医療過誤裁判 私の場合 被告医師主尋問 1-4
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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1999年 4月 15日
第 6回口頭弁論 被告医師 主尋問 1-4

腹腔鏡下手術の適応
確立されているとは言えないが有力な治療 東海地方では例なし


その次に、肝切除術を選択するとして、開腹によって肝切除術をやるのか腹腔鏡下で肝切除術をやるのかという点について、あなたは結果的には腹腔鏡下の方を選んだわけですけれども、この腹腔鏡下の肝切除術については、この●●さんの手術をやった当時、治療法としてどのように言われていたか、その点のあなたのお考えというか認識をお聞きしたいんですが。
学会で発表ないし論文も出ていまして、患者に与える侵襲が少なくて、術後経過も、開腹術に比べると良好であるというふうに理解していました。
肝切除術も一つの治療法として、当時、既に医学会の間で確立していたというような治療法だと評価できたんでしょうか。
確立という表現は、ちょっとどうか言えませんけれども、有力な治療として注目されていたと思います。
例えば愛知県内ですとか東海地方だとか、そういう地域に限って言うと、腹腔鏡下で肝切除術を実施しているというような医療機関はあるのかどうか、その辺りはどうだったんでしょうか。
ほかでやっているという話は聞いたことはない。 東海地方では、ないです。
今あなたは、有力な治療法として認められつつあるというような言い方をなさったんですが、腹腔鏡下の肝切除術をやるにはそれ相応の適応の条件があると思うんですけれども、その点については当時どのように認識しておりましたか。
まず、腫瘍の存在部位が、肝外側区というところか、あるいは区域の 5、6、7の辺縁に存在する、大きさはそれほど大きくないものという、まあ場所と大きさからは適応になると思います。 あと腹腔鏡の手術ですので、上腹部の手術の既応がある場合には癒着があって、そういう場合には難しくなるというふうにも考えております。
癌の臨床病期としては何期までが適応だと考えていたんですか。
開腹術の肝切除術と変わることはなくて、やはり臨床病期は I か II という病期が適応になると思います。
ほかに、腫瘤のある深さといいますか、それについてはどう考えておりましたか。
肝臓の深いところに、深部にある腫瘤は適応にならないと思います。 表面に近いところにあるものが適応になると思います。
(甲第 7号証を示す)
これは千葉大学医学部第 2外科の方が書かれた 1994年 2月に発表された文献ですけれども、これは●●さんの手術をやる前に目を通されたことがありますか。
はい。
48ページの一番下の欄 (5) を見てください。 先ほどあなたがおっしゃった腹腔鏡下の肝切除術の適応がそこに記載されておりますけれども、あなたの理解もそれと同じだということでいいですか。
はい。
そこの中の一つに、患者さんの重篤な合併症がないことという記載がありますね。
はい。
肝硬変をもっている患者さんは重篤な合併症を持っているということになるのかならないのか、そのあたりの判断はいかがですか。
「肝機能の面では臨床病期 I 〜 II」という表現がありますので、これは肝硬変の患者を対象にした表現ですので、肝硬変以外の重篤な合併症という意味になります。
とあなたは理解するわけですか。
そうです。
肝硬変の有る無しということは、術前の肝機能のチェックで一応は出されるというふうに考えていいわけですか。
肝機能検査と、あと、レントゲンなどの形態学的検査。
肝硬変の重症度というのは、やはり肝機能検査の結果を中心に見ていくということになりますか。
はい。
あなたは当時、開腹によって肝切除術を行う場合と腹腔鏡下で肝切除術を行う場合を比較して、術前の肝機能検査はどちらがシビアに適応されるというふうに考えておりましたか。
同等だと思います。
(乙第 2号証を示す)
983ページの右の欄の下のほうに適応という欄がありましていろいろ書いてあるんですが、ずっと下のほうへ行くと 「全身的評価では他の腹腔鏡下手術と同様に考えてよく、開腹下肝切除術よりハイリスク例でも施行可能と考えている」 というふうにこの報告の筆者は書いておるんですけれども、この点についてあなたはどうお考えですか。
開腹下に肝切除術を行いますと、一つは、この筆者の意図するところを考えるわけですけれども、開腹術そのものが皮膚を開いて、おなかの中の筋肉を切って、腹膜を開いて、要するに開腹をしてやるということがかなりの侵襲になるんです。 特に肝硬変のある場合には拡張した血管が腹壁に見られることがありまして、それで出血が増えたり、あるいはそれが術後の腹水の元になったりしますので、そのことがない分だけ侵襲が少ないために、肝機能のより厳しい症例でも可能だという意味で言っているのだと思います。
あなた自身は腹腔鏡下のほうが開腹による肝切除術よりハイリスク例でも行けると、そこまでは考えていないわけですか。
そこまでは、その時点では 2例目ですのでそういうふうには考えていなかったです。
この文献はこの手術が終わった以後に出たものなんですけれども、ちょっと文献の理解の仕方についてあなたの見解をお聞きするんですが、984ページの一番下の表というところを御覧になってください。 この表で、横の欄の I II III という臨床病期という欄がありますけれども、この臨床病期というのは何の臨床病期のことを言ってるんでしょうか。
肝硬変の進行度です。
癌の進行度とは関係ないんですね。
関係ないです。
ちなみに、この表で行くと●●さんの術前の肝硬変の臨床病期は I II III のどれに当てはまるんでしょうか。
II です。
結局、●●さんの場合は腫瘤の位置は S6 のどの辺りになるんですか。
辺縁部です。
腫瘤の大きさ、腫瘍の大きさといいますか、それは先ほどの話で直径が約 2.1センチということですね。
超音波上は 2.1センチです。
その腫瘍のある位置はどうだったんでしょうか、浅さというのか。
比較的表面に近いところにありました。
癌の臨床病期で言うと何期だったわけですか。
ステージ 2です。
重篤な合併症が有るか無いかについてはどのような判断でしたか。
肝硬変以外の重篤な合併症は無いと考えていました。
上腹部の手術の既応はどうですか。
ありません。
あなたが当時知っていた腹腔鏡下の肝切除術の適応から言うと、●●さんの場合はそれに当てはまると、こういうことになるわけですか。
はい。

続く


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