医療過誤裁判 私の場合 被告医師主尋問 2-5
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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1999年 6月 17日
第 7回口頭弁論 被告医師 主尋問 2-5

死因は播種性血管内凝固症候群 (DIC)
1,767ml の出血で DIC を起こすことは予測できなかった


●●さんの死亡原因のことについて伺っておきますが、
(甲第 4号証を示す)
この死亡診断書は、あなたがお書きになったものだということでいいですか。
はい。
直接死因というところを見ますと、術後肝不全、術後腎不全という病名が挙がってますね。
はい。
これは先ほどおっしゃった尿が出なくなったとか、あるいは肝機能検査の GOT、GPT の値が非常に高かったということを指しておっしゃるわけですね。
はい。
その下に、その原因として、肝切除術術後出血という病名が記載されているんですが、この肝切除術というのはどの時点の手術のことを言うんですか。
最初の腹腔鏡下の手術から開腹に変更になった手術のことです。
最初の肝切除術の術後出血があって、どういう経過で術後肝不全あるいは術後腎不全に至ったかという点についてはあなたはどう考えていますか。
肝不全になった原因ということですか。
ええ。
肝切除術によって出血が起きまして、その時点で出血が止まりにくい状態になりました。 それを DIC というふうに言うんですが、日本語で言いますと播種性血管内凝固症候群と言うんですけど、この状態は血が固まりにくいと同時に血が臓器の中で固まったりして、凝固と凝固が溶ける状態が繰り返し起きる病態で、これが起きると臓器の血流が非常に悪くなります。 そのために肝臓の血流と腎臓の血流が悪くなって、肝不全と腎不全が起きたというふうに考えています。
乙第 28号証の陳述書の 19ページの最終行から 20ページにかけての記述ですが、 「●●殿の死因は、肝切除術後に播種性血管内凝固症候群 (DIC) を併発し、そのため多臓器不全、特に肝不全を合併したことに求められる」 と記載していますが、今の説明はこのことを言うんでしょうか。
はい。
同じ陳述書の 21ページの 3で、あなた御自身が文献を引用しての DIC の説明をしているんですが、先ほど証言されたのは、ここに書いてあることを平たくおっしゃったというふうに理解すればいいんですか。
はい。
●●さんが DIC だったということの根拠なんですけれども、あなたの陳述書の 20ページの 3行目から 21行目辺りまでに書いてあるところを見ますと、要するに、血液が再開腹時にしゃびしゃびの状態で固まりにくかったということと、それからもう一つは、生血の凝固能が改善されたという臨床経過から見た根拠付けがなされているんですが、これはこのとおりでいいんですか。
はい、そうです。
あなたとしては、●●さんに DIC が発症したというのであれば、その発症した時点はどの時点だというふうに把握してますか。
最初の手術が終わって、トレンジャーの出血がありまして、再開腹術に移ったところのどこかの点かだと思います。
そういうお考えでいきますと、いずれにしても●●さんが DIC だとすれば、それを引き起こしたきっかけというのは、最初の手術のときの出血だと、こういうことになるんじゃないんですか。
そうです。
前回以来お伺いしておるところによりますと、第 1回の腹腔鏡下の手術とその後に施行した開腹手術、その一連の出血量は合計で 1,767ml だということでしたね。
はい。
そうすると、この 1,767ml の出血が引き金というのか誘因になって DIC を発症したことになると、こういうお考えなんですね。
はい。
一般に、外科手術に伴う出血量は、この 1,767ml というのはどう見ればいいんでしょうか。
大きな手術の場合には数千cc の出血が見られまして、そういうのは大量出血と言うんですけど、1,700cc 程度の出血というのは、大量とは普通は言わないです。 ですから中等量の出血ということになります。 肝臓を切る場合に、もっと大きな、例えば右半分を切る手術といった場合ですと、平均的な出血量は 1,000cc は超えますので、肝臓の大きな手術としてはこれくらいの出血は常にある出血だと思います。
前回もお聞きしたように、術前に肝の予備能といいますか、その他の検査をやって、その検査値からいけば、●●さんの場合、手術は乗り越えられるだろうというあなたの予測だったということですね。
はい。
術前の検査値から見て、1,767ml という量の出血が誘因といいますか、引き金になって DIC を起こすということは、あなたは全く予測しませんでしたか。
1,700cc で DIC を起こすとは考えていませんでした。 出血量の予測は分かりませんけれども、術前に例えば 1,700cc の出血があったらどうですかと聞かれた場合には、1,700cc の出血では DIC 起きないだろうというふうに考えます。
今ちょっと話が出たように、この●●さんの手術に取りかかる前に、どの程度の出血量になるのかという予測だとか、あるいはどの程度までなら術前検査から見て許容できるとかいう具体的なお考えというのはお持ちだったんでしょうか。
当初腹腔鏡下の手術を予定しまして、その場合ですと出血量は 500cc 以下ぐらいだというふうに考えてました。
だから、思ったとおりにはいかなくて、本件のように出血量が多くなってしまうということも予測できないことではないと思うんですが、そういう場合にどの程度までならいけるだろうとか具体的な予測をお持ちになっていたかどうか、そのあたりはどうでしょうか。
一般論になりますけれども、肝硬変のある患者さんで肝手術をする場合には、出血量が増えますと、術後肝不全の可能性が高くなりますので、具体的な数字はないんですけれども、大体 2,000cc 以下の出血に 2,000cc を超えると術後合併症が増えるというふうに考えております。

続く


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