美少女超能力者ブレザーバビル
このページは「その32」から記されております


● お詫び

★その30 その31

 は 管理人の編集ミスにより消失し、修復が不可能となってしまいました。
 そういった状態ですが、中島さんのご好意により掲示させて頂いております。

管理人の失態で、作者の中島さん、ファンの方々には大変なご迷惑をおかけしましたことを
深くお詫び申し上げます。

★その32

ヨミの海底基地から発射された魚雷が、再び潜水艇をとらえた。
艇全体に強い衝撃が走る。由美子は床にふせて揺れがおさまるのを待った。
「…!今のでまた大穴が開いちゃったかしら?」
顔を上げて後方を見る由美子。しかし新しい穴は開いてない。
「ゴ主人サマ。浩一ガテレキネシスヲ使ッテヨケタノデ、穴が開クホドノ被害ハアリマセン。」
最初の穴をふさいでいるロデムが答えた。
「そうだったの…ありがと浩一くん!助かったわ!」由美子は浩一の方をふりかえる。
しかし、今の魚雷をかわそうとした時に、すっかり力を使い果たした浩一は、白目をむいて床にのびていた。
「大変!早く陸に上がって、休ませないと!」
「ゴ主人サマ、急ガナイト、マタ魚雷ガキマス。」
「そ、そうね!でも、もう浩一くんには頼れないし…どうしよう!」
頭を抱えてしばらく悩む由美子。
「…疲れる事はなるべくしたくないけど、やむをえないわね!」
そういうと、由美子は両手を高くかかげて、目をつぶり、精神を集中した。

一方、ヨミの基地では次の攻撃の準備をしていた。
「くっ、命中したかと思ったが、ぎりぎりでかわされたか。早く次の魚雷を用意しろ!」
「は、はい!」作業を急ぐ部下達。
しかしその時、ヨミの腹部に激痛が走った。
「ううっ!」腹をかかえてうずくまるヨミ。
「よ、ヨミさま…急に腹が痛くなって作業が出来ません!」
「お前達もか!落ちついてきたと思っていたのに、なぜ急に…」
ヨミや部下達はいっせいにトイレへ駆け出し、管制室は空っぽになってしまった。
由美子が基地内の人間全員の大腸を、精神動力で刺激したのだった。

☆七夕の夜に ちょっとひといき☆


「由美子、試験はどうだったんだぃ?」
「お父さん、それは聞かない約束よ」
「何を言ってる・・・、来年はお前も受験だぞ」
「ハイハイ、あ、お母さん、手伝うわ!」
母親と並んでおしゃべりをしながら洗い物をする娘を、相好をくずして眺める古見医師、親ばか丸出しである。
・・・・・
からり、由美子は自室の窓を開き夜空を見つめた。
ふう、小さくため息をひとつ。
「浩一くん・・・」
古見家の居候だった浩一が姿を消してからまもなく3年になる。
最近では家でも浩一の話題が出ることはほとんどない。
Tシャツにジーンズの由美子、シャツの胸元の女性らしいふくらみが三年の時を物語っていた。
(どこにいるのよ、浩一くん、)
記憶の中の浩一は3年前の姿のまま変わっていない。由美子はそれが哀しかった。
「きょうは七夕、か、」
(お星様でさえ一年に一度は会いに来てくれるんだよ、浩一くん)
「帰ってきて・・・」
・・・・・
その頃、浩一は、北海道の牧場でバーベキューを食べていたのだった・・・

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七夕の夜、夕飯を済ませた浩一は、ユキと二人で草原に寝転んで、星空をながめていた。

「ねえ、浩一くん…」寝転がったまま、浩一に話しかけるユキ。
「ん?なんだい、ユキちゃん。」
「今まで浩一くん、私達に自分の事話してくれたことなかったわよね?私達に会う前、どこでどうしていたの?」
「…ユキちゃん。僕の両親はね、僕が赤ん坊のころに死んじゃって、僕はあちこちの親戚の家を転々としてきたんだ。」
「そ、そうだったの…」
「どこへ行っても厄介もの扱いされて、肩身がせまくてさ、結局家出してきちゃったのさ。それからあちこちさまよい歩いて、今ここにこうしているわけ。」
「浩一くん…大変だったのね…」
「いやあ、そうでもないさ。でも、このワタリ牧場に来てから初めて、僕は人のぬくもりっていうのに触れたんだ…
それはユキちゃん、君と出会ったからなんだよ!」
「浩一くん!」起きあがる二人。
「ユキちゃん…これからも、ずっと、ここで君と一緒にいていいかい?おじいちゃんと3人で、この牧場を盛りたてていこう!」
「うん!浩一くんとずっと一緒に…!」
星空の下、互いの手を強く握り、見つめあう浩一とユキ。

…あーっ!やっぱ腹立つ!浩一くんなんか、おじいさんになってしまえーっ!(←中島さん談)

