読者からの反響 99/05/25
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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組織事故の研究
高野 研一 (電力中央研究所 ヒューマンファクター研究センター)

初めてメールを送らせていただきます。

原子力分野の事故・トラブルの分析を 10年ほど行ってきております。 電力中央研究所の高野と申します。 医療の問題も原子力と共通性があります。 いわゆる「組織事故」の色彩が強いという意味でです。

つい最近、J.リーズン著の「組織事故」の和訳本を日科技連出版社 (03-5379-1239、 http://www.tokyoweb.or.jp/nikkagiren-p/ )から出しました。 組織としての事故に対処するための最新のアプローチが紹介されています。

医療事故についてもひとごとでなく、興味があります。 航空機事故、医療事故も原子力、化学プラント事故も共通点があります。 このような組織の安全に対する取組みが事故の発生に関与してきたとの見解は比較的新しいものです。

このような安全は企業、組織のトップが真剣に取組まなくては根絶できないものとの認識が欧米に広がりつつあります。 我が国の場合も同じような流れにすることで安全が担保される社会が構築されてゆくのではないでしょうか?

以下に、翻訳書のまえがき(著者、訳者)を添付いたします。 是非、御一読をお勧めします。


「組織事故」

主題: 組織事故からの脱却 - その理論と実践
副題: 潜在的危険性をもつ技術システムにおける人と組織の管理
著者: James T. Reason, ジェームス リーズン、教授・PhD、マンチェスター大学 心理学部

前書き

この本の読者には純粋学問的な興味からの読者を想定していない。 もちろん、大学関係者や学生にも読んでもらえれば幸いであるが、現場での作業や管理に携わっている人、特に、日々、潜在的な危険性をはらんでいる技術システムの管理、運営に係わっている人に焦点をあてている。 したがって、ヒューマンファクタの専門家というよりもむしろ技術者的な素養の人をイメージして記述したつもりである。 その意味で、期待通りとなっていないかもしれないが、専門用語を出来るだけ回避して記述した。

また、この本はある特定の分野のみを対象にしてはいない。 むしろ、ある種の危険に直面しているすべての組織に適用できるような一般的な原則やツールに重点を置いた。 原子力発電所、石油探索・生産、化学プラントや陸・海・空の交通ばかりでなく銀行や保険会社なども含まれる。 システムが進歩し、大規模化すればするほど、組織的なプロセス−弱点も−似通ってくる。 これは、ビッグバンの例をみるまでもなく明らかである。 ここでは、ポイントをよく理解してもらうため、個々の事例を引用しているが、事故のケーススタディーのための本とするためでなく、強調したいのは、理論と実践であり、二つは車の両輪のようである。 この本の試金石はこれらのアイディアが最終的に具体的な改善に結びつけられるかどうかであり、その改善が、複雑な、多重防護システムに内包される、まれでありながら起こればカタストロフィックな「組織事故」の低減に具体的に寄与できるかにかかっている。

はじめに (訳者まえがき)

ベアリング社の倒産に始まり、様々な金融不正取引などの事件が教えるように、等しくその始まりは個人単位の違反であったが、それが組織の屋台骨を揺るがすような規模に拡大していく過程を見ると、その監視、チェック体制の不備を含めてその組織体制に潜む欠陥が引き起こした「組織事故」と云わざるを得ない。

経済界ばかりでなく、同じようなことが巨大プラントの安全性研究の分野でも起こっている。 すなわち、1986年に発生したチェルノブイル原子力発電所の事故では、システムそのものの欠陥も大きな原因とはなったが、特殊な試験を組織として十分な検討のないまま進めてしまったという組織要因が絡んでいたというのが通説となりつつある。 その後、これを契機として、安全性研究のなかでソシオテクニカル(社会科学的)な研究アプローチの重要性が次第に認められ、組織事故への取り組みが本格化している。

このように、昨今、ヒューマンエラー関連研究の大きな流れが、「個人」から、「小集団(チーム)」、さらに「組織」へと拡大しており、その意味で、本書はこれまでの経緯を踏まえたうえで、その先鞭をつける好著として位置づけられる。 また、最近、組織の安全文化が叫ばれる中で、その概念の明確な定義を試みていおり、どのようにすればこの問題と正面から取り組めるのかについて具体的な提案を行っている。 安全文化を構成する要因として、「報告する文化」「正義の文化」「柔軟な文化」「学習する文化」を挙げ、実用的な手法と改善事例の紹介がなされ、まさに、最も難しいとされる「組織安全への取り組み」のエッセンスに触れた著作である。

組織安全に向けた取り組みがなされる中で、規制緩和、製造物責任法などますます組織としての自己責任が問われる世の中を無事乗り切るためにも本書の思想と提案が役立つものと思われる。

Prof. James T. Reason の経歴

ヒューマンエラーに関する心理学分野での第一人者。 現マンチェスター大学心理学部教授前著「Human Error」は英、独、伊、仏、日の 5カ国語に翻訳されている。 英国心理学会フェロー、米国科学アカデミーメンバー。 1995年、米国ヒューマンファクター学会から Distinguished Foreign Researcher として表彰。


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