読者からの反響 98/07/03 “医者にメス”を読んでの雑感
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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“医者にメス”を読んでの雑感
H.S. (北海道、麻酔科医)

本日、“医者にメス”ホームページを拝見いたしました。 医療裁判を現在の日本で闘うのは大変なことです。 御苦労をお察しいたします。

脳低温療法

さて、我々の病院では脳低温療法を積極的に施行しております。 しかし、脳低温療法は治療法としての保険請求ができません。 以前は、麻酔技術料の低体温麻酔法を拡大解釈して請求していましたが、今年の春から、脳保護を目的とした低体温麻酔法は請求できない、との一文が付け加えられました。 とても、高額な治療法ですので、病院にとって死活問題となります。

また、地方の民間病院ですので、患者さんの状態を自動記録することもできず (大きな病院では可能です) 、臨床工学士のかたに泊まり込み (もちろん主治医も泊まり込み) で、最低30分ごとに手書きで記録してもらってます。 彼らの苦労は並み大抵のものではありません。 しかし、脳低温療法は未だ確立された治療法ではないのも事実です。 一般に確立するまでは、技術はあっても保険請求できないのです。 かといって、自費で請求すると患者さんの御家族が経済的に破綻してしまいます。 厚生省にはもっと現場を考えてもらいたいものです。 (役人は・・・)

ところで、“脳死”についての「私の声」の記事で、脳死と判定されたときに、脳低温療法を求めてみては、との御意見でしたが、これは無理です。 なぜなら、脳死と完全に判定されるまでの時間 (おそらく最短で24〜36時間) を経過してしまうと脳低温療法をしても無駄です。 脳は戻りません (脳死判定が正確ならば) 。 脳死になりそうな患者さんに施行しないとダメなのです。 すなわち、重症の頭部外傷や手術により脳血流の著しい低下が予測される場合、一度心肺停止したもののすぐに (多くみて30分以内) 蘇生された方などです。 残念ながら、なんにでも効くわけではないのです。

日本医師会

日本医師会は開業医さんの利権を守る集団です (と、私は考えています) 。 われわれ、勤務医のことは1%程度しか頭にはないでしょう。 現在の保険制度もその殆どは、開業医さんのためにあるといっても過言ではありません。 技術料をきちんと評価していただきたいと常々考えております。 (特に麻酔関連)

漢方

読者の方の声で、漢方には副作用はない、との記述がありましたが、全くの誤りです。 漢方薬の副作用も多数報告されております。 知らないだけです。 また、‘癌’の手術のお話もありましたが、全く誤認されています。 早期発見された、進行していない癌 (早期癌) は外科的切除で完治します。 例えば、私の母は早期胃癌を早期に発見され、噴門部胃切除+リンパ節郭清を8年4ヶ月前に施行し、健在です。

誤った知識をもったままではかえって危険です。 正しい知識を得るようにしたいものです。 そのためにも「医者にメス」はとても役にたつと思います。

インフォームド・コンセント

これからの医療に必要なのは、医師のモラルと技術力の向上、および、患者さん側の勉強と提供される医療への理解だと考えます。 ところで、当院では予定された手術の時は前日に麻酔の説明書と承諾書、麻酔に関する問診表と麻酔科医の診察記録を作って、一人の患者さんに30分〜60分かけて御家族と御一緒に説明します (麻酔のリスク、合併症を考えられるだけ全て説明しています) 。

しかし、結局出る言葉は“よく説明してくれて有り難いけれども、手術や麻酔のことはよくわからないからおまかせします”。 がっくりします。 私の言葉、説明が悪いのかと、また、一から噛み砕いて説明しても同じです。 お願いですから、これから自分が受ける手術についての最低限の知識を身に付けていただきたいと思います。 知識を得るために必要なことは全て提供しますから。

もうひとつ、以下はあくまで私見です。 一般論ではありません。 癌の治療にあたって、多くの主治医はまず、家族に癌であることを本人に告知するか確認します。 これは、明らかに間違いです。 治療の選択は本人が行うべきです。 本人が知らないのに“インフォームドコンセント”とはいえません。 私はすべての病気について本人に告知するべきであると考えます。


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