い。その優しさは僕や、神様、いや、この世界に伝わっていくかのよう な広い優しさだった。僕も思わずほころんでしまった。ハチャメチャな事をやっているよ うだけど、タリムのやり遂げようとした気持ちはあくまでピュアだったんだ。僕はその力 に身を任せその幸せに浸った。・・・・・・・・・・幸せに浸る?  タリムは少し光を帯び始め、地球を包み込んでいった。  「リスサーメルの開花」  !。神様は確かにリスサーメルって言った。り、リスサーメル!”心を司る神”タリム が?タリムに心を司る神の素質を持っていた!。え、嘘。  「りすさーめる?私が?」  「そうだ」(僕が嬉しさの余り卒倒したのは言うまでもない。/テス)  「まだまだ、コントロールするには不十分の力だが、しっかり修行して・・・」  「私が、神最高能力の一つを。」  「タリム聞いているか!」  「もっちろーん。この能力を使って、アンタを神の座から追放してやるわ!」  「あ、アンタ?」  「そうよ、アンタなんかアンタごときで十分だわ!!」  「タリム!」  「そうとわかれば、早速”第二期神ちゅどーん計画”を練らなくては!!」  タリムの足は速かった。  僕が気が付いたら、神様の血眼が眼前にあり、死にたくなった。いつまでこんな目に会 うんだろう。・・・ハァ。  でも、  他のよそよそしいタリムに比べて飽きも来ないし、僕はあのタリムに使えて正解なのか な・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分。  早くリスサーメルになってぇ!!テス一生のお願い!! 雫 −sizuku− 終わり。
(C)1996 naoki shimura , eggplant

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