医療過誤裁判 私の場合 準備期日 (3)
最終更新日: 2002年09月16日、 アクセスした日: 12月14日

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1998年 9月 25日
被告主張の矛盾を指摘

平成 10年 9月 25日 原告ら訴訟代理人弁護士
名古屋地方裁判所 民事第 5部合議係 御中

準備書面 (2)

この準備書面では、被告らの平成 10年 7月 17日付準備書面の主張について、反論する。

  1. 亡 Sの死因が、出血性ショック、肝不全、腎不全であることについては、当事者間に争いがない。

  2. 被告らは、肝不全が合併した理由として、

    1. 肝硬変合併肝癌であったため、肝予備能が低下していたこと
    2. 術後に DIC (播種性血管内凝固症候群) を併発し、術後出血を起こしたため、血圧が低下した状態が続き、肝臓の臓器血流が減少し、肝臓の虚血が起きたこと

    の2つをあげ、特に、DIC の発症を術前に予測できなかったと主張する。

  3. しかし、被告らの右主張は、次の点において明らかに矛盾がある。

    1. 本件手術に関するカルテ (乙第 15号証) には、被告 K医師が DIC の発症を認めたことを窺わせる記述はない。

      被告らは、右準備書面において、6月 15日本件手術後の術後出血に対する再開腹手術時に、DIC が発症したものと主張している (同準備書面第 3項)。

      しかしながら、6月 16日 (本件肝切除手術の翌日) の再々開腹手術の手術記録 (乙第 15号証 16頁) には、出血部位は、主として肝外の側副血行路であったとの記載および縫合止血によりかなり止血できた、ウージング様の出血個所は圧迫止血により、閉腹時にはほとんど出血がない状態になったとの記載がある。このカルテの記載によれば、右再々開腹手術の時点においても、被告 K医師は、DIC の発症による異常な出血傾向を認めていないことが明らかであり、客観的にも、カルテに右のような記載がなされるような状態は、DIC の発症を否定するものであると推認すべきである。

      したがって、被告らの前記 DIC 発症の主張は、右カルテの記載と矛盾する。

      また、原告らへの術後の説明においても、被告 K医師は、DIC の発症については、まったく言及していない (乙第 15号証の 54頁 6月 17日の説明)。

      すなわち、DIC が発症したとの被告らの主張には、根拠がない。

    2. 被告らは、肝硬変は DIC になりやすいこと、亡 Sの術前の血小板値およびプロトロンビン時間が低下していて血液凝固能の予備力が低下していたことについては、被告 K医師は認識していたことを認めている。

      さらに、被告らは、肝予備能について、術前の肝機能検査で完全に正確な判断をすることはできないことを認めている。

      そして、被告らは、亡 Sの肝予備能と血液凝固能が、被告 K医師が評価した以上に低下していた可能性があると述べている。

      そうであれば、被告 K医師は、亡 Sの肝硬変を合併した肝癌の切除手術につき、DIC の発症の危険性も含めて、大量出血による出血性ショック等の危険があることを予測することが可能であり、本件出血性ショック、肝不全が予見可能であったということになり、被告らは、被告 K医師の肝予備能および血液凝固能に関する評価が甘く、誤っていたことを認めたに等しい。

      そして、亡 Sの肝癌の治療法として、肝切除術が唯一のものではなく、もっと手術侵襲の少ない治療法も選択できるのであるから、被告 K医師は、肝切除術の適応の判断をするにあたっては、肝硬変を合併している亡 Sの肝予備能と血液凝固能について、DIC の発症による制御できない出血の危険性の予測も含めて、より慎重に厳しい評価をなし、他のより安全な治療法を選択すべきであったのである。また、被告 K医師は、肝切除術に伴なう右のような出血の危険性と、他の治療法の選択の可能性についても、患者側に対する十分なインフォームド・コンセントを尽くすべきであった。

      右の諸点においても、被告 K医師に過失があったことは明らかである。

      なお、被告らの主張によれば、被告 K医師は、本件肝切除術の適応を判断するに際して、血小板の低下を考慮していないが、 (前記準備書面第 2項)、これによっても、本件肝切除術にあたって、出血の危険性に対する被告 K医師の判断の甘さ、そして、本件腹腔鏡下肝切除術が、手術の危険性を顧みない実験的、冒険的手術であったことが窺える。

    3. 乙第 26号証は、肝硬変合併の肝癌に対する腹腔鏡下肝切除術の症例報告のビデオテープであるが、その症例においては、肝切除術に先立ち、マイクロウェーブ凝固法により止血の措置を徹底しており、また、切除後においても、オキセルコットン、フィブリンノリのほか、アルゴンビームによる止血の措置を講じている。

      これに対比すると、本件手術においては、右のような慎重かつ厳重な止血の措置はなされておらず、術中の出血量は明らかに多く (乙第 18号証のビデオテープ)、止血の措置が不十分であることは明白である。


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