読者からの反響 98/08/24 ゆとりある診療環境を
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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ゆとりある診療環境を
M. K. (東京都、産婦人科医)

医者にメスホームページはいつも興味深く拝見しております。 膨大なデーターベースの作成、大変でしょうが、現在の医療の問題点、改善点を考える上で大変参考になります。

私は卒業10年目の産婦人科勤務医です。 私は医療事故の発生する根底に医師の劣悪な勤務条件が関与していると日頃考えております。 とくに夜の当直時間も何回も起こされる産婦人科においては大きな問題です。 医師は看護婦と違い三交代制度がないので、朝出勤して夕方まで外来や手術、検査をこなし、そのまま帰宅せずに当直勤務に入ります。

翌朝まで 1人かせいぜい 2人で責任をもって病棟処置や救急外来、分娩に対応します。 たとえ何もなくても呼ばれる可能性に備えて仮眠しています。 当直が明けてもそのまま夕方までまったく通常通りの勤務をし、ときには手術が長引くなどで帰宅が夜遅くになってしまうこともあります。

すなわち朝家を出てから翌日の夕方まで、35時間以上病院に拘束され長時間連続勤務をしているのが勤務医の普通の姿です。 人間はそんなに長時間注意力が続くものではないのは当然です。 ちょっとした判断ミスだけでなく取り返しのつかない事故も起きても不思議ではありません。

産婦人科は少子化の影響だけでなく、労働環境がよくないため若い医師が参入せず、医師数が減少しています。 卒業後いつまでたっても雑用も減りません。 インフォームドコンセントの重要性も言われていますが、忙しさは患者と話をする時間だけでなく医師の心のゆとりも奪い、患者に優しい気持ちで接することもできなくなってしまいます。

また、産婦人科では女性医師が増えていますが自分の出産育児もままならず不本意にも職場を離れざるを得ない場合も少なくありません。 母児の大切な命を扱う産婦人科医療にもっと若い医師が増えるように、また、家庭持ちの女性医師が経験を生かして同等に働けるように労働環境の整備が急務です。

医師がゆとりをもって診療にのぞむことは医療の安全性、サービスの向上につながります。 勤務条件の改善のなかでまずは当直明けの朝には帰宅し、リフレッシュして翌日の勤務に備えられるようにするべきです。 時間がきたらきちんと引継ぎを行ってすっきりと交代できるようにするべきです。 当直が多いのは分娩施設あたりの医師の数が少ないことによるのであれば施設の統廃合も必要になってくるでしょう。

核家族で家事、育児、仕事をし、夫婦それぞれの当直で夜に二人そろうのは月に半分以下の我が家では、幼い子供が「今日は誰が当直?」と不安そうに毎日尋ねます。 当直のときは子供たちとまる2日以上会えないのもつらいですが、ベビーシッターを手配したり、その間の料理などの家事の段取りも前日は深夜までしているので大変疲れます。

今の仕事はやりがいがあり、何とかやめたくないし、これからの若い世代には同じ苦労を繰り返させたくありません。 私としてはこうした現状を少しでも多くの人、とくに医療関係者以外の方に知ってもらい、事態を改善していく方法を模索していくつもりです。


-- このお手紙に対して、以下のように返事を書きました。

昨年11月に開催したメディオの創立記念シンポジウムの長屋憲氏の講義でも、同様な指摘がありました。 このように考える医師は少数ではないと思います。 なぜ、よい方向に進まないのでしょうか? その理由のひとつに、「勤務医の意見を代表する団体がない」ことがあるのでは? と思います。

開業医主体の日医に任せておいては、「病院の統廃合 (= 医院の廃止・業務縮小)により施設当たりの医師の数を増やす」ことは、実現不能です (日母はどうなんでしょう? やはり日医同様に開業医主体なのでしょうか?)

また医局の問題もありますね。 医局の人事権により、短期間で奴隷のように病院をたらい回しにされるので、「勤務先病院の労働環境をよくしよう」という意欲もそがれます。

まさに飴(そこそこの収入とやりがい)と鞭により、勤務医は、開業医と医局主体のシステムに支配されているのです。 そこを変えないと、今の日本の医療の危ういところは変わらないと思います。

勤務医が団結し、自分たちの意見を代表する団体を作り、医局から自分たちを解放し、病院と医師個人が契約するようなシステムを作れば、勤務医のやる気も出て、医療の質もあがるシステムになると思うのですが、いかがお考えですか?

-- 以上の返事に対して、以下のように返信がありました。


「勤務医の意見を代表する団体がない」ことについては私も大きな問題だと思います。 日母に関してはもっと開業医の利害を代表する団体となっており、私はその趣旨、活動に賛同しないため入会しておりません。

医局制度はどうしていつまでたってもよくなっていかないのか。 慣れたと思ったらもう転勤という人事が研修、勉強の名目で正当化されています。 患者さん側も手術してもらった先生が次に来たときはもう転勤して不在ではフォローアップも受けられず心配になると思います。

最新知識もあり、若くて体力もある勤務医は日本の医療を支えていますが、忙しさを口実に社会全体、医療全体の問題点には関心をあまり持たず、上司が怖く、出世に差し支えることを恐れて言いたいことも言わなくなっています。 老練な開業医、管理職のいうがままです。 でもこのままでは勤務医自身の家庭生活、研究生活だけでなく医療を受ける患者さんへのサービスの低下になることが問題です。

他にも教授選挙の基準、研究に関してなど体験を通して問題を感じていることはいろりろありますので今後ともこのホームページを利用して多くの方と議論させていただきたいと思います。どうぞ宜しくお願いします。


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