医療過誤裁判 私の場合 被告医師反対尋問 5
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

医者にメス 私の場合 インデックス 前ページ 次ページ

1999年 9月 30日
第 8回口頭弁論 被告医師 反対尋問 5

エタノール注入療法の適応について
エタノール注入療法を選択していれば DIC になる危険はなかった


一般的なことを伺いますが、肝硬変を合併する肝癌の切除術を念頭に置いていただきたいんですが、大体どの程度の出血量であれば腹腔鏡下でも安全に手術が行えるというふうに思われてましたか。
… 出血量としては 1,000cc 以下だと思います。
一般の肝癌の場合はどうですか。
一般の肝癌ですと … 肝硬変合併ということですか。
肝硬変合併の場合が 1,000 以下ですね。
ええ。
一般の場合はどうですか。
肝硬変を合併してない肝癌ですか。
はい。
肝硬変を合併してない肝癌ですと、例えば 5,000cc ぐらい出ても危険はそれほどないと思います。
ところが、肝硬変だと 1,000 ですか。
肝硬変を合併した肝癌で、腹腔鏡の場合ですね。
腹腔鏡の場合だと、1,000 を超えるとやはり危険になると。
はい、そう思います。
本件の場合、術前に大体どのくらいで収まるというふうに予想されてましたか。
500cc 以下。
もし開腹手術を本件の症例でやっていた場合、出血量としてはどのくらいを予想されておりましたか。
開腹手術ですと、やはり 1,000cc ぐらいだったと思います。
開腹手術だと出血量が多くなるわけですね。
多分多くなると思います。
今回の場合 1,700 ほど出血が出てるようなんですが、これは大量出血ではないにしても、かなり肝硬変の患者にとっては負担というか、危険な量という理解でいいわけですか。
はい。
今回、証人はエタノール注入療法は考えられてなかったですね。
はい。
その理由として、2cm 以下の小肝癌が適応だというようなことが書かれているんですが、それは間違いないですか。
そういうふうに理解しています。
今回の術前では、大体直径何センチの肝癌だという理解でしたか。
最初は内科の診療では 2.1cm ということでした。
前回の証言ですと、直径が CT で 3cm というような証言をされてますね。
はい。 直前の CT ですと 3cm くらいというふうに判断しました。
ただ CT というのは文字どおり癌を撮るんではなくて、癌の周辺にある血管ですかね、血管に流れる造影剤が写るということはないですか。
やっぱり癌が写ると思います。
だけど若干本来の癌よりも大きめに写るということは、ある意味、常識じゃないですか。
… いや … 小さめに写ることはあっても大きめに写ることは余りないと思います。
(乙第 15号証を示す)
先ほどの乙第 15号証の (16)-1 の病理解剖図を見ますと、直径 2cm と 1.8cm になってますね。 そうすると大きめに写ることはないという証言と矛盾しませんか。
……… 矛盾するともしないとも言えないと思いますけれども。
仮に 3cm 現実にも直径があったと仮定した場合、そうした場合、エタノール注入療法の適応を欠くということは一般的な理解ですか。
適応は施設によってかなり違う場合がありますので、3cm でもやるという施設があると思います。 ただし、エタノール注入療法の場合には、手術が適応とならない場合に選択される治療ですので … 手術できる場合には手術が第一選択になると思います。
それは、いわゆる市立半田病院での理解であって、それは全国共通の認識ですか。
最も一般的な認識だと思います。
(甲第 17号証を示す)
これは本件とは若干事実関係が違いますけれども、やはり肝癌の手術の医療裁判で●●先生という方が鑑定された鑑定書なんですけれども、この 3ページ目の中段辺り、 「直径 3cm 程度の肝癌の治療法は、手術だけではありません。 例えば体外から針を刺して、肝癌の内外にエタノールを注入する方法もあり、5年生存率が手術のそれと異なる証拠はありません。」 と書かれていますけれども、エタノール注入療法は、この記述によれば手術だけではないと、手術と選択的に考慮されるべき治療法と書かれているんですけれども、この記述は間違いですか。
…… 治療成績としてはやはり手術が一番いいという例でもありますので、切除できる場合には切除するのが一番確実な方法だと思います。
(乙第 8号証を示す)
これは被告から出てきた日本肝癌研究会の追跡調査ということなんですが、これは京都大学の医学部の先生方が書かれた論文ですね。
はい。
535 というページによりますと、エタノール注入療法、2cm から 3cm でもやはりやってますよね。
はい。
そうしますと、3cm でも当然適応は認められるわけですね、エタノール注入療法は。
はい。 治療成績が 3cm 近くになりますと非常に悪くなると思います。 というのは、注入しても癌を全部殺すことができなくなる可能性が高くなりますので、そういうのは、例えば何回もやるとか、やっても余り治療成績が変わらないとかいうことで、3cm 近くでやる場合は恐らく手術ができない患者ではないかと思います。
あなたの今の認識で結構ですが、5年生存率はエタノール注入療法と、手術をやった場合と、どのくらいの違いだという認識ですか。
エタノール注入とですか。
エタノール注入療法をやった場合、生存率は何% だというふうな理解ですか。
5年生存率は …… 恐らく 20% 台だと思います。 肝硬変がある場合ですよ。
手術をやった場合は。
手術をやった場合は …… まあ 40% 台。
仮に治療成績が、証人のような理解が一つの展開に成り立ち得ると仮定した場合でも、安全性について比較した場合にはどういった評価になりますか。
エタノール注入療法をやってませんので危険性についてははっきりとは分かりませんが、恐らくエタノール注入療法のほうが安全だと思います。
(甲第 17号証を示す)
3ページの中段辺りに、エタノール注入療法についてですけど、手術とは違って治療による死亡がないことも有利な点であるというようなことが書かれているんですが、エタノール注入療法で死亡するという危険はまずないわけですね。
聞いたことはないです。
エタノール注入療法で今回のように出血が多量になっちゃうとか、あるいは DIC が発生するというような危険性もないわけですね。
…… ないかと言われると、かなり特殊な施設で大きいのもやってますので、5cm とかいう症例もやったという報告がありますので。
だって 3cm だともう適応がないという御理解でしょう。
ええ。
今回の症例を念頭に置いて言っていただきたいんですが、今回、2cm から 3cm だという前提でエタノール注入療法を選択した場合に DIC になる可能性はあったんですか。
危険はまずないと思います。

続く


医者にメス 私の場合 インデックス 前ページ 次ページ