読者からの反響 98/03/20 「群盲、象をなでる (3)」
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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群盲、象をなでる (3)
アレルギー疾患治療の標準化
T. M. (愛知県、呼吸器内科・アレルギー科医師)

さて、ここからが本論です。(^^)

またまた引用・・

したり顔に 「病院選びも寿命のうち」 とか 「建物の外観や、食事の内容で病院を選ぶ愚かな患者がいる」 などと言う人がいますが、私たち患者は、 「病院の情報がないから、選びようがない」 のが現実です。
まあ、病院の情報は、そのようですが、治療の正確な情報は、実に簡単に手に入ります。 (入らないと思っているほうが努力不足です。)

さきほど触れた、NHKの特集番組で強調されていたことと、同じことを書いた本が、NHK関連の出版社からも出版されていますし、他にも一般向けに、詳しく書いたまともな本は、手軽に書店で目にすることが出来ます。

実は、呼吸器科医でアレルギー専門医の私も、専門書の理解しづらい記載よりも、上手に書いてあるこれらの本を、診療上、参考にしていることが多いのです。(^^)

(余談ですが、心電図のテキストなどは、医師向けのものが理論ばかりが沢山書いてある上に、やたら難解な表現で書いてあり、しかも分厚く、値段も高いので、看護婦さん向けのバージョンのものに買い替えました。 この方が安いし、わかりやすいし、軽いし、実用的なのです。^^;)

医者も患者も勉強が足りない。 マスコミも、せっかく良質な情報が提供されているのに、こうしたものには目もくれず、とっぴなもの、珍奇なものにばかり飛びつく・・・ (-_-メ)
(青い鳥は足元にいるというのに、どこを見ているんだ!)

それに、良い医者かどうかを見分けるには、ステロイド剤を使うかどうかではなく、ステロイド剤の使い分けが出来る医者かどうかという点を強調すべきだと思います。 (前述のように、使い分け方を質問してみると、医者の技量が簡単に判明します。

「医者にメス」のページもこのあたりに目が行っていないなぁと感じます。


うがった見方かも知れませんが、ステロイド剤が悪者あつかいされている理由が、もうひとつあるように思います。

私の専門の喘息についてです。

10年くらい前から、気管支喘息の治療は、画期的な進歩を遂げました。 吸入ステロイド剤の普及が、その主役です。 経口薬のステロイド剤の100分の1程度の濃度の使用で、経口薬なら40mgくらい使ったと同じくらいの効果を発揮し、体内に入った後は、肝臓を 1回通り抜けることで 90%以上分解されてしまい、ほとんど副作用がありません。

WHOやNIH、日本アレルギー学会でも、気管支粘膜の炎症を抑えて、気道攣縮の悪循環を防ぎ、心臓に負担をきたす気管支拡張剤の吸入の使用を最小限にしてくれるという点から、気管支喘息維持療法上かかすことのできない「維持薬・予防薬」として位置付けられるようになっています。

ところがこれが日本ではいまひとつ、開業医さんレベルでの普及が遅れています。 広報が不十分と言うことも指摘されていますが、それ以前に吸入ステロイドの薬価が、日本にしかないローカルドラッグと世界的には悪評を呼んでいる「抗アレルギー剤」より、はるかに安い点が、ネックになっているのです。

開業医の側としては収益を上げる目的には沿わない。 売っている側の国内製薬メーカーとしては、高い開発費をかけたのだからもっと売りたい。 それに吸入ステロイド剤を出しているメーカーは外資系だから目の敵。

ひそかに、 「なんだかんだいっているけれど、あの吸入も所詮はステロイドなのだから、副作用が多いですよ」 という流言もみられます。 それでいて、副作用が、その何千倍も強いステロイドの注射剤のケナコルトなんかを連用している医者がいるのは、嫌になります。

ちなみに、外資系メーカーには、厚生省からの天下りはほとんどなく、国内メーカーの方には、沢山の天下り。 なんで、同じ1日あたりの薬価に、吸入ステロイドの4倍もの価格をつけたのでしょう。・・・・

