読者からの反響 97/08/27 「予防接種」
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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予防接種について
S.M. (愛知県 小児科医)

予防接種については書き始めると際限がなくなるので簡単にしますが、日本は予防接種後進国といわれています。

5年くらい前でしょうか、マスコミがこぞって予防接種の副作用の危険性を取り上げたのは。 それ以来、MMRワクチンは日本では打てなくなり、再びおたふく風邪やはしかが流行するようになっています。 世界の先進国で、はしかやおたふく風邪が集団ではやる国があるでしょうか。

冬に麻疹(はしか)脳炎で、ひとり重大な後遺症を残した小学生がうちの病院でもいました。 正確な数字ではありませんが麻疹で死亡する小児は、毎年全国で数十人近くいるはずです。 おたふく風邪による髄膜炎の子も、この半年間、とぎれなく入院しています。

ポリオも、世界中のほとんどの国が3回以上の接種であるのに対して、日本だけは2回。 2回では3種類の型のポリオウィルスに十分の免疫はつかないことは周知の事実です。 30年間一人も発生していないのだから接種しなくてもいいのではと尋ねられることがありますが、隣の中国では、一人っ子政策の為の無戸籍の子がいるためもあり(つまり予防接種を受けていない)ポリオが発生していて、交流が盛んな昨今、日本で発生するのは時間の問題ともいわれています。

厚生省も、誰かひとり発生するまでは3回にしないでしょう。 ポリオは発症したら治療方法はありません。

最近、海外へ転勤する人が増えてきて、子供が現地の小学校に入学の時に、MMRとポリオ3回接種の証明を求められて困って相談に来ます。 アメリカではそれらがすんでいないと入学が許可されません。 世界各国でいかに予防接種がしっかりと行われているかは以下のアドレスを見ていただけるとおわかりになると思います。 なぜ日本だけ大きく違うのか考えるきっかけになればと思います。

http://www.mcfh.co.jp/immun-world.html
先進国、発展途上国を問わず、接種の時期が早いのがわかると思います。

3種混合もポリオもほとんど生後半年以内に始めます。 日本は1歳過ぎのところがほとんどです。 私の子供もポリオは3回飲ませていますし、3種混合も早くやっています。 小児科医は、実際に罹った患者をたくさん診ているので、予防接種の効果を身にしみて感じています。

副作用の危険をアピールして副作用を減らす努力をすることは極めて大切なことですが、接種を勧めないこと、予防接種の有効性を無視することとは同じではありません。

昔からある病気だから自然に感染して免疫をつければいいという医師もいるではないかと反論されそうですが、そう言う小児科医は、マスコミによく登場する一人の医師以外に私は知りません。 おそらく99%以上の小児科医は予防接種推進の立場だと思います。 一旦マスコミに出ると、医師の中にも意見が分かれているような印象をうけますが、自分の知る限り予防接種不要を言う小児科医はいません。

確かに自然感染で100人死んでも訴訟にはなりませんが、予防接種で1人死んだら大問題になります。 前者は記事になりませんが、後者は格好の記事になります。 そこを解決しながら進むのが厚生行政であるはずなのに、マスコミが何も言わないのをいいことに問題を先送りしている現状は憂うべきものがあります。

そのうちにアメリカから要感染注意地域のレッテルを張られてしまいます。 この現状に対して働きかけをしない(少なくともしているようには伝わってこない)小児科の学会団体も問題です。

こと予防接種に関しては、数年前までマスコミは世の中の予防接種率を低め、そのために失われた人命もあります。 昨年流行したインフルエンザも、その数年前にマスコミが予防接種不要という論調の記事を多く報道したために接種者が減り、かなり死者が出ました。

予防接種に関する薬務行政や製薬会社の治験の不透明さといった社会的問題と医学的問題を同レベルで論じられて予防接種への不信が高まってしまったようです。 社会的な問題を起こした医師や製薬会社にももちろん責任があります。 医学に携わるものは、常に潔癖で科学的でなければならないでしょう。


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