医療過誤裁判 私の場合 原告 妻 陳述書 6
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

医者にメス 私の場合 インデックス 前ページ 次ページ

1999年 11月 10日
甲第 26号証 原告 妻 陳述書 6

6. 血が止まらない

夕方の 5時には手術が終わって逢えるということでしたので、無事にすむことを願って心の中で祈り続けました。 その時間の何と長いこと……。 でも 5時になっても音沙汰なし。 待つ私より 「きっと主人は今、大変な時なのだから、先生の邪魔をしてはいけない。 あそこに電話があるけれど……!!」 と何度も何度も思っては自分をなだめ待ちました。

7時半頃ようやく 「●●さん」 と声がかかり、 「アア終わった!!」 と思って、入り口に急ぎましたら、背が高い先生が 「今手術が終わりました。 縫合してから逢えますからね」 と言い、切り取った小さな三角の肝臓を 2つ割りにしたものを見せてくれました。 それは周りが黒焦げの割面に黄色の 5mm か 7mm 点状のものがあり、 「あれが癌?」 と思えるものを確認しました。 「終わったんですね。 ありがとうございました」 と頭を下げ、感謝しました。 この時腹腔鏡では手術が不可能になり、開腹しましたと告げられました。 廊下に出て、 「後 30分で逢えるよ」 と、娘に告げました。 娘は身重で 8ヵ月でした。

でも 7時半を過ぎても 8時、9時、10時を過ぎても主人は出てきません。 恐ろしく長い長い時間でした。

10時半、 「生血 (なまち) を集めて下さい」 と、突然告げられ、 「アアッ、出血だったんだ!!」 と、体も心も震え、ガタガタと立っていられなくなりました。 が、頭の中がグルグル廻り、 「お父さんが大変大変。 このままでは死んでしまう。 お隣近所に頼んでO型の血液をもらわなくちゃ。 電話をかけなければ!!」 と思いましたが、立っていられなくて床に膝をついたままでカードを入れ、ダイアルするのですけど、ガタガタつまずいてうまくかかりません。 体の芯の震えが止まらないのです。 でも何度目かに両隣がO型ですと、来てくださることになり、主人のゴルフの会の役員や自治会長に事情を叫ぶように話して、 「O型の血液をすぐ欲しい。 お父さんを助けて!! 5人分でも 10人分でもさがして!! 頼んで!!」 と頼みまくりました。

恐ろしい夢のような現実でした。 主人の昔の職場の方たちなど、頭に浮かぶところ全部に掛け続けました。 家は車ですと15分くらいの距離ですので、続々人が集まります。 息子がO型ですので、最初に採血して輸血に備え、来てくれた人たちのリストを作りました。 それなのに検査票を書く人も採血した試験管に名前を書く人もなく、看護婦さん1人がいるだけで間違いが起きては困ると思い、息子、娘、息子の妻それぞれ手伝わせ、また血を下さる方たちの都合のよい時間帯を朝・昼・晩・常時とわけて時間割表を作りました。 「血を集めることで主人が助かるなら、何百人分でも集めますから助けてください」 と、そのときいらした看護婦さんに言いました。 私の住む団地では、夜が明けるのを待って全戸放送をしてくれました。 本当にたくさんの方たちが、家族ぐるみで 「娘が O型だから役立てて」 など言ってきてくれました。

16日午前 1時45分集中治療室へ入ってくださいと言われました。 夜も冷えてきて娘の体にさわって具合が悪くなっては困ると思い、息子に車で家に送らせて帰らせたときだったので、息子はいませんでした。 輸血のおかげでよい状態で逢えると思って敬子と集中治療室に入室しました。 K医師と話し始めると直に息子も入室してきました。 先生のお話が、言い訳のように聞こえるだけで、内心 「脂肪が多いのは外から見ただけでも分かるはず」 「手術がしづらかったなんて」 「どういうことなの!?」 と心の中で驚いていました。

K医師の 「出血が中々おさまらないのでタオルで圧迫止血を試みてます」 の言葉に頭の中がガーンと真っ白になるほどショックを受けました。 「エッ、圧迫止血ですか!?」 と私の口から言葉が飛び出していました。 手足のけがで圧迫止血という状態は理解でき想像もできますが、内臓の圧迫止血はそれまで聞いたことがない。 ましてタオルとは!? 私には理解できず先生が言い違えたのではないかと思ったほどです。

恐ろしくて現在の主人の状態を早く知りたいのに直接的な言葉で聞くことができません。 「主人は●●の人ですので兄弟が遠くに居ります。 すぐ知らせた方がよいのでしょうか」 と尋ねることで現状を知ろうとしました。 「大丈夫ですよと言って!?」 と願いながら……。 なのに 「知らせてください」 と言われ、体の力が抜けて崩れそうでした。 「何んで!」 あんなに明るく笑っていたのに……。 「止血ができないなんて!!」 「先生は外科医なら切ったものはつないでよ!!」 と頭の中が叫び声で一杯でした。

その後どうやって集中治療室の主人のベッドまで行ったか覚えていません。 主人の姿を見たとき私は体の具合が急に悪くなり、床に座りこんで「ゲーゲー」と吐気が来ました。 が、胃液が出るだけでした。 昼から水一杯飲んでいなかったので出るものはありません。 ガタガタ震えが止まりません。 しかし 「倒れてなんかいられない。 何かしなくちゃ」 と思いました。 身重な娘が一緒にそばにいなかったのは幸いだったと思いました。

続く


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