医療過誤裁判 私の場合 被告医師主尋問 1-3
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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1999年 4月 15日
第 6回口頭弁論 被告医師 主尋問 1-3

肝切除術の適応
肝動脈塞栓療法・エタノール注入法・内視鏡下マイクロ凝固壊死療法との比較


それから陳述書の 5ページの真ん中以降ですが、あなたが腹腔鏡下の肝切除術を選択した理由が述べられておりますけれども、まずあなたが外来で●●さんを御覧になった平成 7年 6月 6日の時点で分かっていた肝機能の検査値は、その陳述書の 5ページから 6ページにかけて書いてあるとおりだということでよろしいですね。
はい。
その中で、5ページの最後の行から 6ページの最初の行、総ビリルビンの値の単位が、そこにはミリリットルパーデシリットルと書いてありますが、これはミリグラムパーデシリットルの間違いじゃないでしょうか。
はい、間違いです。
この外来で御覧になった時点で分かってた肝機能の検査は、あなたの評価では、中等度、肝機能が低下しているという判断になるんですか。
はい。
この陳述書の 6ページの真ん中ころを見ますと、あなたは、●●さんの場合には肝全体の 8分の 1程度を切除する亜区域切除術で済むので、一般的な手術適応基準に照らしても手術は可能であるというふうに、この肝機能検査の結果で判断したとありますね。
(うなずく)
一般に 8分の 1程度の切除で済む場合の肝機能検査の数値というのは資料を見ずにお答えができますか。
はい、おおよそ。
おおよそ、じゃあおっしゃってください。
ICG の R15分値という検査があるんですけれども、その検査ですと、いろんな文献で値が違うんですけれども、30 から 40% 以下であれば亜区域切除は可能と。 それからビリルビンなんですけれども、これが 2.0 以下であるということですね。 あと、さっき言った ICG の R15分値が 30 から 20% 以下。 それからアルブミンが 3.0以上と。 それからプロトロンビンタイムが 50% 以上あればいいと。
コリンエステラーゼについてはどのように。
今の値とこのときの値とはちょっと違うんですけれども、ちょっと測定方法が違うもんですから単位が違ってくるんですけれども、このときの値で言いますと、やはり 0.3 以上であればいいと思います。 δPH 0.3 以上。
(乙第 27号証を示す)
714ページというページですが、今のお答えを前提にして、右の欄の下のほうには、この文献をお書きになった著者の教室では Child分類と言うんですか、これを基本にして、 「血清アルブミン、コリンエステラーゼ、プロトロンビン時間、ICG15分値、総ビリルビンを総合的に評価して切除術式を決めている」 というふうに書いてあって、表 V-88 という表が引用されているんですが、それが次の 715ページというページの一番上に出ておりますね。
はい。
まず表の説明をしていただくことが必要なんですけれども、肝予備能の検査項目という横の欄で、「≧2、1、S、0」と、この 4つの肝切除区域数の分類がなされておるんですが、まずこの「≧2」というのはどういうことを意味するんでしょうか。
肝臓は大きく分けて 4つの区域から出来ていまして、2区域以上を採るのが ≧2 です。 それから 1というのは 1区域を採る。 それから Sというのは 8分の 1程度の亜区域を採ると。 0というのは部分切除と。
そうすると、あなたが●●さんに対してやろうとした肝切除術は、今の分類から行くと Sに入るんですか。
S ということを目指すんですけれども、どうしても、実際には 0になることが多いんですけれども、部分切除ということになると思います。
あなたの陳述書の記載によると、肝全体の 8分の 1程度を切除すると、こういうことが記載されておりますので、それを基にすれば、この Sという分類に該当するということになるんじゃないですか。
亜区域切除は Sです。
その Sという欄を見ていきますと、ICG の R15分値が 20 ないし 25というふうに記載されているんですが、●●さんの場合、外来時点で分かってた検査値は 25% ですか。
はい。
ぎりぎりいっぱいはまるということになりますか。
はい。
コリンエステラーゼが 100 ないし 120 とこの文献には出ているんですけれども、あなたの病院での検査値の単位とこの文献での検査値の単位は違っているようですね。
はい。
あなたのほうの病院での検査値の単位は何と読めばいいんですか。
δPH。
そういう検査値で 0.35 という数値が出ているようですが、この文献で行きますと単位が IU パーミリリットルになっておるんですが、これの換算は簡単にできますか。
換算表はありませんので、ただ今うちの病院では両方の測定をしてます。 δPH と IU パーミリリットルで、それぞれの正常値で換算すると 0.35 δPH は 100 から 120 の間に入ってくると思います。
