追悼
藤子・F・不二雄

1996.9.23没

 藤子・F・不二雄が死んでしまいました。来年の劇場版ドラえもんは、プロットは完成しているはずなので、公開はされると思いますが、その原作たるマンガは読めなくなってしまうのです。大長編ドラえもんは、全部買っていたのに・・・ご冥福をお祈りします。
 僕は「ドラえもん」にハマリ、初めて買ったマンガが「鉄腕アトム」だったという幼年期。初めて見た映画は「ドラえもん のび太の恐竜」だった。

 「ドラえもんの映画・大長編コミックの中で、(魔界大冒険は)一位の質を持つものだと断言する。中には小宇宙戦争(リトルスターウォーズ)や鉄人兵団がいいと言う人がいるかもしれない(割と好き)だがパワーが落ちてきたと言われるドラえもん映画久々の問題作「雲の王国」を加えても、この魔界大冒険には勝つことは出来ない。
 全く無理のない伏線、計算されつくしたストーリー展開、2度3度にわたる大ドンデン返し、ここまでくると気持ちいいとしか表現できない。未見の方は一度みてほしい。あの大友克洋ですらかなわない存在だという事に気が付くはずだ。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ですら(この場合Uを指す)ある程度の矛盾(タイムパラドックスの理論に基づく)があり、「T2」ではそれこそ無茶していたジャンルを完璧に使いこなした才人(しかも、基本的な対象が低年齢層なのにも関わらず)見てない人には全く理解できないだろうけど、もっぱらのアニメ嫌い、洋画ばっか見てる奴、はこの「魔界大冒険」を見て貰いたい。子供向け番組の映画化が、あのナウシカよりも前に
(魔界大冒険はナウシカと同年、公開期間がナウシカより早い)大人ですら耐えうる作品(これに関しては商品の域を超えている)が存在したと映画好きなら感じる事ができるはずだ。「ちびまる子ちゃん」や「サザエさん」すら勝てない発行部数七千万部、八千万部(当時より更に数年前のデータによる)ともいわれるドラえもんに作者藤子・F・不二雄の神様の様な才能を見て欲しい。

*本文中の斜体でない括弧は志村が加えた注。

 上記の文は3年か4年位前に書いたもの、ノートに描いていたマンガの個々の表紙に『邦画の底力』というタイトルでかいてるコーナーの第27回目をそのまま掲載しました。本HPでの『邦画の底力』や『あさはかな評論』のひな型なんですが、ドラえもんに関しては、新たに書くのは止めて、再録しました。

 ここで一つお薦めを、「未来の思い出」という作品があります。森田芳光監督で映画にもなっていますが、完成度は比じゃないです。主人公のマンガ家納戸理人がある人生のある地点から、何度も青春時代までを繰り返すという話で、作家性の強い名作です。僕自身捨てたり売ったりしまったり出来ない本の一つです。読んでみて下さい。

 多分、この「未来の思い出」の主人公の様に、藤子さん本人も自分の青春時代(トキワ荘時代)に戻って、当時の我孫子さん(藤子A)や赤塚さんや石森さんとかと仲良くやっているのかもしれない。本人がそれに気が付けば、藤子・F・不二雄は復活するだろう。
1996/9/23 PM9:37 志村直希


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