リスティア・ポイント 「魔女の降る休日」第七章
リスティア


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ヴン 衛星を使っているため画像が少し荒い。解像度を上げてもこの程度なのだから、幾ら万能 の科学と言ったところで、実際がこれだ、大したことがない。 −しかし、伝えるだけならこれで十分だ。 「ご覧戴いたように、これが私の行った実験の結果です。」 その画面には、屋内で爆発を起こしたコンビニを始めとして、世界中の凄惨な画像が流れ ていた。 「これは…」 「さっきも言ったように、結果です」 「結果だと?、これが」 「そうです、あなたも言っていたじゃないですか、幸不幸といった人類の思考・思想の明 暗における人類の今後の可能性について、人は破滅するだけの道を辿るのか否か、あなた の欲していた実験の結果ではないんですか?、この映像は?」 「それは…」 「…、続けます。彼らの世界では”魔女の降る休日”と称された今回の実験の目的、−状 況の停止における副作用。結果は24時間しか持ちませんでした。今ご覧になっている資料 からも解るとおり、この実験その物には、終了時間を設けませんでした。つまり−状況は、 一種のガマン大会の様なモノで”彼ら”がガマンできれば、あの日以降も続くようにプロ グラムしておきました。が、わかりますよね、彼らは24時間しか持たなかった。」 今まで開示していた映像から、最も最初のものを表示した。 「彼ら人類で一番最初に口火を切ったのは、翌日の午前0時4分、始めに断ったとおり、こ こでの時間説明は彼らの標準時で説明します。その、日が変わって4分目、日本において ちょっとした小競り合いが起こります。何故場所が日本だったかと言えば彼らの世界が、 星の自転で日付を決めており、日付変更線の関係でこの国がたまたま最初だったようです。」 一部の画像がクローズアップされ、荒いモザイクだった画像が、綺麗なラインを描いてい った。国道沿いにある、ちょっとしたレストランだった。そして更に内部へと映像が移り 変わり、男女一組のいるテーブルにズームしていった。 「きっかけはちょっとしたケンカだったようです。お金の話か、浮気の話かそんな所のよ うです。ここで男が女を叩きます。そう、ここです。これがタガの外れ、この時に起きた ”憎悪”は、見えない形でこのレストラン内部で共振します。そして…、」 「もおいい」 「そうですか?」 「あの遺伝子の後継者達は」 「飲み込まれました、全て」 「突破した者はいないのか?」 「たった5人で何が出来ますか?」 ヴン! 画像が激しく乱れた、 「警告、巨大なエネルギーを確認スキャンを開始します」 オペレーターの声が聞こえ各個のモニターは乱れた、どうやら使ったらしい 「核か」 「その様です、大国が幾つか廃棄していた核があります。多分それを使ったんでしょう」 モニターは回復する様子は無かった。 「どうなったんだ」 「放射線濃度が高すぎます、磁力線も多数検出、暫く無理です」 「クイチュイオを使って、スキャンしますか、」 「ならん!!」 …アウザムか、 「リスティア!、お前にはそこまでの決定権は無いはずだ、明らかに越権行為だ」 「後、3バーツじゃないですか、おまけしてくださいよ」 「ならん!」 「…」 「そもそも、お前のゲノム操作は異常だ、不可視覚醒特殊遺伝子だと?、笑わせるな!、 資料は読ませてもらったぞ」 気が付くと、私の背後に幾つかの数式が現れた。 その数式を見たものは、悲鳴にも似た声をあげた。 「これは…、」 「人の日記を覗くとはプライバシー違反ですね、嫌われますよ。」 「ここの者全員この数式の意味を知っている。説明して貰おうか、」 「意味を知っているのであれば、説明は無用でしょう。」 「いうか!」 「言いますよ、それにこの数式を見たという事はもう一つ、見たんじゃないんですか?」 「なんのことだ」 「おや?、どうしてそう、白を切るんですか?、アウザム貴方らしくない。」 リスティアは勝ち誇ったように、もう一つの数式を表示した。その数式は先ほどに比べれ ば、ひどく単純で、何の意味をなさないようにも思えた。 が、 その式が何を意味するか、この場の空気の重さで誰もが理解できた。もはや、声をあげる 者もいない。 「誰も、何も言わないんですね。」 「くっ」 「こんな机上の空論が恐ろしいですか?」 式の後ろでは、遠巻きに惑星を映し出た。その星はまるで花火のように、大小様々な光を 放っている。 また一つ、とても大きな光。 「この星、いや星は生き続けていますね…、この星の人類の終わりです。」 ”D-4”が…、というざわめきが起きた。 「そう、D-4”マレス”の終了です、暫く生命の誕生はありえないでしょう。」 「貴様…、貴様は人の命をなんだと思っているんだ!」 「ヒト?、ヒトですか?、あんなちっぽけなものが?笑わせないで下さい、あれはモルモ ットに過ぎません。」 「貴様はこの実験の目的を見失ってはいないか?、こんな事が許されるとでも思っている のか?!」 「はい」 「なんだと!!」 「思ってますよ。」  ひどく小さく私の声が響いた。しかしそんな小さな声があれだけ捲くし上げていたアウ ザムらの声をかき消してしまった。私の勝ちだ。 「彼らはモルモットです、形成元素が我々と違うじゃないですか、たかだかカーボンユニ ットごときに、何同情してるんですか?」 「その言葉、後々のいいわけにするなよ」 「しませんよ、そうそう、隣にあるD-3”エアリス”を6バーツ後に、D-4の追記実験として 使用します」 「そんな許可を誰が……」 「Ω-C14789965412B」 「何だ?!」 「今度私の実験が受理された許可コードです。閲覧レベルは52。アウザムならご覧いただ けるんじゃないんですか?」 「………………」 「実験内容、資料の閲覧も可能です。後で貴方の意見を聞かせて下さい。回線は開いてお きます。」 ………私の足音だけが静かに深く響いた。

魔女の降る休日:
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