予防接種にも「薬害エイズ」と同じ災難
厚生行政全体で改革を
毛利子来
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月10日

いま追求されつつある「薬害エイズ」は、 決して限られた病気の人たちだけの災難ではない。 それは、実は、私たち国民全体に恐るべき警告を発しているのだ。

というのは、そこで暴かれていることが、エイズだけにかかわる問題ではないからだ。

まず危険を知ったうえでの厚生省の無策、 そして人命より利益を優先させる薬品メーカーのあこぎさ、 さらに両方の御用を務める学者の醜さ、 リスクの大きい薬剤を用いる医師の安易さ……。

こうしたことがエイズにだけ突然に発生したとは、とても思われない。 むしろ、それだけの素地があると考えるほうが妥当だろう。

現に、最近でも「薬害エイズ」とウリふたつ、まったく同じ性質をもつ災難が、 少なからずおきているのだ。

その典型として挙げなければならないものに、予防接種がある。 特に、はしかとおたふくかぜと風しんの3つの生ワクチンを混ぜ合わせた MMRという予防接種がよい例だ。

これが「認可」されるときから、恐ろしくズサンだった。 動物実験が安全性の確実な証明になっていなかったし、 臨床試験も数が少なく「二重目隠し法」という科学的な方法さえ取られていなかった。 また、3種を混合することの危険を指摘する声や髄膜炎が発生したという報告や 10年以上も安全の実績があるアメリカから輸入せよといった意見を無視してしまった。 さらに、なぜか、数あるメーカーの中から3社の製品だけをピックアップして、 「統一株ワクチン」としていたのだ。

しかも、接種が開始されてわずか3ヵ月後に、 髄膜炎が600人に1人の割合で発生している という前橋市医師会の厳密な調査が報告されたにもかかわらず、 厚生省の予防接種委員会は数千人から3万人に1人と発表。

その後も、群馬大学の400人に1人という報告があったにもかかわらず、 接種開始2年後になって、ようやく1,200人に1人の率と訂正するだけ。 これでは「副作用隠し」といわれても仕方あるまい。

もっとも、この段階で「希望者のみ接種」と方針を変えたが、なお接種を続け、 被害を拡大した罪は大きい。

そうして、あげくの果て、ようやく接種開始後4年目になって「当面中止」を 決定するのだが、その間に 被害者の数は、厚生省が認めただけでも、 死者2人を含む重症者が1,056人に達している

ところが、それから3年たった今年の3月に、もっと驚くべきことが判明する。 それは被害の元凶が「統一株ワクチン」であることが明らかになった直後の 2ヵ月ほどの間に、 「駆け込み」と思われる在庫の大量出荷 が行われていたという事実だ。

かてて加えて、中止はしても「当面」であって、 「回収」は厚生省が責任をもって行わなかったから、 在庫を抱える医療機関が接種を続けなかったという保障はない。

このように見てくると、 予防接種も「薬害エイズ」と同質の構造が支配している と考えざるをえない。 この際、問題をエイズに限らず、厚生行政全体に広げて、 改革をすすめなければならないと痛感する。

(もうり たねき・小児科医)

(1996年4月1日 毎日新聞)


MMR (新3種混合)ワクチン

はしか、おたふくかぜ、風しんの3種混合ワクチンとして、 1989年4月に導入されたが、接種後に無菌性髄膜炎を発症するケースが多発したため、 厚生省は93年4月、接種を見合わせることを決めた。 厚生省によると、MMRワクチンの副作用発症者は最終的に1,754人に上り、 1,044人に1人が発症したとしている。

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