もしそうであるとすれば、コリンエステラーゼの検査値も、Sという切除術式の適応の範囲に入ってくるわけですね。
はい。
それからこの文献のアルブミンの値は 3.0 から 3.5 ですか、Sの場合。
はい。
これに対して●●さんの場合は 3.2 だったわけですね。
はい。
ですからこれも一応、条件の範囲内に入ってくるということになりますか。
はい。
総ビリルビンの値ですけれども、●●さんの場合は 1.4 だったわけですね。
はい。
ここでは 2.0 ないし 2.5 が Sという切除術の場合の数値の範囲になっておりますが、これはどう見ればいいんですか。 1.4 というのは 2.0 よりももっと数値が低いから、もっとたくさん切除する術式の適応にもなるということになりますか。
いろんなデータ、必ずしも縦に並びませんので、ビリルビンに関して言えば、ほかの項目よりも良好ということになります。
それからプロトロンビン時間は 60 ないし 70% になっているので、これもこの範囲よりはやや数値は多いわけですね、文献の数値よりは。
はい。
もう少しいい条件だと、こういうことになりますか。
そうですね。
あなたが●●さんの肝切除術をやろうというふうになったときは、当然、今文献で示したようなおよそのデータというのは検討されて決めたことになるのか、頭に入ってて決めたことになるのか、それはどうですか。
頭に入ってて決めたということになります。
陳述書の 11ページの 3行目から 7行目まで、ここには平成 7年 (1995年) 6月 12日、それから 6月 14日に実施した、外科へ転科してからの検査値が挙がっておりますけれども、この検査値を見て、先ほどの肝切除術は可能だという判断に依然として変化がなかったかどうか、その辺りの見解をおっしゃっていただきたいんですが。
変化はありません。
(乙第 11号証を示す)
31 の 2ページ、1995年ですから平成 7年になると思うんですが、平成 7年の 5月 29日の時点の血液検査の報告書がありますね。
はい。
血小板、plat の数が 6.7万という値が出てて、右のほうを見ると、正常値は 12万ないし 30万となってますね。
はい。
(乙第 15号証を示す)
更に今度は 19の 10ページの外科の診療録ですが、平成 7年 6月 12日、これで見ますと血小板の数は平成 7年 6月 12日の検査では 4.7万ということになってますね。
はい。
肝機能検査以外の血小板の検査値については、あなたの判断はどうだったんでしょうか。
…… 肝硬変がありますと脾臓が腫れるために血小板の数が低下しますので、血小板の低下は肝硬変に伴う脾臓、脾腫のためです。 6.7万から 4.7万に下がったということの説明はできませんけれども、1つは人間の体の中で変動するものであるということと、ちょっとした採血で血が固まったりするときに下がったりしますので、多く出ることはありませんけれども、出ることはあるというふうに考えています。
そういう術前の数値が肝切除をやる場合の適応といいますか、やってもいいかどうかという判断にはどう影響したということになりますか。
血小板の数だけでは肝切除術ができるできないの判断にはならないです。 血小板は、肝硬変になる場合にはほぼ全例下がってますので。
こういう術前の 4.7万という数値でも肝切除術は乗り切れるというのがあなたの判断だということになるわけですか。
はい。
それから肝切除術以外の肝動脈塞栓療法、いわゆる TAE というもの、それとエタノール注入法、これは PEIT ですか。
はい。 ペイトです。
それから内視鏡下のマイクロ凝固壊死療法というような治療法があるということで、あなたがこういった治療法を選択しなかった理由なんですけれども、まず TAE についてはどのようにお考えですか。
TAE という治療は手術ができない場合に行う治療で、TAE では癌を治すことはできずに、延命ですので、この場合には手術療法が適当というふうに考えました。
PEIT についてはいかがでしょうか。
PEIT もやはり手術ができない場合にやる治療法で、PEIT より切除術のほうが生存率が良好なため、切除術を選択しました。
PEIT の場合は対象となる腫瘤の大きさが限定されると、こういうことはありませんか。
あります。
どの程度の大きさまでだというふうに理解していますか。
PEIT をやったことがないもんですから、文献的には 2センチ以下というように記憶しております。
今お聞きした TAE と PEIT の場合は、もしこれを用いるとすれば、どの科でやるということになりますか。
一般的には内科です。
それから内視鏡マイクロ波凝固壊死療法と。 この療法については、当時どのようにお考えでしたか。
まず専用のそういう道具が必要です。 それで実際に、その当時やられてる施設としては全国でも 10ヵ所はないと思うんですけれども、ですから当時、一般的な治療ではない治療です。 半田病院にもその道具はありませんし、その方法は考えませんでした。

続く


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