★その33

「ふう、これで、しばらくは攻撃してこないと思うわ。今のうちに逃げなくっちゃ!…うっ」
言い終えたとたん、体がふらつき、その場に座り込む由美子。
「ゴ主人サマ、大丈夫デスカ!」
「ロデム…平気よ。でもちょっと力を使いすぎたみたい…ハァハァ」
「今ノゴ主人様ノ状態デハ、潜水艇ヲ陸マデ運ブノハ無理デス。ドウシマショウ?」
「うーん…そうだわ!ポセイドン!私達を抱えて陸まで連れていってちょうだい!」
由美子の命令に反応したポセイドンは、潜水艇を両手で持ち上げると陸に向かって泳ぎ始めた。

そのころ、ヨミの基地内は、トイレに駆けこむ男達でしばらく混乱していたが、30分もするとおさまり、全員配置に戻っていた。
ヨミも管制室で、顔全体にかいていた冷汗をハンカチで拭いながら、ほっとしていた。
「やれやれ、えらい目にあった。せっかくのいいところでバビルを逃してしまったわい。どうだ?今のバビルの位置は?」
「はい、さっきよりも大分遠くに行っています。ここからの攻撃は届きませんが、今から我々が潜水艇で追いつく事はできます。」
「よし、すぐにバビルを追いかけろ!」
「はいっ!」

しかし、運命はヨミ達に対してあまりに非情であった。

突如、海底基地の廊下の天井にヒビが入り、天井は大きな音を立てて割れた。
割れ目から、大量の海水が流れ込んできた。
ドドーーーーーッ
「ヨミさまっ!海水が入ってきて、もう腰の上まで浸かっていますっ!」
「わしも浸かっている!それにしても、何故天井にヒビなど入るのだ!工事の時誰かが手を抜いたのか!」
「あっ…そういえば、ヒビの入ったあたりを造っていた時、バビル2世がポセイドンを連れて海底に現れましたよね?それで焦って工事がお粗末になったのか
も…いやあ、まいりましたねー。ははっ。」
「大ばかものーーーっ!(ゴボゴボゴボ…)」
海底基地はたちまち海水でいっぱいになり、その機能は完全にストップした。

海底基地がどうなっているかも知らず、由美子たちはポセイドンに運ばれて、北海道の陸にたどりついていた。
「はあーっ、助かった。一時はどうなるかと思ったわ。ポセイドン、ありがと!」
由美子はそう言うと、海面から首だけ出しているポセイドンの横っ面にチュっとキスした。
ポセイドンは無表情のまま海にもぐり、泳ぎ去ってゆく。
「う…うーん…ここは?」
気を失っていたユキが、目を覚まして起き上がった。ユキに駆け寄る由美子。
「ユキちゃん、大丈夫!?ケガはない?」
「由美子さん…ええ、なんともないです。」
言いながらユキは、自分のとなりに横たわっている自分の祖父に気づいた。
「おじいちゃん、しっかりして!」
「おじいさんも気を失っているだけだから、心配いらないわ。」
「そうですか、よかった…はっ。浩一くんは!?浩一くんは無事かしら?」
「ああ…浩一くんなら、あそこにいるわよ。」
由美子が指差した方を見て、目を丸くするユキ。
「あの、由美子さん?本当に、あのひとが、浩一くんなんですか?」
「ええ、間違いないわ。本物よ。」
ユキは近づいて、じっと浩一の姿をみつめる。
そこには、ほとんどの頭の毛が抜け落ち、やせこけた1人の老人が転がっていた。
★その34

ユキは、由美子の言う事が信じられなかった。
「ウソでしょう?こんな、こんなおじいさんが、浩一くんのはずない!」
そう言いながらユキは、由美子の方を振り返り問いただした。
「由美子さん、冗談じゃなくて浩一くんがどこにいるのか、教えてください!」
由美子は負けずに言い返した。
「だからっ!そこに転がっているのが正真正銘、ホントの浩一くんよ!」
「デタラメ言わないで!ここに寝てるのはよぼよぼのおじいさんじゃない!あの浩一くんが、どうやったら短い時間でこんなに老けこむのっ!」
「それはっ…なっちゃったものは今更しょうがないでしょう?」
「それじゃあ、このおじいさんが浩一くんだっていう証拠は、どこにあるんですか!?」
「しょっ、証拠って…この姿を見て、浩一くんだとわからないの?」
「わからないわっ!」
「髪の毛が無くなって、しわだらけになって、ちょっとやせてるけど、面影はあるじゃない。よく見てみてよ!」
由美子に言われて、じっと足元の老人を見つめるユキ。
「……………どこにですかっ!?」

意識を取り戻したワタリ老人と共に、由美子達はワタリ牧場に戻った。
眠りつづける浩一は、ベッドに寝かされた。
「絶対おかしいわ、あのくたびれたおじいさんが浩一くんなんて!由美子さん、やっぱり本当の事を隠してる!」
老人の寝顔を見ながら、ユキは由美子に対する疑いをふくらませていた。
「ユキちゃん、浩一くんは相当疲れているみたいだから、明日まで目をさまさないと思うわ。」
「そうですか…目を覚ましたら、このおじいさんに直接確かめてみなくちゃ。ホントに浩一くんなのか!」
「本当だってば!」
向き合って目から火花を散らす由美子とユキ。