対抗する外資系のメーカーからは、そろそろ外圧をかけないといけないという声が出ているとの噂もあります。 (なんでも日本は国内意見より外圧に弱いのだから・・)

日本アレルギー学会の中でも、国内メーカー派と世界派にわかれてしまい、実は日本アレルギー学会の喘息治療指針は、両者を折衷する形となり、WHOやNIHのものに比べると、玉虫色のなんだか良く判らない複雑な記載になっています。 (法律の条文よりわかりにくい表現になってしまったから余計に普及を妨げていると思われます。 (・o・) )

国内派にとっては、ステロイド有害説が、勧善懲悪的、オール・オア・ナッシング式に流されれば、流されるほど売り上げには追い風となります。 したがって、ある程度意図的に、風説を流布し、正確なことがかかれている本については、マスコミで取上げようとしない陰謀がなされているのでは!?

まあ、これは邪推なのかも知れませんが。・・・


実は、私の娘は、立派なアトピー性皮膚炎です。^^; ひどくなれば、やはりステロイド軟膏を使わざるを得ません。 しかし、全くステロイドの副作用は出ていません。

彼女には、再三注意をしていたのにも係わらず、一時期自分かってに無茶苦茶ステロイドを塗ってしまったことがありました。

親のいうことを聞こうとしない、ナイフを振り回してしまう世代のやんちゃ娘ですが、説得すること数日、やっとこさ、わかってくれて、まともな使い方をしてくれるようになりました。 (親の意見より、実はNHKの本をみせた方が、説得力があった・・)

時々、普段のスキンケア(保湿・清潔の維持)をさぼっていると、アトピー性皮膚炎がぶりかえしてきますが、何度か失敗を重ねた後、うまく自己コントロールできるようになりました。 したがってステロイドを使う機会も自然と減ってきています。

自分の娘ですら、このように説得に苦労しますから、短い診療時間で、患者さんにわかってもらうのは、大変なことです。

(ちなみに喘息の初診の患者さんが来ると、その1人への吸入の使い方やら、副作用の説明、上手な薬の使い方の説明をしていると、簡単にしても20分くらいかかってしまい、喘息の初診が3人いようものなら、予約診療が1時間遅れとなる状況です。)

少し脱線ですが・・・
(喘息患者において、ピークフローメーターを用いた日常管理を行うと月 25点=250円 の診療報酬が4月から認められるようになりました。 日本アレルギー学会の働きかけが実ったのですが、肝腎のピークフローメーターは、病院が患者に与え、その経費はこの25点の診療報酬に含まれる、とあるのは、なんともおかしい。 ピークフローメーターは、約4,000円するのですよ。 この購入も保険で機材費として認めてくれなければ、普及が難しい。 投資額を回収するのに2年近くかかって、その間に患者さんが紛失したり破損してしまっては、病院側は赤字になっちゃいますから、普及率があまり上がらないのではと危惧しています。)


「医者にメス」ホームページの記載を見て、今の医療問題に関する議論がかみ合わなくなる現象が起きる典型的な、「縮図」がここに潜んでいるように感じた次第です。

正しい知識を、広めて、医療者と患者が協同して、病と闘える社会を望みます。

マスコミも医療者も患者も、ホームページで情報を提供するものも、争い合う「群盲」ではいけないのです。 様々な視点から、正しい情報を分析できる「知者」となって、協力し合わねばならないように思います。

今度、日本アレルギー学会では、気管支喘息、アトピー性皮膚炎などの治療指針の改定版を出す作業をすすめています。 これが、実りあるもので、皆に判りやすく、社会に広まるものになるように、願ってやみません。 (また玉虫色になってしまうのではと、危惧をしている私ですが・・)


T.M.さんへの返信 (98/ 3/23)

この改定版が出れば、患者も医者も迷いません。 このような医療の標準作りが、 「医療事故の減少」 「(無駄な)医療費の削減」 につながると信じています。 さらに、治療方針の軸が従来の「医局の伝統」からその「標準」にシフトすることにより、医局間の連携や情報交換が求められ、「(悪名高い)医局の解体」へ進むと、日本の「医療の質」は、向上すると思います。


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