その深夜。
ベッドで寝息を立てている浩一。
突然その顔の肉がむくむくっともりあがり、肌は少年のハリとツヤを取り戻していった。
髪の毛もにょきにょきと生え出し、抜け落ちる前の長さまで伸びていった。
そして30分もたたないうちに、老人は少年に変化した。

朝になって、由美子たちは、浩一の寝室に向かった。
部屋をノックするユキ。
「浩一くん、起きてる?」
「ああ、ユキちゃん?どうぞ。」
「!!」バタンとドアを開けるユキ。
部屋には、学生服を着込んだ浩一が、ベッドに腰掛けて靴下をはこうとしているところであった。
「こ、こ、こ、浩一くん!」
「浩一!」
「おじいちゃん、ユキちゃん。僕のせいで迷惑をかけてしまって、ごめんなさい。二人とも無事でよかった。」
「いいのよ、浩一くんが元気なら…」
言いながら、つい涙ぐむユキ。後ろにいる由美子を振り返る。
「由美子さん、ウソついてるなんて言ってごめんなさい。私、全然浩一くんだとわからなくて…」
「ううん、いいのよ別に、そんな事。」
笑ってはいるが、浮かない表情の由美子。

「浩一くん、お腹すいたでしょ?朝食すぐ持ってくるわ。」
「ユキちゃん、僕ならもう大丈夫さ。朝ごはんなら食堂で食べられるよ。」
「そうかそうか。じゃあみんなで朝メシにしようかの。」
笑顔で部屋を出て行く浩一、ユキ、ユキの祖父。
しかし、部屋にひとり残った由美子は、3人がいなくなったのを確かめると、がっかりした顔でつぶやいた。
「浩一くん、おじいさんの姿の方がステキだったのに…」
★その35

食堂に入ってきた由美子に、エプロン姿のユキが話しかけた。
「あの、由美子さん。」
「なあに?ユキちゃん。」
「あの外にいる大きな鳥なんですけど…」
「ああ、ロプロスがどうかした?」
「昨日からあのままでじっとしてるんですけど、エサは何を食べるんですか?」
「え?浩一くーん、ロプロスってなんか食べたっけ?」
「由美ちゃん…もうちょっとしもべの事も知っときなよ…ユキちゃん、ロプロスは食べなくても平気なんだ。」
「えっ?大丈夫なの?」

朝食の後、外でロプロスをなでている由美子。
「お前もご苦労だったわ。もうすぐ帰るからね。」
「クルルルル・・・」
そこへ浩一が走って行き、話しかけた。
「由美ちゃん、もう帰ろう!」
「言われなくっても、用が済んだらさっさと塔に帰るわよ。」
「そうじゃなくて、東京のおじさんとおばさんの所に帰るんだよ!」
「ええっ!」顔があおざめる由美子。
「何度も言ってるだろう?僕達はまだ未成年だし、義務教育だって終わっていないんだよ。いつまでもブラブラしてちゃいけないんだ!」
「そんなっ…東京なんていやよっ!」
「いつまでも何を駄々こねてるんだよ!東京の暮らしの何が気にいらないのさ!あの塔よりよっぽどいい生活できるじゃないか!」
「でも、毎日学校に行かなきゃいけないし、宿題や試験もあるし、ママは勉強勉強ってうるさいんだもの…」
「そんなの、ヨミと戦う事に比べたら、大した問題じゃないだろう?それに、おじさんもおばさんも、学校の友達や先生だって、由美ちゃんのこと心配してるは
ずだよ。」
「ふん、そんなのうわべだけだわ!口先でいくら心配だなんて言ってても、本当は浩一くんだけに帰ってきてほしいのよ。パパやママだって、優秀な浩一くん
の方が、私なんかより可愛いに決まってる!」
「そんなわけないだろ!」

口論している二人を窓から心配げに見つめるユキ。そこへ、玄関から人の声がした。
「ごめんください。ワタリ牧場はこちらでしょうか?」
「はーい!おまちくださーい。」ユキは玄関に走って行った。

「とにかく、絶対東京になんか帰らないから!そんなに帰りたいんなら浩一くんが1人で帰ったらいいわ!居候だからって、遠慮することはないわよ。パパも
ママも、本当の子供みたいに浩一くんを可愛がっているんだから!」
「なに言ってんだよ!由美ちゃんを残して僕だけ帰れないよ!」
「じゃあ、あきらめて、一緒に塔に帰るのね。帰ったら掃除と洗濯と、そうそう、食糧の買い出しにも行ってもらわなくちゃ。しっかり働いてもらうわよ。フフフ。」
「由美ちゃん…」
何を言っても聞こうとしない由美子に、何も言えなくなりうなだれる浩一。

「そうはさせないよ、由美子。」
浩一は聞き覚えのある男の声に、はっと顔をあげた。由美子も思わず声の方向を見た。そこには、大人の男女二人が立っていた。
「パパ!ママ!」「おじさん、おばさん!」
つづく...

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